リクルートから生まれたニジボックスが持つ「2つの顔」
──はじめに「ニジボックス」の概要と、お二人のプロフィールについて紹介をお願いします。
吉川:UX・ディレクション室の室長を務めている吉川です。株式会社ニジボックスは株式会社リクルートのR&D機関メディアテクノロジーラボより2010年に分社独立しました。当初はソーシャルゲーム事業などをメインに行っていましたが、現在はオンラインサービス事業を中心にリクルートや、さまざまな企業様に対してUXデザインを含めた制作支援を行っています。
吉川聡史(よしかわ・さとし)氏
UX・ディレクション室 室長 兼 プロダクト推進部 部長。
上野:UX・ディレクション室クライアントソリューション部部長の上野です。吉川と私が所属する「UX・ディレクション室」は、ニジボックスでUXデザインを担当するグループとWeb制作のディレクター組織を拡大統合する形で生まれました。近年、クライアントから受注する案件で、単なるWebサイト制作だけでなく、UXデザインも含めたサービス設計の段階から依頼をいただくケースが増えており、われわれの強みであるUXから制作まで一気通貫で対応できる組織としていく意味を込めて、2021年に現在の「UX・ディレクション室」という部門名になっています。
上野由夏子(うえの・ゆかこ)氏
UX・ディレクション室 クライアントソリューション部 部長。
──UX・ディレクション室には、上野さんが所属する「クライアントソリューション部」以外に、どのような部があるのでしょうか。
吉川:UX・ディレクション室には、大きく2つの部があります。私が部長を兼任している「プロダクト推進部」と、上野が部長を務める「クライアントソリューション部」です。
「プロダクト推進部」は、親会社であるリクルートのプロダクトに参画して制作を行うチームで、「クライアントソリューション部」は、主にリクルート以外のクライアントからの受託制作を担当しています。現場で、クライアントと直接やり取りをしながら制作を進める職務としては「Webディレクター」と「UXデザイナー」があり、プロダクト推進部には主にWebディレクターが、クライアントソリューション部にはWebディレクターとUXデザイナーの両方が所属しています。
ニジボックスにおける「Webディレクター」「UXデザイナー」の役割
──ニジボックスの「Webディレクター」と「UXデザイナー」は、それぞれどのような仕事をしているのですか。
吉川:Webディレクターについては、リクルートの案件か、その他の受託案件かで、若干仕事内容が変わります。共通する部分としては、ヒアリングに基づいた要件定義から納品、さらには納品後の改善を含む、全体的な工程の進行と管理があります。リクルート向けの案件では、職種がさらに「プランナー」と「制作ディレクター」に分かれ、プランナーが画面設計までを行い、制作ディレクターが、それをより詳細な制作作業に落とし込む部分を担当します。
上野:UXデザイナーは、クライアントへのヒアリングや調査を通じて、プロダクトで解決すべき課題を見つけ出し、それを実現するためには、どのようなUIや画面遷移、サービス構造が必要なのかを考えて提案するという、コンサルティング的な仕事をしています。
ニジボックスのUXデザイナーは、特に「UXリサーチ」の部分に専門性があり、課題に応じた調査手法の選定から、調査の設計と実施、調査後の分析とレポーティング、関連するスケジュール管理や顧客折衝、QCD管理までを幅広く行っています。リサーチ後の制作までスコープに入る場合には、部内のディレクターも交えて、担当範囲を調整しながら進めています。
──UXデザイナーという職種は比較的新しいものだと思うのですが、現在ニジボックスに所属しているUXデザイナーは、どのようなキャリアを持つ人がいるのでしょうか。
上野:「UXについて、まったく未経験」という人もいれば、以前はリサーチ会社にいた人など、バラエティに富んでいますね。
私自身も、一時期UXデザイナーとして仕事をしていたことがあります。私の場合は、ニジボックスに新卒で入社し、営業やソーシャルゲームのプランナー、Webディレクターなどを経てUXに関わるようになりました。社内でのキャリアパスとしては、私と同様にWebディレクターを務めた後に、UXデザイナーになっている人が多い印象です。
Webディレクターをやっていると、クライアントに対して「このUIが良いと思います」「こういう画面構成にしましょう」と提案した際、「その根拠はなんですか?」と聞かれることがよくあります。そのときは以前であれば「競合サイトとの比較検討」や「Webディレクターとしての自分の経験則」のようなものを材料に説明をしていたのですが、UXの観点を持つことで「実際にユーザーに聞いたこと」や「ユーザーの行動を分析した結果」を根拠にして、自信と、より強い説得力を持って提案ができるようになります。特に、ディレクターとして、そうした場面で「もどかしい」思いをした経験がある人は、「UXデザイナー」の仕事に高い価値を感じるように思います。