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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第3回。オフラインとしては初開催です。

ProductZine Day 2024 Summer

ProductZine Day 2024 Summer

アライドアーキテクツに学ぶ、プロダクト中心の組織構築への実践

“受託マインド”を改革、日本とベトナムをOne Teamに――オフショア開発の組織改善ポイントとは?

アライドアーキテクツに学ぶ、プロダクト中心の組織構築への実践 第1回

 日本国内でのエンジニア採用が困難な状況が続く中、海外拠点を持ちオフショア開発を活用する企業も増えてきました。SNSを軸に企業のマーケティングを支援するテクノロジー企業、アライドアーキテクツもその一つ。しかし、はじめはベトナムにある2社の子会社とうまく連携が取れていなかったと言います。“受託マインド”になりがちな海外拠点のエンジニアと、どうプロダクト中心の「One Team」を作り上げたのでしょうか。オフショア開発の実情と、具体的な解決策について、ベトナム拠点のCTOである岩間亮氏に解説いただきました。(編集部)

はじめに

 アライドアーキテクツは「ソーシャルテクノロジーで、世界中の人と企業をつなぐ」というミッションの下、マーケティング課題を解決するためのソリューションビジネスの提供や、ダイレクトマーケティング特化型UGC活用ソリューション「Letro」、Twitterプロモーション統合管理ツール「echoes」をはじめとするソーシャルテクノロジーを活用したSaaS型プロダクトの開発・提供を主に行っています。

 開発拠点は、日本本社と自社プロダクトの開発拠点としてベトナムに2社の子会社を持っており、現在は本社とベトナムの2社に計50名ほどのエンジニアが所属しています。今回はグループ内の開発組織を、ビジネスサイドからの要望を単に実現するだけの組織から、ビジネス・運用サイドも含めた1つのチームとして同じゴールを目指すための組織に変革した、ベトナム開発拠点の再立ち上げについて紹介します。

オフショア開発に対するイメージと実情

 一般的にオフショア開発に対するイメージと言えば、コーディング作業を行う人員の確保が容易であることが挙げられます。また、オフショア開発の大きなメリットとしてオフショア専門の会社に外注することにより、人材の需給にあわせて柔軟にコストをコントロールすることができるという点も挙げられます。

 これらのメリットは相違ないのですが、実際にオフショア開発を経験したことのある方は言語の違いにより発生するコミュニケーションロスや、成果物の品質のばらつき、国民性の違いからくるトラブルなどのデメリットも多くの方が経験されたことがあることと思います。

 弊社ではベトナムでの開発拠点立ち上げ前に日本だけでなく、ベトナムからも新卒採用を行っており、日本でエンジニアとして成長した彼らがベトナムに帰るタイミングにあわせて、開発人材の確保や膨らみ続ける開発コストへの対策としてベトナム拠点の立ち上げを行いました。

 当時は日本で育ったエンジニアがブリッジSEとして、会社の方針や文化を理解している状態で開発に臨んでいたのですが、それでもなお前述したデメリットが顕在化しプロジェクトのマネージャーとベトナム拠点の社長が頭を悩ませていました。開設から2年たった段階でも自社プロダクトの開発に関わっているのは10名以下の1チームにとどまっており、日本側の意識も醸成されていなかったため1つのチームとして開発するというよりは、お願いしたものを作って納品してもらうという関係性でした。

問題の分析

 それからしばらくの間、具体的に大きな改善を行えないまま時が過ぎる一方で、マーケティングというトレンドの移り変わりの激しい分野で求められる開発速度や、新しいプロダクトの迅速な立ち上げを行うための開発組織を組成する必要性は日に日に増していきました。

 しかしながら日本国内で短期的に採用を拡大することは難しかったため、ベトナムが国策としてIT教育が行われており日本の2倍以上のペースでエンジニアが増加していること、受託業ではなく自社プロダクトの開発であることを採用活動の魅力として他社に対して有利に採用を進められる可能性があったことから、ベトナム拠点の再立ち上げを決断しました。赴任から2年が過ぎていた社長の交代と、これまでベトナム拠点に不在だったCTOとして私の赴任が決まりました。

 そして、ベトナム拠点が目指すビジョンについての話し合いが私を含むボードメンバーで行われました。そこで決まったのが「One Team, One Goal」という言葉です。日本人、ベトナム人問わず担当しているプロダクトの共通のゴールを共有し、与えられたタスクをただこなすのではなく1つのチームとして協力しながら達成していくことになりました。この時決まったOne Team, One Goalはこの後グループに加わるベトナムの第二拠点や、日本のエンジニア組織がクレド(企業における行動指針)を策定する際にも採用されることになりました。

 One Team, One Goalを実現していくためには以下の4つの問題点がありました。

  • 日本とベトナム拠点間でのコミュニケーションの不足や不備
  • ビジネスの事業戦略の適切なインプットがされていない
  • 開発するための環境へのアクセス権限が適切に設定されていない
  • 組織の状態やキャリアパスが明確になっていない

 言葉にしてしまえば特殊な状況でもなく、ともすれば日本国内だけで開発を行っている企業でも陥ってしまうような課題でしたが、文化や言葉の壁だけでなく物理的な距離、これまで2年間問題を解決できていなかったことによる諦めマインドのようなものが問題の解決をより難しくしていました。

次のページ
問題の解決に向けて

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この記事の著者

岩間 亮(イワマ リョウ)

 盛岡情報ビジネス専門学校情報システム科卒業後、地元岩手でハード機器関連の営業職としてキャリアをスタート。その後、派遣会社に転職し工場への派遣を経て、地元SIerへの派遣を期にエンジニアへキャリアチェンジ。本格的にエンジニアとしてのキャリアを積むため上京し、2009年1月グローバルスペース株式会社へ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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