アウトカム(成果)とは何か?
アウトカムを「収益」だと捉える人もいるだろう。しかし市谷氏は収益は、プロダクトづくりを継続・発展させるために必要な「動力源」であり「結果」であるとの考えを述べた。「ご飯を食べるから動き、動きが取れてまたご飯をつくれる」というサイクルと同様だ。
ゆえに「収益だけを目標に置いてしまうと、不都合が起きる」。まるでバックミラーだけを見て運転するように動きが遅くなり、肝心の「アウトカム」の行方が不明瞭になるという。
そこで市谷氏は「前を見よう」というメッセージを発信。混乱しがちなアウトカム、つまり成果とは何かを捉えなおすことを推奨した。
では、プロダクト開発における成果とは何だろうか。市谷氏は3つの外せない要素を示した。
1つめは「ユーザー」である。ユーザーに価値や意味がもたらされている状態が1つの成果と言える。これは冒頭のソフトウェア開発との違いでも触れたとおりである。
ユーザーだけを見ればよいかというと、そうではない。ユーザーへの価値提供は、プロダクトを通して行う。そしてその価値は持続可能であるべきだ。「今月はサービスが動いているが、来月は分かりません」という訳にはいかない。そのため「プロダクトをつくるチームはもちろん、プロダクト自体も健全であるべき」と市谷氏は言う。
「ユーザー」「チーム」「プロダクト」の3つの健全性を保つことが、成果につながるのだ。
ここで「チームやプロダクトは成果ではなく手段なのではないか」という疑問に対して市谷氏は、以下のように補足した。
「プロダクト的な思考から言うと、この3つがそろわないとどうしようもない。チームが疲弊しきってはユーザーのうれしさを考えられません。プロダクトが負債で動かせない状態では、価値提供を約束し続けられるでしょうか」(市谷氏)