探索型プロダクト開発へ
「ユーザー」「チーム」「プロダクト」の健全性を維持・向上するにあたって難しいのが、3つを取り巻く環境に変化が伴うことだ。状況の変化に対応できるようなプロダクトづくりが求められる。はるか昔に分かったことを頼りに、ユーザーのニーズやチームの強みを判断しては正しいプロダクトは生まれない。
そこで市谷氏は「プロダクト探索に出かけましょう」と呼びかけた。
「分かっていることだけでプロダクトをつくり続けていては、ジリ貧になる。現時点では分かっていないことに踏み込んで、情報・知識を得なければいけない」(市谷氏)
つまり、プロダクト探索とは新たな学びを得る活動であり、その方法を身につけておくことが重要だ。
市谷氏は、「プロダクト探索の歩き方」のイメージを、下図に示した。
まず重要なのは「成果とは何かに向き合うこと」である(図左側)。市谷氏は「成果=先述の3つだと捉えなくてもいい」という。収益との混同を避けつつ、「とにかくチームで合わせてください」と強調する。その成果に対して目標と評価指標を決める手法としては、OKRがフィットする。
続いて、成果をあげるためには「仮説を立てる」必要がある(図中央)。ユーザーにとっての課題や価値についての仮説はもちろん、チームやプロダクトに対しても仮説が必要だ。仮説立案には、調査によって情報を増やすことが第一歩になる。ユーザーを理解するためのアンケート・インタビュー調査や、チームを理解するためのふりかえり、プロダクトを把握するための計測といったリサーチが大事になる。その際、ユーザーに関しては仮説キャンバスを立てたり、プロダクトに関してはユーザーストーリーマッピングをやったりと、手法を使い分けることを推奨した。
そして、こうした探索活動はバックログに積んで、スクラム開発のサイクルの運営の中で扱えるようにしていくことが大事だ(図右側)。「OKR→仮説→バックログの流れをつくり、検査適応の運営をしていきましょう」と市谷氏。探索で分かったことはスプリント単位で把握し、探索活動自体もレトロスペクティブの対象とするのがよい。
このように「プロダクト探索においてやるべきこと」を見ていくと、決めごとが多く大変な準備が必要だと感じるかもしれない。しかしそれは「最適化の罠」だと市谷氏は忠告する。
「準備は必要だが、気づいたらずっと準備しているといった『最適化の罠』にはまらないようにしたい。まずは探索バックログの最初の1個を積むところから始めましょう」(市谷氏)