生成AIが可能にする「誰でもつくれる」プロトタイピング
不確実性が高い現代において、新規事業の立ち上げや既存サービスの改善では、「完璧な計画を立ててから動き出す」という従来のアプローチが通用しづらくなっています。こうした環境では、アイデアを素早く“かたち”にして、関係者を早期に巻き込みながら改善していくプロトタイピングの手法が、ビジネスを前進させるうえで非常に有効です。
とはいえ、プロトタイピングはデジタル・フィジカルを問わず、「何かをつくる」行為が必要です。そのため、「ものづくりはデザイナーやエンジニアの専門領域」と思い込み、プロトタイピングを自分ごとと捉えにくい人も少なくありません。
しかし、生成AIの登場により、ものをつくる難易度が劇的に低下しています。例えば、LP(ランディングページ)を数分で生成できるReaddyや、コンセプト動画を作成できるGoogle AI Studio、3Dプリント用のSTLデータを生成するTripo AIなど、目的別に特化したツールが次々と登場しています。
これらのツールによって、「まず形にしてみる」というアクションが誰にでも可能になり、試行回数を飛躍的に増やすことができます。結果として、失敗を通じてアイデアやソリューションをブラッシュアップし、ユーザー理解や意思決定の質を高めることができるのです。
このような状況を踏まえて、S&D Prototypingでプロトタイピングを専門とする三冨と、株式会社LIFULLの生成AIチームの有賀が生成AIを用いてプロトタイプを効率的に構築するための方法を探るプロジェクト「1,000 Prototypes」を開始。ランディングページや3Dプリンタを使ったフィジカルプロトタイピングなど、8種類の生成AIを用いたプロトタイプ構築方法をまとめたホワイトペーパーを作成しました。
本連載では、そのホワイトペーパーから抜粋して生成AIを活用したさまざまなプロトタイピング手法を、複数回にわたり紹介していきます。手法の紹介にとどまらず、具体的なプロンプトの例もご紹介することで、読後すぐに現場で試せる構成となっています。第1回では、最も手軽で効果の高い「プレスリリースプロトタイピング」にフォーカスします。
プレスリリースプロトタイピングとは何か?
アイデアを「誰に、どんな価値を、どう届けるのか」という視点で明文化することで、チーム内の認識のズレを防ぎ、外部関係者にも伝わりやすくなるというメリットがあります。
実際、Amazonなどの企業では、企画初期にプレスリリースを書き、その内容が明確に描けるかどうかを判断材料としています。
最大の利点は、「まだ何も作っていない段階で、社会との接点をイメージできる」ことです。文章に起こすことで、あいまいな部分や伝わりづらい点、論理の飛躍や客観的な魅力の欠如などを早期に発見できます。