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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

デブサミ2026の初日をProductZineとコラボで開催。

Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

ProductZineイベントレポート

AI時代の開発組織はどう変わる? 「反論しないAI」を統制する仕組みと規範の重要性

「Developers Summit 2026(Dev x PM Day)」レポート 18-B-7セッション

 AIの進化により、ソフトウェア開発の前提が根底から覆りつつある。生産性が劇的に向上する一方で、マネジメントの目が行き届かないところでプロダクトが「暴走」するリスクも高まっている。このような時代において、開発組織はどのように変化すべきなのか。翔泳社主催の「Developers Summit 2026」内で開催された「Dev x PM Day」から、SmartHRのCPO安達隆氏とキャディのVPoE藤倉成太氏、そしてNewbeeの蜂須賀大貴氏による、AI時代の開発組織戦略に関する徹底討論の模様をお届けする。

DevとPMの交差点で語る、AI時代の開発組織戦略

 翔泳社が主催する国内最大級の開発者向けイベント「Developers Summit(デブサミ)2026」。そのDay 1では、開発(Dev)とプロダクトマネジメント(PM)の交差点をテーマにProductZineがコラボレーションする形で「Dev x PM Day(デブピーエムデイ)」が開催された。

 本稿では、同イベントで行われたセッション「CPO、VPoEが考える開発組織戦略 徹底討論」の模様をレポートする。AIの台頭によってソフトウェア開発の前提が抜本的に変わる中、チーム構成や人員計画、マネジメントはどうあるべきか。

 モデレーターを務めるのは、テクノロジーメディア「Newbee」の運営や複数社の外部CPOとして活躍する蜂須賀大貴氏だ。

Newbee株式会社 代表取締役/プロダクトマネージャー 蜂須賀大貴氏
Newbee株式会社 代表取締役/プロダクトマネージャー 蜂須賀大貴氏

 そしてパネリストとして、クラウド人事労務ソフトを提供する株式会社SmartHRでCPO(最高製品責任者)を務める安達隆氏と、製造業のサプライチェーン変革を牽引するキャディ株式会社でVPoE(VP of Engineering)を務める藤倉成太氏が登壇した。

株式会社 SmartHR CPO 安達隆氏
株式会社 SmartHR CPO 安達隆氏
キャディ株式会社 VP of Engineering 藤倉成太氏
キャディ株式会社 VP of Engineering 藤倉成太氏

 PM領域のトップである安達氏と、長年SansanのCTOなどを歴任し現在はエンジニアリング組織を牽引する藤倉氏。異なるバックグラウンドを持つ2人のリーダーが、現在の組織設計におけるリアルな課題と、これからのプロダクトマネージャー・エンジニアに求められる要件について語り合った。

本セッションのテーマ
本セッションのテーマ

「阿吽の呼吸」の限界と、AIによる暴走リスク

 セッションの前半、話題は「AIと協働する組織設計」に及んだ。安達氏はまず、AIというテクノロジー以前の前提として、開発組織がスケールしていく際に直面する「構造的な課題」について口火を切った。

 現在、エンジニアやデザイナーを含めて約400名の開発組織を管掌している安達氏は、「スタートアップ的なやり方が通用しなくなってくるフェーズに入っている」と現状を分析する。組織が拡大し、マルチプロダクト化が進むと、コミュニケーションパスが増大し、かつて機能していた「阿吽の呼吸」での開発は難しくなる。開発効率が低下していく中で、いかにそれを回復させるかが組織論のメインテーマになっているという。

 この課題に対し、安達氏が重要視しているのが「仕組み」と「規範」の整備である。右も左も分からない状態からやり方を考えるのではなく、「このレールに乗っていればある程度うまくいく」という型を作るのが「仕組み」だ。一方の「規範」とは、仕組みでは担保できない人間の判断基準を揃えることを指す。人数が増えて判断が属人化していく中で、いかに同じ規範を持ってプロダクトを作っていくかが極めて重要になる。

 この「仕組み化」と「規範の言語化」という課題感は、AIの登場によってさらに切実なものとなった。

 「AIによって開発速度が上がり、生産性が向上すると同時に、実は『暴走するリスク』も上がっています。経営者の目の届かないところで、まったく的外れなプロダクトがすごい勢いで作られ、ユーザーに提供されてしまう。これが非常に大きな負債になり得るのです」(安達氏)

 これまで多くの企業は、優秀なシニア人材を採用・育成し、彼らの能力に依存することでプロダクトの方向性のブレを防いできた。しかし安達氏は、「優秀な人だったらいい感じにやってくれるだろう」という性善説的なアプローチはすでに限界を迎えていると警鐘を鳴らす。AIのスピードを前に、プロダクトを正しい方向へ導くための「ガードレール」が不可欠になっているのだ。

AIは「反論してくれないオフショア開発チーム」である

 このプロダクトマネージャー視点からの課題提起に対し、VPoEの藤倉氏はエンジニアリング組織の観点から非常に鋭い比喩を用いて応じた。コーディングエージェントなどのAIを活用した開発は、「海外のエンジニアチーム(オフショア開発)と仕事をする構造に非常に近い」というのだ。

 日本人同士であれば暗黙的に共有できたコンテキストが通じない相手に対し、きっちりとドキュメンテーションを行い、コミュニケーションを設計しなければ、期待した成果物は上がってこない。モデレーターの蜂須賀氏もこれに同調し、「『いい感じのUIにして』と伝えても、コンテキストが異なれば日本では受け入れられないものが出てくる。それと同じことがAIでも起きている」と指摘する。

 さらに藤倉氏は、AIならではの「恐ろしさ」をこう表現する。

 「外国籍のメンバーであれば『なぜですか』『それは違うと思います』と意見を言ってくれます。だからこそ、私たちも『なぜこれが良いのか』を言語化しようと努力します。しかし、コーディングエージェントは『賛成できません』とは言ってくれません。そこが一番気づきにくい点です」(藤倉氏)

 人間であれば生じるはずのフリクション(摩擦)がないため、指示を出す側も深く思考を巡らせる機会を失ってしまう。AIは、ロジカルに見えるコードやPRD(プロダクト要求仕様書)を、赤点を取らない60点のレベルで即座に出力してくる。安達氏もこれを「するっと通ってしまうため、深く考えられていないということは非常に大きなリスクだ」と危惧する。

 「なぜ牛肉を食べるのに人肉を食べてはいけないのか」といった、人間が当たり前とする倫理観すら持たない存在と仕事をするのだ。オフショア開発すらマネジメントできない組織が、AIを使ってまともなプロダクトを作ることは極めて困難であるというのが、両氏の共通見解であった。

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リーダーをボトルネックにしないための権限移譲

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。 1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテック...

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