AIを「パーソナルプロダクトコーチ」として活用する
プロダクトマネージャーが日常業務で生成AIを活用する際、どこまでAIを信頼し、意思決定を委ねるべきなのだろうか。
ケーガン氏は、「タスクの管理やプロジェクトマネジメント的な業務は自動化すべきですが、自身の『判断力』や『脳』まで自動化しようとしてはなりません」と釘を刺す。プロダクトマネージャーやシニアエンジニアが存在する理由は、チケットを切るためではなく「何をすべきか」を決定するためだ。AIは意思決定を強力に「サポート」すべきだが、最終的な「決定」を下すのは人間でなければならない。
その上で、ケーガン氏が強く推奨するのが、AIを「パーソナルプロダクトコーチ」として活用することだ。
「プロダクトマネージャーにとって最も価値のある能力はプロダクトセンス(Product Sense)です。これは、良い意思決定を下すための、顧客、データ、ビジネスに対する深い洞察力のことです。以前であれば、これを磨くのに3か月はかかっていました。しかし、適切な設定をしたAIコーチをスマホに入れておけば、いつでもどこでも壁打ちができ、学習期間は1か月程度に短縮されるでしょう」
この際、AIコーチに対して「自分がどのプロダクト開発モデルを採用しているか」を明確に設定することが、的確なフィードバックを得るための鍵となる。
UIも機能も模倣される時代の「真の競争優位」
AIの力で、優れたUIや機能はあっという間にコピーされるようになった。これからの時代における「真の競争優位性」はどこにあるのだろうか。
ケーガン氏は「機能のコピーは、過去30年間にわたってずっと行われてきたことです。それが少し簡単になっただけです」と一蹴する。iPhoneの前に携帯電話があり、Googleの前に検索エンジンがあった。彼らが勝者となったのは、競合をコピーしたからではなく、他よりも圧倒的にうまく「問題を解決した」からだ。
「真の差別化要因は常に2つしかありません。1つ目は『その問題をどれだけうまく解決したか』。そして2つ目は、そもそも『どの問題を解決しようとしているのか(プロダクト戦略)』です。だからこそ、プロダクトディスカバリーが決定的な競争優位となるのです」
日本のプロダクトマネージャーへのメッセージ
セッションの最後に、稲葉氏から日本のプロダクトマネージャーに向けたメッセージを求められたケーガン氏は、次のように力強く語りかけた。
「明日、会社がどうなるかなど誰にも分かりません。自分自身を100%守り切ることなど不可能です。しかし、今日お話ししたような『プロダクトセンス』を自らの手で磨き続けることで、自分の価値を高めることは確実にできます」
機能開発のスピード競争から抜け出し、「何を、なぜ作るのか」というプロダクトマネジメントの本質に立ち返る時期が来ている。AIという強力なパーソナルコーチを活用し、顧客とビジネスの真の課題に向き合うことこそが、最も価値のある人材であり続けるための確実な生存戦略となるはずだ。
