プロダクトマネージャーの年収の上昇が続くと考える理由
他に2025年に広がりそうな動きとしては、企業が複数のプロダクトを同時並行で提供するマルチプロダクト戦略や、これを創業時から行うコンパウンド戦略があげられます。特に業種・業界の垣根を超え、隣の畑に地続きで進出していくホリゾンタルSaaS企業が非常に増えており、今後はM&Aや事業買収も活用して複数のプロダクトを展開する動きが加速していくと思います。
そうなるとマルチプロダクト企業同士の戦いがあちこちで発生するようになり、プロダクトマネージャーにはマルチプロダクトをどうマネジメントし、シナジーを出していくかが求められていくでしょう。そうなると、単一で良いプロダクトを作ったり複数のプロダクトを管理したりするだけではなく、例えば基盤を共通化して効率を高める、あるいは1つのIDあたりのLTVを増やすといった観点でのプロダクト戦略を描けるかどうかが重要になっていきます。要はマルチプロダクトにおける経営戦略、事業戦略を描ける人へのニーズが高くなるということです。
また、2024年はテック企業だけでなく、大手企業がDX組織を立ち上げてデジタルプロダクトを開発し、顧客と接点を持つ動きが強まった年でもありました。そうしたいわゆる大企業から、プロダクトマネージャーの求人が新たに出てきています。特に消費者に近い企業、具体的には流通小売業やBtoCの消費財を持っているメーカーからの募集が増えています。
プロダクトマネージャーの転職市場は従来からの人材供給不足に加え、こうした大手企業からの求人も加わって2025年はますます採用競争が激化し、年収の上昇トレンドも継続していくと見ています。
ただし、「こんなに人材が足りないのなら、未経験だけど私も応募してみよう」と考える人がいるかもしれませんが、未経験者に関しては逆に今でも供給過多となっています。冒頭で未経験者の採用が増えていると書きましたが、その一方で企業の選球眼は高くなっており、何らかのバックグラウンドが必要です。それは各々の会社によっても時期によっても大きく異なり、例えばWebエンジニア出身者を欲しい企業もあれば、戦略コンサル経験者を欲しいという企業もあります。いずれにせよ、誰でもなれるような甘い世界ではありません。
プロダクトマネージャーは、どうやってユーザーに価値を出していくかをシビアに考え続ける必要があり、単に「AIを使いたい」ではなく、「AIを使ってどう価値を生み出していくか」を語れないとうまくいきません。未経験の方でも自分の経験の何を生かしてどう価値を出していくのかを考えられるかどうかが重要です。さらに、プロダクトマネージャーには「それで儲かるのか、勝てるのか?」という視点が今まで以上に求められる1年になると思います。そういった難易度の高い期待値を楽しんで超えられる方には、昨年以上のオファーが期待できる年になるのではないでしょうか。