組織を越えて、全方位で横ぐし的な活動をリードしていく役割
カケハシの組織には、法務や人事などの「コーポレート」機能のほかに、顧客接点であるセールスやカスタマーサクセス部門などの「ビジネス」サイド、実際にプロダクトをカタチにしていく「エンジニアリング」サイドがある。それらの中心でクロスファンクショナルな連携を担うのが、プロダクトマネジメント部門だ。
プロダクトマネジメント部門には、(プロダクト)マーケティング、開発、オペレーションなど複数の機能要素が含まれ、単にプロダクトを作るだけでなく、市場へ適切に届ける役割までを担う。プロダクトの開発と提供を円滑に進めるために、戦略策定・組織運営・顧客対応を包括的に管理し、提供価値の最大化を図っている。

カケハシのプロダクトマネジメントには、全方位への立ち回りが求められている。日常業務においては、マーケティング・開発・オペレーションを統合的に担うことでプロダクトの成長を牽引する、いわば技術とビジネスの橋渡し役として、双方に対する業務理解が求められる役割だ。それに加えて、医療業界の動向や見通しを元にした戦略的思考や、データ分析を用いた構造整理、ユーザー中心設計の知見、組織のマネジメントスキルやリーダーシップなども必要といえる。
また、それらはPdMとプロダクトマーケティングマネージャー(PMM)が業務を分担しつつ協力する形で行っている。PdMはプロダクトの企画・開発などの「何を作るか」、PMMはプロダクトの市場戦略や販売促進などの「どう届けるか」について、それぞれ責任を持ちながら両者で協力し合っている。
この双方をマネジメントして全体を統括する役割にプロダクトリードがいて、そのリードをドメインごと束ねるのが二木氏、三宅氏ら、Head of Productという立場だ。

二木氏は、PdMの役割について、「プロダクトをより良い状態に進化させることを目的に据えると実現手段が多岐にわたるため、自然と業務範囲が広がって難度が高まってしまいます。カケハシでは、現場業務を進めていく上で個々人の強みを発揮しやすいよう専門性の軸でPdMとPMMを分け、専門領域の広さによってプロダクト全体の責任者を担当いただく設計にしています。そこからさらに担当事業や組織をクロスオーバーしながら、複雑度が高く戦略性が要求されるミッションを取り扱う役割としてHead of Productという階段を設けています。一人ひとりの強みや経験・キャリアプランにフィットした形で、プロダクトマネジメントにチャレンジできる環境です」と語る。
例えば、現在の「Musubi」はPdMが2名、PMMが3名で構成されており、各自の得意分野に応じて業務分担されている。都度発生する新しいテーマや案件は、その時々によって強みを持っている人や挑戦したい人が担当する。評価については、各職種ごとに規定しているグレード・期待役割に基づいて行われている。
「単純な数字だけを追うような目標ではなく『周囲にどんな好影響をもたらしたのか』『自身でどういった創意工夫が実現できたのか』といった実行プロセスを含めた振り返りを重視していて、その結果を定量的に表現できると尚良しですが、数字だけで評価することはないです。評価サイクルは半年ごとですが、半年もあれば事業やプロダクトの状況が目まぐるしく変化するため、日常的な1on1の中でミッションやテーマの軌道修正を行いながらチーム運営がされています」(二木氏)
組織として、プロダクトマネジメント職は「サービス開発ディビジョン」に属するため、売上額や導入数だけで評価が決まるわけではない。ビジネスゴールとの連動性が前提の上で、「どのくらい活用されているか」や「患者によい影響を与えられているか」といったプロダクトとしての価値指標を置いていて、個人の評価も、そこにどう貢献したかが重視される。
「売れるためだけにモノを作ろうと思えば、役に立たないけど売れるものはいくらでも作れてしまいますが、『売れること』だけに重きを置くのではなく、導入いただく薬局やエンドユーザーである患者さまへの提供価値を考えながら、エンジニアとビジネス間の最適なバランスを取っていくのがプロダクトマネジメントの重要な役割。役割や評価としては、そこを重視したいと考えています」(三宅氏)