優先順位付けの盲点をどう回避するか。「機能」ではなく「課題」を起点に
セッション中盤、渡辺氏はプロダクトマネージャーが陥りがちな3つの課題として、「ストーリー作成においてPMがボトルネックになってしまう」「アイデアの優先順位のつけ方」「ロードマップの作成と管理」を提示した。会場への問いかけで多く手が挙がったのは後者2つだ。それぞれの課題について、小俣氏の実践が語られた。
優先順位付けについてまず指摘されたのは、議論の「土俵」の問題だ。小俣氏は「社内ステークホルダーとの会話は、機能やアウトプットの話に陥りがちです。そのほうが会話がしやすいからですが、機能単位だと合意は取りやすい反面、より本質的な『ユーザー課題』の議論が後回しになってしまいます」と指摘する。
ユーザー課題はソリューションよりも上流にあるため、その優先順位を議論できる素地を作ることが重要だと小俣氏は強調する。インパクトの大きな意思決定ほど、課題起点の優先順位付けが問われるからだ。
その素地を作るために実践しているのが、ペルソナごとに「満たせているニーズ」と「満たせていないニーズ」を整理するアプローチだ。必ずしも精緻な分析である必要はない。これを対話のベースとして持つことが、機能レベルの会話を課題レベルの議論へと引き上げる起点となる。
また、ロードマップは2段階で区切るという。まずはリサーチやインタビューを通じて課題の解像度を上げる。「このポイントが重要だ」という前提が固まってはじめて、エンジニアとのタイムラインについて議論を開始する。最も重要な課題を踏まえ、実現できる範囲でミニマムなソリューションを絞り込むのが小俣氏の基本スタンスだ。課題の確からしさを積み上げてから実装規模の議論に入ることで、手戻りのリスクを最小限に抑えられる。
実装段階に入ってからもスモールに進む。「ユーザーにとって一番重要なポイントを選び、まずはミニマムなものを作って出し、フィードバックをもとに進めていこうというカルチャーが幸いにしてあります」と小俣氏は語る。出発点を機能ではなく課題に置き、小さく始めて確かめながら前進する。ディスカバリーをいかに設計するかが、開発全体の質を左右するといえるだろう。
AIとコーディングエージェントがプロダクトマネージャーの仕事を変える
セッション終盤、話題は「AI時代におけるプロダクトマネージャー」へと移った。開発やデザインの領域でAIツールが急速に浸透する一方、プロダクトマネージャーにおけるAI活用はどうあるべきか。渡辺氏がその問いを投げかけた。
「プロダクトマネージャーの仕事の半分は、言語処理的なものだったと思うんですよね。多様なステークホルダーの意見を集約し、テキストとしてアウトプットする。これはAIが非常に得意とする領域です」(小俣氏)
その実感は急激に強まっているという。ユーザーインタビューの文字起こしをAIに読み込ませれば、要約は瞬時に完成する。「言語処理的な意味合いでのプロダクトマネージャーの仕事は、AIに取られてしまった感覚が強くあります」と小俣氏は明かす。しかし、AIに言語処理を委ねる割り切りこそが、プロダクトマネージャーの時間を解放することにもつながる。
では、浮いたリソースをどこに向けるのか。小俣氏が「大きい」と語るのが、コーディングエージェントの活用だ。プロトタイピングをより高度に行える環境がこの半年で整いつつあり、「そこがプロダクトマネージャーとしての大きなチャンスになる」と語る。
実際に試みているのは次のような手順だ。コーディングエージェントにGitHubでブランチを作成させて変更コードを書かせ、そのままVercel(Webアプリケーションの公開・運用プラットフォーム)の環境にデプロイする。そして、実際に動くアプリとしてステークホルダーやユーザーに触ってもらうのだ。「どんどん枝分かれを作っていって、最終的にメインに入れるかどうかを判断すればいい。その分岐をAIの力で量産していけばいいと思っています」
ただし、これはプロダクトマネージャー単独では成立しない。プロダクトマネージャーが自由にコードベースにアクセスできる体制を、組織として整えることが鍵となる。「言語処理的なタスクはAIに任せ、コーディングエージェントの出力を活用していく。その方向性と、それを支援する組織的な基盤を作ることが、マネジメントと組織開発の観点から非常に重要になっています」と小俣氏は述べた。
AI活用やコーディングエージェントによるプロトタイピングが進み、プロダクトマネージャーの業務が高度化する中では、アイデア管理や優先順位付けを支える「基盤」も重要になる。
セッションの締めくくりに、渡辺氏はそのソリューションとして「Jira Product Discovery」を紹介した。アイデアの一元管理から優先順位付け、ロードマップ作成、そしてJiraバックログとのシームレスな連携まで、プロダクトマネージャーが直面する課題に応えるツールだ。
「声の大きい人」の意見ではなく、データをもとに意思決定できるツールとして、渡辺氏はJira Product Discoveryを推奨する。「メールアドレスの登録だけで利用開始できるので、ぜひ試していただければと思います」と会場に呼びかけ、セッションを締めくくった。
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