SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第3回。オフラインとしては初開催です。

ProductZine Day 2024 Summer

ProductZine Day 2024 Summer

「Product Leaders Week 2024」レポート

プロダクトモデルへの変革とPMの役割再定義──マーティ・ケーガン氏が語る真のプロダクトマネジメント

「Product Leaders Week 2024」レポート

 2024年10月22日から24日に開催された日本CPO協会のカンファレンス「PRODUCT LEADERS」では、「シリコンバレー最前線のProduct Leaders像と日本の進化」をテーマに、プロダクトマネジメントの未来が議論された。ProductZine編集部は、Silicon Valley Product Groupのパートナーであるマーティ・ケーガン(Marty Cagan)氏と日本CPO協会代表理事ケン・ワカマツ氏のセッションに注目。ケーガン氏は『INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント』や『EMPOWERED 普通のチームが並外れた製品を生み出すプロダクトリーダーシップ』で知られる第一人者。このセッションでは、ケーガン氏が提唱する「プロダクトモデル」と、それを実現するための組織変革の本質に迫った。

プロダクトモデルへの変革──既存組織に求められるトランスフォームとは

 マーティ・ケーガン氏は、Hewlett-Packard、Netscape Communications、eBayなど、世界を代表する成功企業でプロダクトの定義と構築を担う役員として活躍した。2001年にはSilicon Valley Product Groupを創立し、著作やスピーチ、アドバイス、コーチングを通じて成功するプロダクトづくりを支援している。

 Silicon Valley Product Groupは、『INSPIRED』(原著は2008年刊、リンクはすべて日本語版)や『EMPOWERED』(同2020年刊)を通じ、世界最高の企業が実践するプロダクト開発手法を紹介してきた。2024年3月に出版された『TRANSFORMED』は、企業がプロダクトモデルへと変革し、真のプロダクトオーナーになるための方法を記している。ワカマツ氏は「真のプロダクトマネジメント」や「プロダクトモデル」というコンセプトに注目し、その基本的な概念についてケーガン氏に説明を求めた。

 ケーガン氏は、『INSPIRED』や『EMPOWERED』が、世界で成果を上げている企業のプロダクトへの取り組みを解説・共有したものであると説明する。これらの方法を実践するには、単なるテクニックではなく、文化やプロダクトへのアプローチ全体をどう変革するかという課題に取り組む必要があると指摘する。「プロダクトモデルへの移行」では、文化やリーダーシップの変革が最大の課題となり、この背景から『TRANSFORMED』が生まれた。この書籍は、プロダクト責任者だけでなく、CEOやCFO、CMOといった経営層をも対象にし、組織全体の変革を支援する内容となっている。

 ワカマツ氏は、書籍で触れられているプロダクトマネージャーの役割の「リセット」の必要性に注目した。ケーガン氏は、トップダウン型の企業では意思決定が上層部で行われ、プロダクトマネージャーは上層部が決定した内容を確実に構築し実行する役割にとどまると指摘する。そのため、役割はプロジェクトマネジメントに近い性質を持つ。しかし、企業がプロダクトチームに意思決定を委ねるプロダクトモデルに移行する場合、プロダクトマネージャーにはまったく異なる責任が求められる。

 「プロダクトチームは、構築すべき機能ではなく、解決すべき問題を提示されます。ビジネスや顧客を深く理解し、プロダクトの価値や実行可能性に責任を持つことが求められます。それがプロダクトマネージャーの役割であり、プロダクトが顧客に受け入れられるか、販売やサポートが可能か、法的に適合しているかなどに責任を負います」(ケーガン氏)

 プロダクトマネージャーに求められるのは、単なる進捗管理ではなく、多様な課題を解決しながら顧客に価値を届けることだ。ケーガン氏は「もしチームに意思決定を委ねたいのであれば、そのチームにはそれを実現するスキルが必要です。だからこそ、これを『リセット』と呼ぶのです」と述べた。

 さらにケーガン氏は、プロジェクトベースの人員配置がイノベーションを必要とする組織には不向きだと説く。短期的な目標に特化したこの手法では、チームがノウハウや顧客理解を深める機会が不足し、持続的な価値創造が難しくなる。一方、プロダクトモデルは「永続的なチーム」を基盤に、顧客、データ、テクノロジーを深く理解しながら課題を解決する仕組みを重視する。このアプローチにより、チームは短期的な成果にとどまらず、長期的な競争力を持つプロダクトを生み出せる。プロダクトモデルへの移行は、単なる組織運営の変更ではなく、文化や価値観を変革するトランスフォームそのものである。

次のページ
真のカスタマーセントリックとプロダクトリーダーの役割

この記事は参考になりましたか?

この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

ProductZine(プロダクトジン)
https://productzine.jp/article/detail/3164 2025/01/28 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング