プラットフォームとして大きなグロースサイクルを意識し、思想を伝える
事業の立ち上げから現在に至るまで、「Assured」というセキュリティ評価プラットフォームとしての価値をどのように高めてきたのか。そもそもSaaS(Software as a Service)とプラットフォームではモデルはもとより、マネタイズの形態や成長の方向性なども異なる。
SaaSのビジネスモデルでは、基本的にサブスクリプション型課金が採用される。この形態では、ある一つの企業に対して継続的に価値を提供することが重要となり、サービスの機能を拡張しながらアップセルを図ることで成長を促進するケースが多い。複数のプロダクトを展開し、既存顧客に追加価値を提供することで、収益の最大化が図られるというわけだ。
一方、プラットフォーム型のビジネスモデルでは、複数の企業や個人をつなぐマッチングや課題解決が中心だ。特定のプロダクトを軸に、マッチングできるデータの集積が進むほど、規模が拡大し、より多くのユーザーを引きつけることが可能となる。「Assured」もSaaSとしての側面もありつつ、事業としてデータを増やすことが価値を高めることになる。

プロダクトの成長を促進するために重視したこととして、鈴木氏はまず1つめに「グロースサイクルを的確に捉えること」をあげた。初期の「Assured」の価値提供としては、調査のフローを回すことで「十分」と言えるかもしれない。企業からの調査依頼を受け、事業者からの回答を回収し、それを評価したレポートを提供することで、一定のマネタイズが実現できるからだ。
しかし、より多くのデータを蓄積し、プラットフォームとしての価値を高めるためには、調査以外のデータの収集も視野に入れる必要がある。そこで、クラウドサービスのユーザーに対して、調査せずにデータを収集する環境を作ることを意識し、業務フローの課題解決を支援するソリューションを開発して提供した。また、事業者に対しても、プラットフォームの理念に共感した事業者は自発的に情報を提供するようになると考え、サービス情報の開示を促す仕組みを導入した。当然ながら、蓄積したデータを活用しやすく整備することもサービス価値を高めるには重要な施策といえるだろう。

そして、2つめの重要ポイントとして、「プラットフォームの思想を伝えること」をあげた。
鈴木氏は「プラットフォームという概念は定義があいまいになりがちで、日々の開発やオペレーションに集中していると、目線が下がってしまうこともある。そのため、自社がどこを目指しているのかを常に意識し、共有することが重要だ」と語った。実際には、ミッション・ビジョン・バリューの策定を通じて、自社の目指す方向性を言語化し、これを基に「ブランドブック」を制作し、企業としてどのようなスタンスで顧客の課題解決に取り組むべきか、どのような世界観を構築したいのかを社内で共有したと言う。
また、営業活動でも、「当社はプラットフォームである」というメッセージを積極的に発信していった。その結果、「社会インフラの一つとして成長してほしい」「セキュリティチェックのデファクトスタンダードとして確立してほしい」といった期待の声が寄せられるようになったと言う。鈴木氏は「こうした言葉は、プラットフォームの思想を伝えた結果としていただいたもの。企業としての方向性を明確にすることで、より多くの支持を得ることができた」と語った。
