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Mixpanel, Incからのプロダクトティップス

UXの「摩擦」はどこにある? 「ユーザージャーニーマップ」で可視化する顧客体験の解像度

Mixpanel, Incからのプロダクトティップス 第31回

 「ユーザー中心」を掲げていても、いつの間にか「機能優先」の開発になっていないでしょうか。ユーザーが認知から購入、推奨に至るまでの道のり=「ユーザージャーニー」を可視化することは、プロダクトマネージャーがユーザーの感情に寄り添うための第一歩です。本記事では、UXの阻害要因である「摩擦(フリクション)」を発見するための地図、「ユーザージャーニーマップ」の基礎を解説。ユーザーフローとの違いや具体的なマッピング手法について紹介します。

編注

 原文:「The essential guide to user journeys for product teams」。翻訳にあたり若干加筆修正を行っています。

はじめに

 ユーザージャーニーとは、ユーザーがデジタルプロダクトと関わる際に、認知からエンゲージメント、購入、そしてその先までを網羅する完全なプロセスのことです。

 プロダクトチームとマーケティングチームは、ユーザージャーニーを理解することで、直感的かつパーソナライズされた体験が生まれる機会を特定しながら、より多くのユーザーを獲得し、エンゲージメントを向上し、成長を促進するためのチャンスを見つけることができます。

 「千里の道も一歩から」ということわざがありますが、ユーザージャーニーの場合は、いくつかのステップを踏むものの、できるだけ短く、スムーズであることが理想です。

 ユーザージャーニーは、ユーザーがプロダクトと関わる際にたどる経路です。これを理解すれば、プロダクトチームが各ステップでの摩擦(フリクション)を排除し、より良いユーザー体験を設計できるようになります。

 ユーザージャーニーとは何か、なぜプロダクトチームにとって重要なのか、そしてどのようにマッピング(可視化)するのかについて見ていきましょう。

ユーザージャーニーの理解

 ユーザージャーニーは、ユーザーがブランド、プロダクト、またはサービスに関わる際にたどる一連のステップです。初期の検討段階から購入、使用、そしてその先までをカバーします。顧客の立場に立って、どのようにプロダクトを体験するかを想像することで、顧客をより深く理解できるようになります。

 ユーザー視点から全体像を把握する手段なので、個別のインタラクションを分析するより、はるかに多くの情報を得ることができます。ユーザー中心のプロダクトを開発するのであれば、非常に重要です。

 ユーザージャーニーマップ(以下で詳しく説明します)を用いれば、ユーザージャーニーを可視化して理解できるようになります。

ユーザージャーニー vs. ユーザーフロー

 ユーザージャーニーとユーザーフローを混同している方が多いですが、この2つは同じものではありません。

 ユーザーフローには、ユーザーがプロダクト内で行う特定のアクションに付随する小さなステップも含まれています。プロダクトマネージャーやデザイナーが、プロダクトのUIとユーザーとの関係を理解するのに役立ちます。

ユーザーフローの例:シンプルなログイン操作
ユーザーフローの例:シンプルなログイン操作

 ユーザージャーニーは、プロダクトを発見して使い始めるという体験を、流れに沿った視点で考えます。この中には、ユーザーがプロダクトについてどう感じているかも含まれます。ユーザーフローよりも多くの時間やステップを要する場合もありますが、ユーザーの全体的な体験において、単純にすべてのフローを辿るのでなく、より重要なステップ、例えば、ユーザーがサービスに価値を見出す瞬間などに焦点を当てると効果的です。

ユーザージャーニーの構造

 ユーザージャーニーとは何か、その重要性を理解するため、ECサイトにおける購入までのタッチポイントを例にあげてみます。

  1. ユーザーがSNSでジャケットの広告をクリック(ニュートラル)
  2. ユーザーが広告からECサイトのホーム画面を訪問するが、広告のジャケット画像はない(ネガティブ)
  3. ユーザーが商品を検索(ニュートラル)
  4. レコメンド機能がユーザーが探していたジャケットを表示(ポジティブ)
  5. ユーザーがジャケットをカートに追加(ニュートラル)
  6. ユーザーが商品を購入(ポジティブ)

※ポジティブ/ネガティブ/ニュートラルは、そのインタラクションが引き起こした感情

 この例で、ユーザー体験をさらにスムーズにするために簡単に改善できる箇所はどこか分かりますか。広告クリック後に、ジャケットのページへ直接誘導できるようリンクを変更するだけです。ユーザージャーニーを理解してマッピングすると、このような改善箇所が見つかります。

ユーザージャーニーのステージ

 ユーザージャーニーはさまざまなステージで構成されています。ユーザージャーニーを各構成要素に分解すると、プロダクトとユーザーの関係がどのように進展していくのかを理解できるようになり、顧客のリテンション率の向上にも役立ちます。

 各ステージを見てみましょう。

  • 認知:ユーザーは、あなたの会社、プロダクトまたはサービスが存在することを認識しています。上記のECの例では、ユーザーに広告が表示される段階です。
  • 検討:ユーザーは自分の取れる選択肢を検討します。
    • B2BやSaaSの購入の場合:デモの視聴、ベンダーとの相談、さらなるリサーチなど
    • B2CやECの顧客の場合:レビューの確認、ソーシャルメディアのチェック、競合他社の調査など
  • 決定・購入:ユーザーが購入を決定します。
  • リテンション:既存顧客を維持するコストは、新規顧客を獲得するコストよりもはるかに安いです。リテンション戦略は、購入後のユーザーとの良好な関係を維持することにほかなりません。ロイヤルティプログラム、丁寧なカスタマーサービス、インセンティブなどは、リテンションを促進してくれます(プロダクトや業界によって異なります)が、ユーザーが心躍らせ、使いたいと思うプロダクトを構築することが、プロダクトマネージャーが果たすべき最も重要な役割です。
  • アドボカシー(他者への推奨):プロダクトの素晴らしさに感動したユーザーは、ポジティブなレビューを書く、友人に勧める、SNSで投稿するなど、プロダクトを支持する行動を取ります。支持者は、新規ユーザー獲得とブランドの認知度向上にとって大きな力です。

次のページ
ユーザージャーニーがプロダクトチームにとって重要な理由

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この記事の著者

Brandon Weaver(Mixpanel, Inc)(ブランドン・ウィーヴァー)

Mixpanelのシニア  コンテンツマーケティングマネージャー

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://productzine.jp/article/detail/3866 2025/11/25 11:00

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