編注
原文:「What is product experimentation? How to build, test, and scale smarter.」。翻訳にあたり若干加筆修正を行っています。
はじめに
プロダクト実験とは、新しいアイデアや機能、変更を対照試験して、ユーザー行動や重要な指標への影響を測定する体系的なプロセスです。プロダクトマネージャー、グロースマーケター、エンジニアが、フルロールアウトを決定する前にデータで意思決定を検証する方法です。プロダクト実験の手法には、A/Bテスト、多変量テスト、フィーチャーフラグ、段階的なロールアウト、さらには価格テストも含まれます。
「これは大丈夫」と感じたプロダクトアイデアが、実際に良い成果を生み出せているか分からずに途方に暮れたことはありませんか?
そんなときこそ、プロダクト実験の出番です。成功しているプロダクトチームでは、この手法でアイデアを検証し、迅速に学び、賢く構築しています。A/Bテストからフィーチャーフラグのロールアウトまで、実験を活用すれば、リスクを最小限に抑えながら動向を理解することが可能となります。
プロダクト実験を最大限に活用するためには、単なる直感や実験のON/OFFスイッチだけでは不十分です。再現可能なプロセスや適切なツール、そして成功(あるいは失敗)を明確に測定する方法が必要です。
ここからは、プロダクト実験の意義や効果的なテストの実施方法、そして実験開始からフィードバックまでを迅速に実施できるツールについてもご紹介します。
プロダクト実験とは
先ほど述べたように、プロダクト実験とは、新しいアイデア、機能、変更を管理できる方法でテストして、ユーザー行動や主要指標への影響を測定する体系的なプロセスです。プロダクトマネージャーやグロースマーケター、エンジニアが、フルローンチを決定する前にデータで意思決定を検証するための方法です。
一般的に、プロダクト実験には次の特徴があります。
- 仮説駆動型:証明または反証したいアイデアから始める
- データインフォームド:実施の前、最中、後にデータを収集して成功を測定する
- 反復的:実験が失敗した場合でも学びを得て適応する
プロダクト実験のメリット
プロダクト実験は、よりよいプロダクトを構築しようとするチームにとって、大きな利点があります。
- 意思決定の加速:アイデアを実際のユーザーデータですばやく検証することで、推測を減らし確信を持って行動できる
- リスク低減:小規模に変更をテストして、広範なユーザーに影響を与える前に潜在的な問題を発見できる
- ユーザーエンゲージメント向上:実験によりユーザーに真に響く要素が明らかになり、よりパーソナライズされた効果的な体験創出が可能になる
- プロダクトマーケットフィットの改善:テストから得られる知見が、ユーザーが実際に望み価値を感じる機能を開発する指針となる
プロダクト実験をする/しないの判断
プロダクト実験は洞察を明らかにし、より賢明な意思決定を導く一方で、実験すべき時を知ることと同じくらい、実験すべきでない時を知ることも重要です。
実験するべき場合
行いたい意思決定が不確実であり、元に戻すことが可能で、かつ測定可能な場合です。新しいオンボーディングフローの導入、価格戦略の微調整、コンバージョンに重要なページのレイアウトテストなどを行う場合は、実験によって明確な判断ができるようになり、自信を持って前進できるはずです。
Bolt社は、効果的かつ体系的に実験を推進している企業です。同社は欧州初のスーパーアプリとして、500以上の都市で配車サービス、カーシェアリング、フードデリバリーなどを提供しています。Boltのチームではユーザー行動を理解し、より迅速かつ賢明なプロダクト決定を行うための信頼性の高い手法が必要でした。実験は、機能の最適化、摩擦の低減、プロダクト改善と主要なビジネス成果の整合を図る戦略の中核となっています。
「消費者向けでは、配車サービスのサーチャージ(需要急増時の料金)廃止がコンバージョン率向上につながるかどうかをMixpanelで検証しました」とBoltのデータアナリティクマネージャー、ニキータ・ストレズネフ氏は語ります。
「これまで、高レベルな視点からの効果の把握は困難でしたが、Mixpanelが提供する細かな分析と確かなデータを活用することで、『実験すべきか否か』という判断にプロダクト開発が停滞する状況を打破できました」
これにより、Boltは乗車キャンセル率を3%削減、Android開発者のリソースも15%減少しました。さらにプロダクトデータにアクセスする社内ユーザー数が倍増し、実験文化の定着と知見に基づく意思決定をより深いものに改善できたのです。
実験すべきでない場合
実験が最善の選択肢とならない状況もあります。例えば以下のような場合です。
- ユーザーベースが小さすぎ:統計的に有意な結果が得られないと、誤った結論を導くリスクがあります。
- 変更が些細または影響が小さい:実験にリソースを割くよりも、直接変更をリリースして、真に重要な課題に集中させる方が得策です。
- プロダクト発見の初期段階:定性的なフィードバックと直感で反復サイクルを推し進めたほうが良いです。この時期に実験しようと急げば、かえって進捗が遅れる可能性があります。
実験は例えるならば、ハンマーではなくメスです。慎重に用いれば戦略的ツールとなりますが、無分別に用いれば、誤った革新や、時間とリソースの浪費を招いてしまいます。
プロダクト実験とA/Bテストとユーザーリサーチの違い
この3つの用語はよく混同されますが、重要な違いがあります。
プロダクト実験は包括的な総称です。A/Bテスト、多変量テスト、フィーチャーフラグ、段階的ロールアウト、さらには価格テストも含みます。
A/Bテストは特定のテスト方法です。グループAにはバージョンAを、グループBにはバージョンBを表示し、結果を比較します。
ユーザーリサーチはまた別のテスト方法で、定性データからユーザーが特定の行動をとる理由を明らかにします。
大規模な現実世界の影響を測定する際には、定量データと定性データの組み合わせが不可欠です。「何が」起こっているのかと「なぜ」そうなるのかの両方が明らかになるからです。A/Bテストやその他のプロダクト実験から得られる定量データは、ユーザーベース全体で何が機能しているか(あるいは機能していないか)を示します。一方、セッションリプレイやユーザーリサーチなどの定性的な知見は、それらの行動の背後にある動機や摩擦を理解する上で役立ちます。
プロダクト実験フレームワーク:基本編
プロダクト実験が、単なるテストの実施を越えて学習と成長を促進し、反復可能かつ拡張性のあるシステムによって支えられるようになったなら、その実験は成功です。優れたチームは実験自体をプロダクトのように扱います。実験を反復し、改善して、時間とともに効果を増幅させるプロセスを構築していきます。
成功しているチームの多くは仮説駆動型ループを採用しています。これはテストをユーザーニーズとビジネス目標に整合させるフレームワークであり、通常は以下の流れで構成されます:
- ユーザーまたはビジネス上の課題を特定する
- 仮説を立てる(Xを実施すればYが改善される)
- 実験の種類を選択する
- トラッキングを設定して開始する
- 結果を測定する
- 効果的なものを拡大する
他にもさまざまなフレームワークが存在します。スピードを重視するものもあれば、統計的厳密性やユーザーリサーチの深さに焦点を当てるものもあります。例えばGoogleのHEARTフレームワークは、実験を幸福感やエンゲージメントといったユーザー中心の指標と結びつけています。最も重要なのは、具体的な手順そのものではなく、実験システムがチームの意思決定をより良く、より迅速に、より確信を持って行えるように支援できるかどうかです。
実験の種類
課題によって必要なテスト手法は異なります。以下は、最も一般的なプロダクト実験の種類です。
- A/Bテスト:古典的なテスト手法。異なるユーザーグループに2つのバージョン(AとB)を表示し、どちらのパフォーマンスが優れているかを測定します。CTA、画像、レイアウトなどの単一変数の変更をテストするのに最適です。
- 多変量テスト:複数の要素(見出し+ボタン+色など)を同時にテストし、組み合わせのパフォーマンスを確認します。複雑性を許容できる高トラフィック領域に最適です。
- フィーチャーフラグ:新規コードをデプロイせずに、特定ユーザー向けに機能をオン/オフします。フラグによりバックグラウンドでのテスト、体験のパーソナライズ、段階的な変更導入が容易になります。
- 段階的ロールアウト:機能をリリースする際、主要指標をリアルタイム監視しながら、ユーザー割合を徐々に増やしていきます。迅速な対応が必要な際のリスク管理に有効です。
Mixpanelからのヒント:すべての実験が派手である必要も複雑である必要もありません。時には、コピーやボタンの配置、マイクロインタラクションの小さな調整が大きな成果につながることもあります。
