SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

ProductZine Day 2025

SaaSプロダクトの実例から学ぶプロダクトマネージャーとチームの理想的なあり方

BtoBからのBtoCプロダクトへの挑戦──「仮説構築」と「仮説検証」の両輪を回し続けることの重要性

SaaSプロダクトの実例から学ぶプロダクトマネージャーとチームの理想的なあり方 第5回

データに基づく仮説検証:訪問率4.6倍への道筋

 ツールチップ経由の遷移率が1.07%という結果を受け、私たちは「ユーザーの行動データを客観的に分析しよう」という方針へと舵を切りました。

 まず取り組んだのは、ユーザーがモノグサマーケット内のコンテンツにたどり着き、実際に学習を始めるまでの行動を段階ごとに分解したユーザーファネルの構築です。このファネルをベースに、各段階でどれだけのユーザーが行動を起こしているかを計測し、改善のターゲットを明確にしました。

ユーザーファネルの構成
  • Potential User:モノグサマーケットの対象となるユーザー
  • Tab switch User:モノグサマーケットのあるタブに切り替えたユーザー
  • Marketplace User:商品一覧ページに来たユーザー
  • Product User:個別商品の詳細ページに来たユーザー
  • Converting User:購入ボタンを押したユーザー
  • Revenue User:購入フローを最後まで終えたユーザー
  • その他、学習開始ユーザー、リピーターなど。

 ファネル分析の初期段階では、最上流の「Tab Switch User」(モノグサマーケットのタブに遷移したユーザー)が全体の11.6%にとどまっていることが判明。ここがボトルネックであると仮説を立てました。

ボトルネックの要因を探る:注目したのは「最後に見た画面」

 さらに深掘りを進めたところ、「ユーザーがアプリ内で最後に見ていたビュー」にヒントがあることが分かってきました。以下はその割合です。

  • ホームタブ終了:21.06%
  • 学習終了画面:16.06%

 このデータから私たちが導き出した新たな仮説は、「ユーザーの行動を妨げるのではなく、『自然な終了地点』で次の選択肢を提示すべきではないか?」というものでした。

仮説検証:学習完了後にマーケットを提案する導線へ

 この仮説を検証すべく、データチームと連携し、学習完了画面からモノグサマーケットへの導線を追加するというA/Bテストを設計・実施しました。結果は明確で、統計的にも有意な改善が確認されました。

A/Bテスト結果(商品ページへの訪問率)
指標 従来(旧導線) 変更後(新導線) 改善幅 p値
商品一覧ページ訪問率 4.4% 20.4% +4.6倍 0.0000
商品詳細ページ訪問率 2.5% 6.7% +2.7倍 0.0000

 商品一覧ページへの訪問率は4.4%から20.4%へと4.6倍に向上。p値もいずれも0.0000と、統計的に極めて信頼できる結果となりました。

おわりに:企画とデータ、その両輪を回し続ける

 BtoB企業として出発した私たちが、toC領域へ挑戦した今回のプロジェクトは、「丁寧な企画とユーザー理解」からスタートし、「失敗と学び」、そして「データドリブンな仮説検証」へと展開していった、濃密なプロセスでした。

 私たちがこの挑戦から得た最大の学びは、「仮説構築」と「仮説検証」の両輪を回し続けることの重要性です。インタビューなどの定性調査で方向性を見極め、実データによる検証で進み方を磨いていく。この往復運動こそが、不確実性の高いプロダクト開発において、最も強力なアプローチであると実感しました。

 クローズドβから始まった「モノグサマーケット」は、2025年7月時点で約11万人の小中高生に対象を拡大。まだ始まったばかりのサービスではありますが、今後も仮説検証のサイクルを回し続けながら、より多くの学習者の「記憶の課題」を解決していきます。

 次回は、弊社のプロダクトマネージャーメンバーが、「マーケットインではなくプロダクトアウトで真の価値を提供する方法(仮)」をご紹介する予定です。どうぞお楽しみに。

この記事は参考になりましたか?

SaaSプロダクトの実例から学ぶプロダクトマネージャーとチームの理想的なあり方連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

岩楯 恭司(モノグサ株式会社)(イワダテ キョウジ)

モノグサ株式会社プロダクトマネージャー。 早稲田大学政治経済学部卒業、英国マンチェスター大学Full-Time MBA修了。 KLab株式会社、クックパッド株式会社、弁護士ドットコム株式会社各社にて新規事業の立ち上げや事業責任者を歴任。2023年にモノグサ株式会社に入社。BtoB領域のP...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

ProductZine(プロダクトジン)
https://productzine.jp/article/detail/3597 2025/07/31 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング