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ProductZine Dayの第3回。オフラインとしては初開催です。

ProductZine Day 2024 Summer

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「プロダクトマネージャーカンファレンス 2024」レポート

100人規模の組織でもスピードを失わない──ログラスが実践する「合議ではない」集合知型のチームづくり

「プロダクトマネージャーカンファレンス 2024」レポート

スピードと納得感の両立──後藤田五訓に学ぶリーダーシップ

 次に斉藤氏は、自身が頼りにしている「後藤田五訓」を紹介した。これは、中曽根内閣の官房長官だった後藤田正晴氏が、各省庁から派遣された新任の責任者に向けて行った訓示で、組織を円滑に動かし、国益を優先するためのリーダーシップの在り方を説いた教えだ。この訓示は、現代のビジネスシーンでも応用できる重要な指針として捉えられている。それぞれの項目について以下のように解釈できる。

1.省益を忘れ国益を思え

 個々の部署や個人の利益にとらわれず、全体の利益、すなわち国益を最優先に考えるべきだという教えだ。企業においても、部門間の障壁を取り払い、組織全体の目標を共有することが求められるという点に通じる。

2.悪い本当の事実を報告せよ

 問題を隠さず、ありのままの事実を共有することが重要だ。組織の意思決定を誤らせないためには、正確な情報が不可欠であり、これには情報を適切に編集し、共有する姿勢が求められる。

3.勇気をもって意見を具申せよ

 リーダーに対して自分の意見を率直に述べることを推奨している。「後から違う意見を持っていた」と言い訳をするのは悪であり、正しいと思うことをその時点で述べる勇気が必要だ。この姿勢が組織の健全な意思決定に寄与する。

4.自分の仕事でないというなかれ

 組織全体の利益を考えるならば、仕事はすべてが繋がっている。自分の役割や責任を限定的に捉えるのではなく、全体の成功に向けて動くべきだという教えだ。

5.決定が下ったら従い、命令は実行せよ

 最終的な決定が下されたら、それに従って実行することが重要だ。このルールが守られることで、組織はスピード感を持って前進できる。

 斉藤氏は「この集合知の話は、これを頭の中で思いながら出た言葉だった」と振り返り、ログラスで実施した具体的な戦略構築のエピソードに話を移した。

ワークショップで実現した「適切な巻き込み」

 プロダクトの成功には明確な戦略が不可欠だ。斉藤氏は、社内で情報を収集し、ビジネス部門や経営と議論を重ねる中で、市場拡大、単価向上、チャーンレート改善といった事業インパクトを整理しながら戦略を構築した。しかし、一人でつくった戦略には常に「これで良いのか」という不安がつきまとう。そこで斉藤氏は、「この不安こそ集合知を活用するチャンス」と捉え、チーム全員で考えるためのワークショップを実施した。

 エンジニアやデザイナーを含むプロダクトチーム総勢30人が4〜5人のチームに分かれ、2つのワークを行った。ワーク1では、「受注や失注」「単価」「解約率」「市場の収縮」などの指標を挙げ、それぞれの優先度を理由とともに書き出した。理由を記載することで、判断基準の共有を図った。ワーク2では、顧客価値につながる課題について、「どのようなイシューを解決すべきか」「どのような価値を提供すべきか」を議論し、セキュリティの強化やパフォーマンス向上、データベースの利便性向上といった具体案が挙がった。

30名ほどのメンバーが参加する2つのワークで戦略の指針を探った
30名ほどのメンバーが参加する2つのワークで戦略の指針を探った

 このワークは、チーム全体の多様な視点を可視化し、戦略に命を吹き込む契機となった。1時間半の議論で、優先順位が大きく異なる意見が次々に出され、各メンバーの視点の違いを認識する場となった。エンジニアやデザイナーなど、それぞれの視点での考えを知ることで新たな発見があったのだ。斉藤氏は「プロダクトマネージャーだけでは見えていなかった視点が取り込まれて重要な見落としを防げました」と語る。同時に、「集合知の力を実感しつつも、誰かが最終的に決める必要がある」という合意も自然に形成された。

 「このとき、戦略に初めて息が吹き込まれた感覚がありました。それまでは単なる絵に描いたようなもので、机上の空論に過ぎませんでした。しかし、この議論を通じて、『これをやらなければいけない』という結論にみんなが納得し、実行可能な戦略が初めて形になったと感じました。あの瞬間の感覚は今でもよく覚えています」

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相互支援型のアプローチがもたらすプロダクト開発の未来

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

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