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ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

ProductZine Day 2025

広告×AIで切り拓くプロダクト戦略──プラットフォーマーに負けない“データ活用”の最前線

生成AIを活用したプロダクト戦略【実践編】──「センス」をデータで磨き、クリエイティブの“勝ちパターン”を再現する

広告×AIで切り拓くプロダクト戦略──プラットフォーマーに負けない“データ活用”の最前線 第2回

3.リファレンスAI──SimCLRによる大規模バナー解析

 ここからは、対照学習という仕組みに基づく、SimCLR(Simple Contrastive Learning of Representations)を用いた事例をご紹介します。これは、職人的な目利きに依存せず、大規模データを活かした自己教師あり学習によって広告を効率的にクラスタ(類似度グループ)化するアプローチです。

(1)Contrastive Learning(対照学習)とは?

 従来の教師あり学習は、人間がラベル付けした「正解データ」を元に学習させるため、データ量がどうしても限られていました。これに対し対照学習では、同じ画像から拡張(クロップ・反転・明るさ変更など)した類似データ同士を「近い特徴量」に、別由来の画像データ同士を「離れた特徴量」にするよう学習させます。これはラベル付け不要の自己教師あり学習であり、大量のデータを一気にモデル訓練できるのが強みです。

 この仕組みにより、人間がわざわざ画像にラベルを付けなくとも「似たような画像=特徴量が近い」という概念ベクトル空間をモデルが学習します。広告を数十万件単位で学習させれば、配色やレイアウト、トンマナが近いバナーを自動的に「近い」位置へマッピングし、外れ値やノイズを排除できます。

(2)広告クラスタリングによる代表クリエイティブの可視化

 広告には配色・レイアウト・商品の配置パターンなど多様な要素がありますが、SimCLRのような自己教師あり学習を使えば、膨大な広告データを以下のように整理・活用できます。

クリエイターの感覚的な「似ている/似ていない」をAIが学習

 あるバナーを入力すると、背景色や配置テイストが近いバナーの候補を数秒で大量に表示し、参考例を一覧できます。重複候補と見なせるほど類似度が高い(例:99%近い)バナーは検索結果から除外する仕組みも用意されており、クリエイターが制作プロセスでリファレンスを収集する時間を80%削減することに成功しました。

上位実績クリエイティブの可視化

 似ている/似てないが分かるリファレンスAIを応用することで、これまで可視化が難しかったデザイン上のトレンドを可視化し、成果指標が高いバナーを抽出して類似したデザイン要素を持つクリエイティブをグルーピングすることが可能になります。

 下図はヘルスケア系の広告をグループ化してマップ上に可視化したものです。密集している領域から中心点(×)を取り出し、それを代表クリエイティブとして抽出しています。

 そうした分析を行うと、例えばヘルスケア系広告は人物のアップを多用し、金融系広告は数字を強調したレイアウトが効果的であるなどの傾向が浮かび上がり、高成果を生み出すクリエイティブに共通する要素を「勝ちパターン」として定義できます。

 その結果、まだ試したことのない手法や要素について、次の広告制作における訴求やデザインの方向性として活用しやすくなります。

 このプロセスを定期的に繰り返すことで、クリエイターの直感だけに頼らず、トレンドを観測しながらトレンドのクリエイティブを継続的に把握し、制作に適用させる仕組みを構築することができます。

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4.まとめ

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この記事の著者

今井 文哉(株式会社リチカ)(イマイ フミヤ)

名古屋大学卒業後、アマゾンジャパン合同会社に入社。2020年には株式会社Mobiusを創業し、代表取締役として地方創生や宿泊施設のEC開発を推進。その後、株式会社GROOVEにて取締役CBOを務め、経営戦略や企業ブランディング、 人事・採用業務の統括を担う。 2023年にリチカへ参画し、IT業...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

内田 均(株式会社リチカ)(ウチダ ヒトシ)

株式会社リチカ シニアフェロー(前 CTO) 東京工業大学大学院 知能システム科学専攻 修士課程修了。キヤノン株式会社にてブラウザエンジンWebKitやXMLの研究開発に従事。米国マサチューセッツ工科大学 人工知能研究所内のティム・バーナーズ=リー博士の研究室にて セマンティック・ウェブや機械...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://productzine.jp/article/detail/3696 2025/09/12 11:00

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