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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

ProductZine Day 2025

広告×AIで切り拓くプロダクト戦略──プラットフォーマーに負けない“データ活用”の最前線

生成AIを活用したプロダクト戦略──プラットフォーマーに負けない独自価値とは?

広告×AIで切り拓くプロダクト戦略──プラットフォーマーに負けない“データ活用”の最前線 第1回

 広告クリエイティブ領域において生成AIを積極的に活用している企業である「株式会社リチカ」。本連載では、効果予測AIや独自のコピーライティングAIといった、さまざまなAIプロジェクトをリードしているCPOの今井文哉さんが、豊富な経験に基づいて、AIを組み込んだプロダクト設計における具体的なポイントを解説します。第1回は、生成AIプロダクトが直面する壁と、その乗り越え方について、具体的な事例を交え、説明していただきます。(編集部)

はじめに──AIで「勝ち筋」をどう設計するか

 近年、生成AIや大規模言語モデル(LLM)の進歩によって、私たちのプロダクト開発のあり方は大きく変わろうとしています。例えば、弊社(株式会社リチカ)が手掛ける広告やマーケティングの領域においても、コピーやクリエイティブの自動生成が注目を集めていますが、プロダクトマネージャーの皆さまにとっても「生成AIを製品やサービスにどう組み込み、差別化するか」が喫緊の課題になっているのではないでしょうか。

 しかし一方で、AI領域は技術更新のスピードが速く、いま目の前にある成果やノウハウがあっという間に陳腐化するリスクも抱えています。また、MetaやGoogle、OpenAIなどの巨大プラットフォーマーが莫大な資本を投じてAI基盤を整備するなか、後発の事業会社やスタートアップが同じ土俵で戦うことはきわめて厳しい局面があるのも事実です。

 そこで鍵となるのは、「独自ドメインへの深い理解」や「自社が保有する独自データ」、さらにはそれらを巧みに融合し、AIと人間それぞれの強みを活かしたプロダクト設計です。「プラットフォーマーが踏み込みにくく、かつ高度な専門性や連携体制が求められる領域」で勝ち筋を見いだすことが、AI時代のプロダクトマネジメントには欠かせません。

 本記事の執筆を担当した株式会社リチカは、広告クリエイティブ領域において生成AIを積極的に活用している企業です。40万件を超える広告配信データをベースに、効果予測AIや独自のコピーライティングAIなど、AIを活用したプロダクト開発と運用に取り組んでいます。著者であるCPOの今井は、これらのプロジェクトの中心に立ち、AI技術と広告戦略の融合を推進。独自の知見を活かした差別化されたプロダクトの設計・展開を主導しています。本稿ではその豊富な経験に基づき、AIを組み込んだプロダクト設計における具体的なポイントを解説します。

1.生成AIプロダクトが直面する3つの壁

 生成AIプロダクトを検討・開発するうえで多くの企業が直面しがちな「3つの壁」についてご説明します。

1-1.技術のアップデート速度

 生成AIや大規模言語モデルは日々進化しています。大手プラットフォーマーのモデルも連日のようにバージョンアップされ、それらを活用した新しいプロダクトやサービスが次々とリリースされている状況です。そのため、いま手にしている成果やノウハウが短期間で陳腐化してしまうリスクが非常に高いと言えます。こうした高速な技術アップデートのなかで、継続的に学習や改善に取り組まなければ、ビジネス成果を持続的に生み出すことが難しくなるのが大きな課題です。

1-2.ドメイン選定と独自データ

 AIは汎用的に活用できる反面、プラットフォーマーとの真っ向勝負になりやすい領域ほど、資本力やデータ量で劣る企業は不利になりがちです。そのため、「どこで差別化を図るか」というドメインの選定が非常に重要になりますが、「自社ならではのデータがない」という思い込みから、結果的にプラットフォーマーと同じ土俵で競合せざるを得ないケースも少なくありません。自社に眠っている顧客行動データや過去の実績、業界特有の知識などを十分に活用できなければ、独自の価値を発揮できずに終わってしまうリスクがあります。

1-3.深い業務プロセスの理解

 プロダクトを利用する現場のプロセスをどれだけ正確に理解できているかが、AI活用の成否を分けます。例えば広告クリエイティブでは、出稿媒体やターゲットごとに最適な構成が異なるうえに、戦略的な意図も踏まえたチューニングが必要です。ユーザーストーリーや要件定義を適切に行わなければ、生成されたコンテンツが成果に結びつかないどころか、ユーザーが使いにくいサービスとして敬遠される可能性があります。

次のページ
2.壁を乗り越える戦略フレーム

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この記事の著者

今井 文哉(株式会社リチカ)(イマイ フミヤ)

名古屋大学卒業後、アマゾンジャパン合同会社に入社。2020年には株式会社Mobiusを創業し、代表取締役として地方創生や宿泊施設のEC開発を推進。その後、株式会社GROOVEにて取締役CBOを務め、経営戦略や企業ブランディング、 人事・採用業務の統括を担う。 2023年にリチカへ参画し、IT業...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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