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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

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Mixpanel, Incからのプロダクトティップス

プロダクトローンチの際に考えるべき指標トップ21

Mixpanel, Incからのプロダクトティップス 第29回

 新たなプロダクトをリリースする際に、自社のKPIを理解せずにローンチに進む、という大きなミスを犯しがちです。もっと悪いケースでは、意味のない虚栄の指標(バニティメトリクス)を追っていることもあります。成功をつかむには、最初から正しい指標を追跡することが大切です。各指標の定義が明確で、全チームが指標内容に合意していて、データの解釈方法を知っている必要があります。この記事では、すべてのプロダクト企業が追跡すべき21の重要指標を詳しく紹介しながら、データを行動へとつなげる方法について解説します。

編注

 原文:「The top 21 metrics for startups to track」。

 原文はスタートアップ向けとなっていますが、すべてのプロダクト企業に適用される内容のため、翻訳にあたり加筆修正を行っています。

プロダクトのローンチに重要なビジネス指標と財務指標(1)

売上 vs. 収益

 この2つの指標の対比からは、プロダクトの販売実績、財務の健全性、将来の成長見通しについての貴重な洞察を得ることが可能です。

  • 将来の収益を予測:受注件数からは、財務の健全性を予測できます。収益がまだ発生していない段階でも、顧客と締結した契約の価値が理解できます。将来の収益源を予測して、十分な情報に基づいたビジネス上の意思決定を行う際に役立つ指標です。
  • 販売実績の評価:受注件数と実際の収益を比較することで、自社の販売戦略の有効性を評価できます。受注件数の伸びが好調であれば、販売パイプラインが正しく、顧客基盤が拡大していることが分かります。
  • キャッシュフローの管理:立ち上げ時はリソースに限りがあることが多いものです。受注から収益がいつ見込めるかを知ることは、支出や投資を計画する際に役立ちます。
  • 投資家への対応:受注件数件数は投資家が注目する重要な指標であり、この指標でスタートアップの将来性を評価します。好調な受注件数の伸びは、投資を呼び込み、会社の将来性に関する信頼を高めます。

データにもとづくアクション

  • 受注件数の伸びを分析:獲得契約数が増え、取引額も増えていますか? 営業成績が好調で、将来の収益が見込めることを示しているかもしれません。
  • 収益認識のモニタリング:会計基準に準拠し、正確に収益を認識していることを確認します。これにより、現在の財務実績を明確に把握できます。
  • 受注件数と収益の比較:受注件数と収益の間に大きな開きがある場合、販売サイクルが長いか、サービス提供に遅れが生じているかもしれません。これはキャッシュフローや財務予測に影響を与える可能性があります。
  • 受注件数を予測に活用:受注件数は実際の収入にはならないですが、将来の収入を予測して成長計画を立てる上で便利です。

 受注件数は契約締結時に計上されますが、収益はサービスが提供されるにつれて長期的に発生するため、タイミングの違いに留意する必要があります。また、サブスクリプション・ビジネスの場合、受注のうちまだ収益を得ていない部分は、貸借対照表上、繰延収益として計上されます。

継続収入 vs. 総収入

 この比較により、収入の予測可能性と安定性を理解できます。継続収入とは、購読料のように定期的に入ってくる収入です。安定した基盤を提供し、長期的な成功の重要な指標となります。この数字は時間の経過とともに増えていくと理想的です。継続収入が高ければ、将来の収入の予測可能性も高くなり、これは計画と投資を考える際に極めて重要となります。

 総収入は、一時的な売上、プロジェクトの費用などを含むすべての収入の流れを包括したものです。重要ではありますが、継続収入ほどの安定性はありません。

データにもとづくアクション

  • 継続収入が低い:サブスクリプション、ロイヤリティ・プログラム、長期契約の提供など、経常収益を増やす戦略に注力する。
  • 継続収入が高い:既存顧客ベースの価値を最大化するため、顧客維持と拡大を優先する。

粗利

 粗利は、中核となるプロダクトやサービスから、その生産に関連する直接費用を差し引いた後の収益性を明らかにしたものです。

 この指標は、以下を実施、把握するために不可欠です。

  • 価格の分析:自社の価格設定は、コストをカバーし、利益を生み出すために十分な価格帯になっているか。
  • コストの管理:品質を犠牲にすることなく、売上原価(COGS)を削減する機会はあるか。
  • プロダクト/サービスの採算性:中核となるプロダクトは、事業を維持する上で十分な収益性があるか。

データにもとづくアクション

  • 粗利益が低い:価格設定、COGS、生産プロセスを分析し、改善すべき点を特定する。
  • 健全な粗利益:マーケティングや営業などの成長イニシアチブに投資し、収益と収益性をさらに高める。

合計契約金額(TCV) vs. 年間契約額(ACV)

 この指標の比較により、特に長期契約を結んでいる企業では、顧客との関係の長期的価値に関する洞察が得られます。合計契約金額(Total Contract Value、TCV)とは、全期間にわたる顧客契約の総価値であり、すべての定期的および一時的な料金を含んだもので、特定の顧客からの収益の可能性を包括的に示すものです。年間契約価値(Annual Contract Value、ACV)とは、顧客契約から発生する平均年間収益です。ACVは、異なる契約期間の収益を正規化し、より一貫性のある比較基準を提供する上で役立ちます。

データにもとづくアクション

  • TCVとACVの傾向を分析:より大きな規模の契約を獲得しているか、平均年間契約額が増加しているか。
  • 将来の収益を予測:ACVを使用して経常収益を予測し、将来の成長を計画する。
  • アップセルとクロスセルの機会を特定:ACVが低い契約を分析し、顧客価値を高める可能性を特定する。

顧客生涯価値(LTV)

 顧客生涯価値(Life Time Value、LTV)は、1人の顧客と企業との関係全体を通して期待できる総収益を予測します。

  • 顧客獲得コストの分析:顧客獲得コスト(Customer Aquisiton Cost、CAC)がLTVより低くなっているか。CACのほうが高い場合、新規顧客1人あたりで損をしていることを意味する。
  • セグメンテーションとターゲティング:最も価値のある顧客セグメントを特定し、 そのセグメントに合わせてマーケティング活動を行う。
  • リテンション戦略:顧客を満足させ、従事させ続けるためにどれだけの投資をすべきかを理解する。

データにもとづくアクション

  • LTVが低い:顧客寿命(リテンション)の延長、購入頻度(アップセル/クロスセル)の増加、または平均購入額の増額に重点を置く。
  • LTVが高い:高付加価値セグメントの顧客獲得に投資し、彼らの満足度を優先する。

流通取引総額(GMV) vs. 収益

 この比較は特に、買い手と売り手の取引を促進するマーケットプレイスやプラットフォームにとって重要です。「流通取引総額」(Gross Merchandise Value、GMV)は、自社のプラットフォームを通じて販売された商品の総額で、自社のマーケットプレイスの全体的な規模と成長を示します。「収益」とは、これらの取引からの実際の収益で、通常はGMVのパーセンテージとして得られるものです(例:手数料、取引手数料)。

データにもとづくアクション

  • GMV成長の分析:自社のマーケットプレイスはより多くの買い手と売り手を引きつけているか。
  • 収益創出のモニタリング:競争力を維持しながら収益性を最大化するために、料金は最適か。
  • 改善できる領域の特定:価値の高い販売者をもっと集める、または買い手の体験を改善することで、GMVを増加できるか。

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プロダクトのローンチに重要なビジネス指標と財務指標(2)

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この記事の著者

Brandon Weaver(Mixpanel, Inc)(ブランドン・ウィーヴァー)

Mixpanelのシニア  コンテンツマーケティングマネージャー

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://productzine.jp/article/detail/3688 2025/09/05 11:00

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