事業計画を読む力を鍛えるために
ここまで読んで、「では具体的に何から始めればいいのか」と感じた方もいるかもしれません。いくつか、実践できそうなことを挙げてみます。
まず、自分のプロダクトロードマップを事業計画のロジックとつなげて説明してみることです。ロードマップの優先順位を、事業計画の構造から説明できるか。試しにレポートラインの人と壁打ちしてみて、どこに違和感があるかを確認する。これだけでも、自分がどの層にいるのかが見えてくるのではないかと思います。
もう一つは、自社と事業構造が近い先行企業をベンチマークすることです。同業である必要はありません。単価感、顧客層、プロダクトレッドかセールスレッド(※)か、といった構造的な特徴が近い会社を見つけて、IRや財務諸表を読み、その会社がどういう勘所を押さえて事業を伸ばしているかを分析する。個人的には、いわゆる競合のプロダクト機能を比較する競合調査よりも、ずっと大事なのではないかと思っています。
そして、自社の事業を知らない人に端的に説明してみること。自社がどうやって伸びてきたか、これからどう伸ばしていくのか、そのために今何が課題なのか。これを相手に合わせて語れるかどうかは、本当の意味で事業を理解していないとなかなかできないことだと感じています。個人的には、採用候補者とのカジュアル面談がこのトレーニングの場としてとても機能していました。自社のことを知らない方に、端的に、相手の立場を踏まえて説明する。これは明日からでもできることかもしれません。
なお、以前「 プロダクトマネージャーが限界まで経営目線に近づくために実践している3つのこと 」というnoteを書いたことがあります。今回の話と重なる部分も多いので、興味がある方はそちらもあわせて読んでいただけると、より立体的に捉えられるかもしれません。
(※) プロダクトレッドグロース(Product-Led Growth)は、マーケティングや営業を人ではなくプロダクト自体が担う(例:無料トライアルなど)ビジネスモデルのこと。セールスレッドグロース(Sales Led Growth)は、営業担当者が顧客にアプローチし、プロダクトを販売するビジネスモデルのこと。
まとめ
今回、ミドルPMとシニアPMの間にあるキャズムの一つとして、「事業計画を読めるかどうか」を取り上げました。
ミドルPMは、プロダクトの中から考える。ユーザーの課題を捉え、機能を磨き、プロダクトを良くしていく。それ自体はとても重要な仕事だと思います。
しかしシニアPMは、事業計画の数字をただ受け取るのではなく、その裏にある構造を分解し、どこに賭けているのかを読み取る。そして、その賭け方が自分たちのプロダクトに何を求めているのかを理解し、計画を立てている主体者と意図をすり合わせ、自分のロードマップとの整合を考え、必要であれば方向を変える判断まで引き受ける。プロダクト戦略が事業計画と構造的につながっているかどうかに、責任を持つ。
このキャズムを越えられるかどうかが、ミドルとシニアを分ける1つのラインなのではないかと、私は考えています。
次回は、もう一つの視点である「組織を理解し、動かす」について掘り下げていきます。
