エンジニアがエンジニアリングすべきはシステムではなく「顧客への提供価値」
このように失敗から多くを学んだTISが、これからどう新規事業開発に取り組んでいくのか。木利氏は「われわれエンジニアやデザイナーの中にある『「何を作るか」を人任せにする姿勢』こそが、新規事業開発を阻む一番の要因だと考えるに至った」と語り、その背景について、次のように述べた。
「新規事業開発ではスクラムをよく利用する。われわれは、『プロダクトオーナーは事業責任者しか担えない』という先入観を持っていた。つまり、『事業価値を最大化する責務は、われわれにはない』という前提が無意識のうちにできあがっていたのだ。
しかし、われわれの本来のミッションは、事業を成功に導くための戦略を描くことであるはず。エンジニアは要件をシステムに変換するコンバーターではない。エンジニアが作るべきものはシステムではなく『顧客への提供価値』であることを肝に銘じ、『「どう作るか」の前に「何を作るか」、「何を作るか」の前に「なぜ作るか」』を強く意識しながら、実現すべき要件を自ら定めていく姿勢を大切にしたい」。
こうした考えのもと、TISでは複数の事業でエンジニアがプロダクトオーナーを務めるようになっており、「俺たちが価値を創り出して、ビジネスサイドに『これをガンガン売って来い』と言えるようにする」と豪語するエンジニアも生まれてきているという。そんな事業価値にまで踏み込むエンジニアの挑戦は、Fintanで継続的にチェックしていただきたい。