3つの視点によるむきなおり
チームとして次に踏み出す一歩、さらにその先の二歩、三歩と方向性を見直すための機会のことを「むきなおり」と呼びます。過去の判断や行動を棚卸しして、改善していくことも大切ですが、それだけでは「昨日の強化」ループに陥る可能性があります。チームで意図していない展開を断つためには、別の視点での認識と判断が必要です。それは、「ユーザー」「チーム」「プロダクト」の3つからチームに起きていることを捉えることです。
なぜ、「ユーザー」「チーム」「プロダクト」の3️つなのでしょうか。チームがプロダクトづくりを通じて実現したいこととは、ユーザーへの価値提供であり、その営みでチーム自身が甲斐を感じられることのはずです。収益が得られているかどうかは、当然見るべきところですが、そこだけを目標として強調した瞬間に「ユーザー」「チーム」「プロダクト」が置き去りになりやすくなります。「収益」と「ユーザー」「チーム」「プロダクト」の3つとの間でのバランスがいびつな(収益に偏りすぎている)ために、目の前の短期的な成果にフォーカスしてしまう。その結果として、意図しない停滞が展開されていくわけです。
では、「ユーザー」「チーム」はよいとして、なぜ「プロダクト」まで含めるのでしょうか。正確に言うと、私たちはユーザーに対して直接的に価値を届けることはできません。届けられるのはあくまでプロダクトです。価値とはプロダクトの利用を通じて、ユーザー自身が得るもの、感じることです。私たちはユーザーが価値を得られるよう、持続的なプロダクト提供を担保する必要があります。ですからプロダクト自体の健全性を置き去りする(分かりやすくいうと技術的負債を後回しにし続ける)のは、ユーザーに対するコミットメントを果たしていないことになります。「プロダクト」も「ユーザー」「チーム」と並列で診る必要があるでしょう。
チームでむきなおりする要点は、「変化を捉えるキャンバス」をもとにこれまであった変化を言語化した上で、ファイブフィンガー(FF)であらためて評価することです。チーム全員で、5点満点で変化に対するそれぞれの意見を出し合います。このときは最小のFF(変化が足りていないという意見)と最大のFF(十分変化しているという意見)を記録し、その差分について要因を探ります。多数決ではなく、異なる見方にフラットに向き合うことが大事です。
こうしたむきなおりを少なくとも3か月に1回は行いましょう。たとえFFが高かったとしても、特段の変化なしが続いているようであれば、状況としては安定ではなく停滞ではないのか。さらなる問いかけを行っていきます。
「変化が足りていない」と評価するならば、「ユーザー」「チーム」「プロダクト」それぞれについて知るための活動を始める必要があります。これが「プロダクト探索」です。