プロダクトマネージャーという役割が浸透した今、シニアにとって厳しい状況に
飯沼氏は、ソフトウェア開発企業で経営企画から新規事業のプロダクトマネージャー(以下、PM)を務めた後、アパレル、飲食、SaaS企業で多様なマネジメント経験を重ね、PMとして15年のキャリアを築いてきた。2024年10月にはウト株式会社を創業し、オペレーションとテクノロジーの両面から世の中をより良い方向へ変えることを目指している。
![ウト株式会社 創業者/CEO 飯沼亜紀(いいぬま・あき)氏](http://d3kqjh0d0ujjwo.cloudfront.net/static/images/article/3231/3231_iinuma.jpg)
今回のセッションのメインテーマは「プロダクトマネージャーのキャリアQUEST(クエスト)」。PMのキャリアはまるでゲームにおけるクエスト(プレイヤーが達成すべき任務やタスク)のようなものだとし、「何を装備するか、どんな経験を積むのか、誰を味方につけるのか、どう成長していくのか、そしてどんな道を進んでいくのか──これらすべてがキャリア形成において重要です」と語り、話を展開した。
最初に取り上げたのは「老害のキャリアアドバイスに注意」という少し刺激的な話題だ。これは自分自身も含めた話だと前置きした上で、今のシニアPMたちは「PMという職業が認知される前からこの仕事をしていた」「自然とその役割を担っていた」「気づけばPMと呼ばれるようになっていた」と語ることが多いと指摘する。その背景には、キャリア形成の変化とともに、PMの役割や求められるスキルも進化している現状がある。
![シニアPMの体験談は若手にはマッチしにくい](http://d3kqjh0d0ujjwo.cloudfront.net/static/images/article/3231/3231_11.png)
飯沼氏は、最近のPMをとりまく環境の変化をいくつか挙げた。まずは、プロダクトマネジメント自体の理解浸透に苦労しなくなったことが挙げられる。PMのキャリアを切り開いてきた人たちの世代は、経営者に対して「これからはプロダクトマネジメントが重要です」と説得し、ようやくチームを作り上げるといった苦労をしてきた。しかし、今では多くの企業でプロダクトマネージャーが当たり前に存在し、CPO(Chief Product Officer)を置く企業も珍しくない状況になっている。同じ傾向はアジャイル開発にも見られる。
これは非常に良い変化だと感じる一方で、シニアPMにとっては厳しい側面もある。特に、自分の経験として「プロダクトマネジメントを導入しました」「アジャイルを取り入れました」といった実績を語る意義が薄れてしまったのだ。採用担当の立場で見ると「そのあとどんな成果を出したのか」が気になるところだ。