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ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

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特集記事

「顧客の声が集まらない」プロダクトマネージャー必見。開発に活かすべき“営業現場の一次情報”活用術

事例・ノウハウ

 私たちエッジコネクションが営業代行の現場で得られたインサイトを活用し、実際に成果を挙げた事例を紹介します。

事例1:ITサービス企業

 まず挙げられるのが、スクリプト改善によるアポ率向上からインサイトが得られたケースです。あるITサービス企業では、営業代行チームが日々の商談から得た顧客の反応を詳細に記録していました。どのトークが興味を引き、どのフレーズで断られるのかをデータとして蓄積した結果、スクリプトを複数パターンに分け、反応が良かったトークに絞り込むことに成功。最終的にはアポ率が従来の1.5倍に向上しました。

 ここで得られたインサイトは単なる営業ノウハウにとどまらず、反応の良かったフレーズは顧客ニーズが高い機能ということで、営業資料上でも強調して押し出したり、導入後のサポートで手厚く説明したりするなど、成約率の向上や顧客満足度向上のきっかけにもなりました。

事例2:BtoB SaaS企業

 次に、新サービス開発への発展につながった事例です。あるBtoB SaaS企業では、営業代行チームが商談時に「現状のサービスで解決できない課題」を体系的に収集しました。例えば「導入時の社内調整が難しい」「利用マニュアルが分かりにくい」といった声が多数寄せられたことを受け、プロダクトマネージャーはオンボーディング支援サービスや操作ガイドの動画コンテンツを新たに企画。結果として顧客満足度が向上し、解約率の低下にも寄与しました。

事例3:製造業向けソフトウェア提供企業

 そしてもう一つの事例が、価格設定の見直しにつながったケースです。ある製造業向けソフトウェアを提供する企業では、営業代行を通じて多くの顧客が「初期費用が高い」という懸念を示していることが判明しました。

 営業現場では「価格が理由で導入を見送った」という情報が繰り返し収集され、プロダクトマネージャーはこれを受けて価格体系を再設計。初期費用を抑え、月額利用料金と付加オプションで課金する料金体系を導入したところ、導入のハードルが下がり、契約件数が短期間で大幅に増加しました。ここでも営業現場の生の声が、プロダクトの収益モデル全体の最適化に直結したのです。

 これらの事例から分かるのは、営業現場の情報は販売活動の副産物ではなく、プロダクト価値を高める資産だということです。重要なのは、現場の声を属人的に扱わず、再現性のある形で収集・分析し、プロダクト開発に橋渡しする仕組みを作ることです。これにより、営業と開発の双方が同じ方向を向き、顧客にとって価値あるサービスづくりが可能になります。

まとめ

 営業現場は、単なる販売チャネルではなく顧客インサイトの宝庫です。商談の中で得られる顧客の課題や要望、意思決定プロセス、反応や断り理由は、プロダクトの改善や新機能の開発に直結する貴重な情報です。しかし、その価値は自然に活かされるわけではなく、営業現場とプロダクトマネージャーが情報を共有し、開発プロセスに反映させる仕組みを整えることが不可欠です。

 本記事で紹介したように、営業現場での反応を営業手法や製品開発など多方面にフィードバックさせた事例は、営業インサイトが持つ可能性を示しています。プロダクトマネージャーが営業現場のデータを積極的に活用すれば、ユーザー視点に立ったプロダクトづくりが実現し、顧客満足度や市場競争力を高めることができます。営業と開発が一体となり、顧客の声を未来のプロダクト価値へと変えていくことが、これからのプロダクトマネージャーに求められる重要な役割です。

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この記事の著者

大村 康雄(株式会社エッジコネクション)(オオムラ ヤスオ)

慶應義塾大学経済学部経済学科卒業後、米系金融機関であるシティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。 2007年、株式会社エッジコネクション創業。営業支援業を軸に、現在は人事・財務課題も対応する「営業・人事・財務課題伴走型支援企業」として展開。 経営危機を乗り越えた経験を生かし、コンサルティング業...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://productzine.jp/article/detail/3729 2025/09/29 11:00

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