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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

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特集記事

「顧客の声が集まらない」プロダクトマネージャー必見。開発に活かすべき“営業現場の一次情報”活用術

 プロダクトマネージャーにとって、顧客理解はプロダクト開発の生命線です。しかし「ユーザーの声が集まらない」「営業部門の情報が開発まで届かない」という課題は尽きません。その解決の鍵は、最も顧客に近い「営業の最前線」にあります。商談で得られる顧客の課題や断り文句は、まさにプロダクト改善に直結するヒントの宝庫。本記事では、営業現場に眠るインサイトを開発に活かすための「仕組み」の作り方を、具体的な成功事例を交えて解説します。営業と開発の壁を越え、顧客の声をプロダクト価値に変える実践的ノウハウです。(編集部)

はじめに

 プロダクトマネージャーにとって、顧客の声や行動から得られるインサイトは、プロダクト改善や新規機能の企画に欠かせない情報源です。しかし実際には、その収集や整理は容易ではありません。ユーザーインタビューを企画しても十分な数の声を集められなかったり、営業部門やサポート部門が持つ情報が開発サイドと分断され、せっかくの顧客データが活用されないまま埋もれてしまったりすることも少なくありません。

 一方、私たち(エッジコネクション)が日々運営している営業代行・営業支援の現場は、まさに「顧客インサイトの宝庫」といえます。商談やアプローチの中で顧客が語る課題や要望、提案に対する反応や断り理由は、プロダクト開発に直結する生の情報です。営業活動は単なる販売の場ではなく、顧客の本音が最も集まる接点であり、プロダクトマネージャーにとって貴重なデータ源となり得ます

 本記事では、営業現場で蓄積されるインサイトの種類や活用法、実際の事例を交えながら、プロダクトマネージャーが営業現場と連携してプロダクト価値を高めるためのヒントを解説します。

営業現場で得られる主なインサイト

 営業現場は、単にアポイントや商談を獲得するだけの場所ではありません。そこには、プロダクト開発やサービス改善に直結する生の顧客情報が蓄積されています。まず得られるのは、顧客が抱えている課題やニーズです。商談やヒアリングの中で顧客が何に困っており、どのような解決策を求めているのかは、プロダクトの方向性を定めるうえで貴重な手がかりになります。

 次に重要なのが、決裁フローや購買プロセスに関する情報です。BtoBビジネスでは、最終的な決裁者や承認プロセスを把握することが、受注の確度を高める鍵になります。営業現場では、初回接触から提案、検討、決裁に至るまでのステップを詳細に追いかけるため、プロダクトマネージャーは顧客企業内の意思決定構造を理解しやすくなります。これにより、プロダクト導入時の障壁や導入までのリードタイムを事前に把握でき、より現実的な改善策や機能追加の検討が可能になります。

 さらに、商談の中で得られる顧客の反応や断り理由も見逃せません。例えば、提案内容に対して興味を示した部分や懸念点、導入を見送った理由などは、プロダクトの弱点や改善余地を浮き彫りにします。価格面の抵抗が強いのか、機能面での不足があるのか、それとも社内の承認プロセスに課題があるのか──こうした情報を体系的に整理すれば、プロダクト開発だけでなく、営業戦略そのものの改善にもつながります。

 このように営業現場は、顧客の“声”を多面的に収集できる場です。プロダクトマネージャーがこの情報を積極的に活用すれば、顧客理解が深まり、より市場にフィットしたプロダクトづくりが実現できます。

インサイトを活用する方法

 営業現場で得られるインサイトをプロダクトに活かすには、単なる情報収集で終わらせず、開発・企画の具体的なアクションに接続する仕組みが重要です。まず活用できるのは、プロダクト改善へのフィードバックです。例えば、商談中に顧客が繰り返し指摘する不便さや要望は、UI/UXの改善ポイントを示唆しています。営業現場の生の声を定期的に集約し、プロダクトマネージャーと共有することで、ユーザー視点に立った優先度の高い改善が可能になります。

 次に、新規機能や新サービスの着想にもインサイトは有効です。顧客が抱える課題の中には、既存機能では解決できない領域が見つかることがあります。これを拾い上げれば、新しい価値提案や追加サービスの開発アイデアにつながります。例えば、導入前の検討段階で多くの顧客が同じ情報を求めているなら、FAQ機能や導入サポートの仕組みを整えるといった対応が考えられます。

 さらに、営業現場とプロダクトマネージャーの情報共有体制を設計することも欠かせません。営業担当者が商談のたびに得る情報をSFAやCRMに入力するだけでは不十分です。プロダクトマネージャーが定期的に営業会議に参加したり、情報の種類に応じてタグ付けして分析できる仕組みを設けたりすることで、営業と開発の連携がスムーズになります。このプロセスを通じて、インサイトは単なる現場の記録から、戦略的な意思決定の材料へと変わっていきます。

 営業現場は「顧客理解の最前線」です。そこで得られる情報を開発・企画の言語に翻訳する仕組みを整えることで、プロダクトの価値は飛躍的に高まります。

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この記事の著者

大村 康雄(株式会社エッジコネクション)(オオムラ ヤスオ)

慶應義塾大学経済学部経済学科卒業後、米系金融機関であるシティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。 2007年、株式会社エッジコネクション創業。営業支援業を軸に、現在は人事・財務課題も対応する「営業・人事・財務課題伴走型支援企業」として展開。 経営危機を乗り越えた経験を生かし、コンサルティング業...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://productzine.jp/article/detail/3729 2025/09/29 11:00

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