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Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

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イベントレポート

「分析」はAIに任せ、PMは「意思決定」へ回帰せよ──Pendo CEOが語る、AI+SaaS時代のプロダクト開発


 11月19日、プロダクト体験管理(SXM)プラットフォームを提供する米Pendo.ioの日本法人、Pendo.io Japan株式会社(以下、Pendoジャパン)は、都内で記者説明会を開催した。来日した創業者兼CEOのトッド・オルソン氏は、「AI+SaaS」時代におけるプロダクトマネージャー(PM)の役割の変化について言及。対話型AIで分析業務を自動化する新機能「Agent Mode」などを発表した。また、Pendoジャパンのカントリーマネージャーの花尾和成氏は、アジャイル開発支援のBekind Labsとの提携を発表。本記事では、AIがもたらすプロダクトマネージャー業務の未来と、日本企業の内製化を支援するエコシステム戦略についてレポートする。

AIは「新入社員」。コンテキストを与えてこそ戦力になる

 説明会の冒頭、オルソン氏は現在の市場環境について「SaaSの時代から、AI+SaaSの時代へと移行している」と表現した。しかし、それはAIが既存のソフトウェアを完全に置き換えることを意味しない。「AIはあくまで、私たちが築き上げてきたテクノロジーに追加して活用するものであり、拡張するものだ」とオルソン氏は語る。

Pendo.io, Inc. 創業者兼CEO トッド・オルソン氏
Pendo.io, Inc. 創業者兼CEO トッド・オルソン氏

 その上で、AI活用の鍵となるのが「コンテキスト(文脈)」だ。オルソン氏はAIを「新入社員」に例えてこう説明する。

 「もし、入社したての若手社員に一切の背景情報を与えず、データも渡さずに仕事をさせたらどうなるか。それなりの成果しか出ないでしょう。AIも同じです。AIの質を決定づけるのは、どれだけ良質なコンテキストとデータを与えられるかにあります」

 Pendo(ペンド)はこれまで、あらゆるソフトウェアの「利用データ」や「ユーザーの感情(NPSなど)」を蓄積してきた。この膨大なコンテキストをAIに与えることで、プロダクトマネージャーの意思決定を強力に支援しようというのが、今回のアップデートの核心だ。

「分析」はAIエージェントの仕事になる──新機能「Agent Mode」

 今回発表された目玉機能が「Agent Mode(エージェントモード)」だ。これは、プロダクトマネージャーが日常的に行っているデータ抽出や分析業務を、AIとのチャット(対話)だけで完結させる機能である。

チャット形式でデータ抽出やアクションを行える「Agent Mode」の画面
チャット形式でデータ抽出やアクションを行える「Agent Mode」の画面

 従来、プロダクトマネージャーが「特定の機能を使っているユーザーにインタビューしたい」と考えた場合、SQLを記述してデータを抽出したり、CSVをエクスポートしてリストを作成したりといった「作業」に多くの時間を奪われていた。

 Agent Modeを使えば、自然言語で「ダッシュボード機能を使っているユーザーは誰?」と問いかけるだけで済む。デモンストレーションでは、「フォーキャスト(予測)機能についてフィードバックをくれた管理者」という条件を対話形式で指定し、該当する105名のユーザーを一瞬で特定する様子が披露された。

 さらに、特定したユーザーへのインタビュー依頼メールの作成や、カレンダー調整までもAIが代行する。オルソン氏は、「これまで3週間かかっていたディスカバリー(探索)プロセスが数分で終わる」と胸を張る。

 これにより、プロダクトマネージャーは「ツールを操作する時間」から解放され、「ユーザーと対話し、真の課題を特定する」という本来の業務に集中できるようになる。

「AI機能」のROIをどう測るか──「Agent Analytics」

 もう一つの大きな発表が「Agent Analytics」だ。これは、企業が自社プロダクトに組み込んだAIエージェント(チャットボットなど)の利用状況を分析する機能である。

AIエージェントの利用状況や品質を可視化する「Agent Analytics」
AIエージェントの利用状況や品質を可視化する「Agent Analytics」

 昨今、多くのSaaSがAI機能を搭載し始めているが、「ユーザーがAIとどのような会話をしているのか」「AIの回答によってユーザーの課題は解決したのか」を正確に把握できている企業は多くない。

 Agent Analyticsでは、AIエージェントとの対話ログはもちろん、「AIが答えられなかった質問(Could generally answer)」「ユーザーが不満を感じたポイント(フラストレーション)」を可視化できる。

 オルソン氏は、「これからのインターフェースは、クリックやスワイプといった従来の操作(GUI)と、プロンプトによる会話(CUI)が共存する『ハイブリッド』な世界になる」と予測する。このハイブリッドな体験全体を可視化・分析できるプラットフォームこそが、これからのプロダクトマネージャーには不可欠になるというわけだ。

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「データ」×「アジャイル」で日本企業の内製化を支援

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。 1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテック...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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