「SaaSは死んだ」論争と、生き残るプラットフォームの条件
近年、テック業界の一部で囁かれている「SaaS is dead(SaaSは死んだ)」という議論について、ニューマン氏は明確な見解を示した。「もしあなたがSaaS企業で、プラットフォームがユーザーのために行っていた作業をこなせるエージェントに投資していないのであれば、おそらく死んでいるでしょう」。
しかし、それはSaaSの終焉ではなく「エージェントファースト・プラットフォーム」への進化を意味する。Amplitudeが目指すのは、汎用的になんでもこなすエージェント(Claudeなど)に対抗することではなく、「プロダクトの行動データ」という特定のドメインにおいて世界最高峰の専門知識を持つエージェントを提供することだ。企業は今後、営業支援会社からはCRMに特化したエージェントを、Amplitudeからは行動データに特化したエージェントを購入し、それらをMCP(Model Context Protocol)などの技術で連携させてエコシステムを構築していくことになる。
ニューマン氏は、同社のCEOであるSpenser Skates氏のユニークな比喩を紹介した。
「ソフトウェアは寿司のようなものです。AIの登場で、コンビニのどこにでも寿司があるように、手軽な分析ソリューションは増えるでしょう。それは市場全体の欲求を高める意味で良いことです。しかし、最高級レストランの高級寿司の売上には影響しません。ハイエンドな市場では、常に最高の中の最高を求めるバイヤーが存在するのです」
プロダクトマネージャーに求められる「初心」と、不変のミッション
エージェントが平均的な人間の数百倍の頻度でデータにアクセスし、インサイトを提示する時代。プロダクトマネージャーの役割は、自ら泥臭くデータを掘り下げることから、AIが生成したインサイトをレビューし、最良のものを選択して「アクション(機能開発やフロー改善)に移すこと」へとシフトしていく。
この激動の時代において、プロダクトマネージャーに必要なマインドセットとは何か。ニューマン氏は「初心(Beginner's mind)を持つこと」を挙げる。プロンプトエンジニアリングなどの新しいスキルを学ぶ情熱を持ち、最初からすべてを完璧に把握していなくてもよいという事実を受け入れる。先入観を捨てて常に新しく学ぶ姿勢こそが、これからのプロダクトマネージャーにとって強力な武器となる。
そして最後に、ニューマン氏はプロダクトマネジメントにおける普遍的な原則を強調した。
「『今はAIがクールだからAIエージェントを作ろう』というアイデアをよく見かけますが、それでは現実の問題に根ざしていません。私たちAmplitudeも、『ユーザーがチャートを作るのに苦労している』という単純なフリクション(摩擦)の観察からスタートしました。実際のユーザー課題から出発し、その解決策としてAIを適用する。これが最も実践的であり、いつの時代も変わらないプロダクトマネージャーの真髄です」
ユーザーのペインに寄り添い、本質的な課題解決に向き合う。AIという強力な相棒を得た今、プロダクトマネージャーの真価が改めて問われている。

