メルカリ:AIネイティブ開発を支えるデザインシステム
メルカリからは、VP of Product Engineering Marketplaceの成田元輝氏と、デザインシステムチームのデザインリードであるAbdullah Alkhatib(Aki)氏が登壇しました。

メルカリはAIネイティブカンパニーへの組織変革に取り組んでおり、プロンプトからデザイン生成、検証、コード変換までをプロダクション開発で使えるレベルに高めることを目指しています。各種ツールを検証した結果、一貫性・再現性の課題を踏まえ、Figmaのエコシステムを軸に据える判断をしたことが紹介されました。現在は新しいデザインシステムであるDesign System 4への刷新を進め、実案件での運用を開始しているとのことです。
後半のAki氏のセッションでは、AI時代におけるデザインシステムの意義が語られました。
これまでプロダクト開発で最大のボトルネックだったのは「作ること」でした。UIを作れるのはデザイナーだけ、プロダクトにできるのはエンジニアだけという状況でしたが、AIの登場によって、作ること自体は簡単になりました。一方で、今むしろ難しくなっているのは「揃える」ことだとAki氏は指摘します。共通のルールがないままで自由に作り始めると、プロダクトの品質はバラバラになってしまいます。だからこそ、今あらためてデザインシステムが重要なのだ、とAki氏は強調しました。

「AIはスタート地点ではない。AIは今ある仕組みをそのまま強くする。ルールが弱ければ問題は広がってしまうが、明確なルールをシステムの中に入れていれば、AIが良い進め方をしてくれる。だから、しっかりとした土台となるデザインシステムが必要」という言葉が印象的でした。
アクセンチュア/ゆめみ:Figma Makeで探索を前進させる
最後のセッションでは、アクセンチュアの中園晴貴氏と、ゆめみの近藤由枝氏が登壇しました。アクセンチュアでは明治安田とともにデザインシステムの構築に取り組んでおり、その成果は2024年度グッドデザイン賞を受賞しています。

このセッションでは、Figma Makeをプロトタイピングにどう活用するかという実践的な内容が紹介されました。興味深かったのは、同じプロンプトを異なるAIモデルに投入した比較です。Geminiは抽象度の高いプロンプトに対して素早くアウトプットを返す一方、Claude Opusはロジックを深く考える傾向があるなど、用途に応じたモデル選択の知見が語られました。
また、制作したプロトタイプの評価軸として、見た目の良さではなく「論点が出るか、議論が進むか」を重視するという考え方が示されたのも印象的でした。プロダクトの完成度よりも、そのプロジェクトの意思決定を前に進めることに価値を見出す姿勢は、特にビジネス部門との協業において実践的な指針となるでしょう。
Figma Makeの副次的な効果として、ジュニアデザイナーの育成教材になりうるという指摘もありました。Figma Makeでは「どう手を動かすか」ではなく「どう考えるか」を言語化して指示する必要があるため、デザインを考えるためのトレーニングとして有効だということです。明治安田社内でもMakeの研修が行われ、よい感触を得ているとのことでした。
おわりに
三菱電機、メルカリ、アクセンチュア/ゆめみという異なる規模・業種の企業が、それぞれの文脈でデザインシステムとAIの活用に取り組んでいる事例を通して、デザインシステムの意義と可能性についてあらためて考える機会となりました。
イベントの様子はYouTubeで公開されていますので、ぜひご覧ください。
