SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

デブサミ2026の初日をProductZineとコラボで開催。

Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

イベントレポート

人件費か、AI利用料か? 投資家の評価軸が変わる「AIエージェント時代」に、PMが描くべきUXと事業モデル

 4月6日、Helpfeelとカラクリによる共同勉強会が開催された。生成AIの進化により、従来のソフトウェアの価値が根本から揺らぎつつある今、プロダクトマネージャーはどのような戦略を描くべきなのか。本記事では、シリコンバレーで目の当たりにした「SaaS is dead」のリアルと、国産の特化型AIの生存戦略から、AIエージェント時代における勝者の条件に迫る。

「SaaS is dead」の衝撃と、AI Nativeへのパラダイムシフト

 Helpfeelは、AI検索型FAQ「Helpfeel(ヘルプフィール)」をはじめとするAIナレッジデータプラットフォームを提供する企業だ。同社代表取締役 CEOの洛西一周氏は北米拠点の基盤構築のため、2026年1月から3月までシリコンバレーに滞在し、現地の投資家やGAFAMの従業員と議論を交わしてきた。

株式会社Helpfeel 代表取締役 CEO 洛西一周氏
株式会社Helpfeel 代表取締役 CEO 洛西一周氏

 「SaaS is dead」、あるいは「アンソロピック・ショック」。現在、シリコンバレーを席巻しているのは、既存のSaaS企業の株価低迷と、それに相反するAIスタートアップ投資の熱狂だ。洛西氏は「AIの進化によって、これまでのソフトウェアが簡単に作れるようになってしまったことが引き金だ」と指摘する。

 この市場環境において、企業は大きく「従来のSaaS」「AI搭載SaaS」「AI Native SaaS」「AIモデル企業」の4つに分類されるという。

AI新興企業における4つの分類
AI新興企業における4つの分類

 ここでプロダクトマネージャーが注目すべきは、既存プロダクトにAI機能を部分的に組み込んだ「AI搭載SaaS」と、最初からAIをコアに構築された「AI Native SaaS」の違いだ。従来のSaaSが1ユーザーあたりの「シート課金」を前提としていたのに対し、AI Native SaaSはAI自体がエージェントとして自律的に業務を遂行するため、課金モデルの根本的な見直しが求められている

投資家が注視する「AIトークン比率」と事業モデルの転換

 シリコンバレーの投資家たちが、AIスタートアップを評価する際に用いる新しい基準がある。洛西氏が現地で最も衝撃を受けたという問いが、「AI利用料金(トークン)にどれくらい払っている? 人件費と比べてどう?」というものだ。

投資家が注視する人件費とAI利用料金の比率
投資家が注視する人件費とAI利用料金の比率

 従来のSaaS企業における原価はサーバー費や人件費だったが、AI Native SaaS企業では「人件費の代わりに、AIがどれくらい働いているか」が直接的に問われている。この比率が高いほど、AI化が進んだ企業として市場から評価される構造へと変化しているのだ。

 これに伴い、顧客への提供価値も劇的に変化している。洛西氏は、「ソフトウェアを利用して顧客が実務を行う」という従来のモデルから、「AIが実務を行い、その成果に対して顧客が対価を支払う」サービス事業への転換が起きていると説明する。ソフトウェア事業者がAI化してサービス事業者に転換することで、TAM(獲得可能な最大市場規模)は飛躍的に拡大すると洛西氏は強調する。

顧客への提供価値の変化
顧客への提供価値の変化

 プロダクトマネージャーはもはや、「ユーザーが使いやすいツール」を作るだけでなく、「AIが自律稼働して成果を出すエージェント」を設計し、それに見合った事業モデルを構築しなければならない。

国産のAIモデルの生存戦略と「現場力」の価値

 こうしたグローバルなパラダイムシフトの中で、日本のAI企業はどのように戦うべきか。カスタマーサポート特化型のAI SaaSを展開し、独自のAIモデル開発も手がけるカラクリ。同社取締役CPOの中山智文氏は、経済産業省の生成AI開発支援プログラム「GENIAC(ジーニアック)」を通じた国産のリアルについて語った。

カラクリ株式会社 取締役CPO 中山智文氏
カラクリ株式会社 取締役CPO 中山智文氏

 QwenやDeepSeekなど、高性能なオープンモデルが無料で使える中、わざわざ国産で作る意味はあるのかという批判もSNS上にはある。しかし、経済安全保障の観点や、防衛・金融・医療といった「自前であること自体が価値」となる領域に加え、汎用LLMでは要件を満たしにくいバーティカル(業界特化)領域では、独自モデルが強力な競争力を持つ。実際、海外でもカスタマーサポートに特化したDecagonや、自動運転に特化したWayveなどが巨額の資金調達を行い、ユニコーン企業へと成長している。

国産AIモデルが活躍できる3領域
国産AIモデルが活躍できる3領域

 ここで日本の独自の勝ち筋となるのが、トヨタ式「カイゼン」に代表される「現場力」だ。中山氏は、「巨大汎用モデルが一部の天才たちによって作られるのに対し、特化型モデルは現場の力によって磨き上げられる」と述べる。カスタマーサポートにおける敬語のささいな使い方や、法規制を守るための絶妙な言い回しなど、現場で積み上げられた質の高いデータと特化型AIを組み合わせることで、国際的にも競争力のあるプロダクトを生み出せるという。

次のページ
現場を自走させるAIのUI/UXとコンテキストエンジニアリング

この記事は参考になりましたか?

イベントレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。 1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテック...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

ProductZine(プロダクトジン)
https://productzine.jp/article/detail/4258 2026/04/28 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング