Amplitudeは、国別・業界別のデジタルプロダクトの利用状況を示す「2022年 プロダクトレポート」を11月22日に発表した。
レポートでは同社のユーザー行動分析プラットフォーム「Amplitude」を利用する1900社以上の顧客と月間1兆件のデータポイントに基づいて、アプリとWebサイトにおけるMAU(Monthly Active User:月間アクティブユーザー)の推移に着目し、国別・業界別でユーザー行動のトレンドを分析している。
国別では、日本、米国、英国、フランス、ドイツ、インド、シンガポール、オーストラリアの8カ国を比較し、業界別ではEコマース、メディア・エンターテインメント、B2B、コンシューマーテック、フィンテックなどの12業界を取り上げている。
また、同レポートではプロダクト担当者にアンケート調査を実施し、現在の世界情勢を踏まえた企業の懸念や今後のプロダクト戦略について調査結果を公開している。
- 世界・日本におけるプロダクト利用の推移
世界全体でみると、2021年8月から2022年8月の間、1日あたりのデジタルプロダクトの利用時間は世界全体で16ポイント上昇した。日本国内でも同期間でデジタルプロダクトの利用は23.9ポイント上昇し、1年間を通して右肩上がりで堅調に推移した。
その理由として、コロナ禍の影響でユーザー行動が変化する中、企業がDXを通じて顧客体験のデジタル化を推進し、自社アプリやウェブサービスなどのデジタルプロダクトへの投資・開発を加速させていることが挙げられる。
消費行動のデジタル化は2020年初頭に始まったコロナ禍を分岐点に現在まで継続的に進んでおり、これに伴いプロダクトの利用は2021年後半以降も順調な上昇の傾向を見せた。こうした状況は、「デジタルプロダクト利用の増加」から「デジタルプロダクト利用の定着」へ市場全体の段階が移行しつつあることを示唆しており、日本企業はデジタル時代の新たな局面を迎えている。
- プロダクト担当者へのアンケート調査結果
プロダクトにおけるユーザー利用が高まる一方で、「Amplitude」が企業のプロダクト担当者約200人を対象に実施したアンケート調査では58%が「ユーザーの離脱を懸念している」と回答したほか、63%が「自社のプロダクト戦略が不充分である」と回答した。
また、プロダクトの運用において最も重視する項目を聴取したところ、「カスタマー・リテンション(顧客維持)」が43%で最多となり、次いで「エンゲージメント」(37%)、「プロダクト・レッド・グロース(プロダクトを主軸とした事業の成長)」(37%)が選ばれた。これらの結果から、企業はデジタルプロダクトでの顧客維持を重視しており、それに向けた戦略の拡充を喫緊の課題として認識していることがわかった。
その理由としては、昨今の不透明な経済状況により店舗の運営などデジタル以外の事業計画が立てにくくなっていることやデジタルプロダクト間の競争が徐々に激化していることが考えられる。
業界別のプロダクトの成長については以下のように分析している。
- 人事サービス
調査対象となった12の業界の中で、人事・人材派遣およびスキルアップ・リカレント教育ツールが最大の成長率を記録した。
これらのサービスは2022年1月には2021年8月の数字と比較して41.9ポイント増加し、その後も上昇を続け、2022年8月には118ポイント増に達した。「大退職時代」に離職した人々が、景気後退の影響で新たな機会を求め始めたりスキルを向上したりしていると考えられる。
同時に企業側もこれらのデジタルプロダクトを利用し、従業員の採用やトレーニングに活用している様子がうかがえる。
- ECサービス
前年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年1月から2021年8月にかけてECサービスは55.9ポイント上昇した。前年度と比較した場合、本年度は成長が鈍化しているように見えるが、前年度の成長のほとんどが2020年2月から4月の間に起こっているため全体の期間を通してECサービスは継続的に上昇していることがわかる。
本年度は2021年秋に向けて順調に成長し、8月から11月にかけて23ポイントの上昇となった。11月にピークを迎えた背景には、ブラックフライデーやサイバーマンデーなどの購入促進イベントなどが挙げられる。
その後、2022年3月から5月にかけてプロダクト利用が上昇したものの、夏には停滞し、2021年8月には前年比で13.3ポイントの上昇となった。これは、世界的な物価の上昇や景気後退への消費者の懸念が影響している結果と言える。
- メディア・エンターテインメント
動画・音楽配信サービスなどを含むメディア・エンターテインメントサービスを調査したところ、これらのサービスは本年度に急成長したことがわかった。特に2022年6月には、2021年8月の数値を17.7ポイント上回っている。
メディア・エンターテインメントサービスは、前年度に引き続き成長が続いた。世界的に新型コロナウイルスのワクチンが普及し外出自粛への考え方も変化してきたが、なお多くの人が動画・音楽配信サービスなどの視聴を楽しみ続けていると言える。
同レポートが焦点を当てた30のプロダクトのうち、ソーシャルショッピングアプリ「onthelook」、マッチングアプリ「Paired」、AIスケジュール管理アプリ「Motion」、ダイエットアプリ「Found」が月間アクティブユーザー数500ポイント以上の増加を記録し、躍進を遂げた。
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ProductZine編集部(プロダクトジンヘンシュウブ)
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