はじめに
ファインディが主催するプロダクトマネージャー向けコミュニティ「PM Hub」で、LT(ライトニングトーク)イベント「PM LT Night」が2024年11月22日に開催された。今回のテーマは「Go-to-Market戦略推進のためのPMとPMM の連携」(※1)。各社から登壇したスピーカーが、プロダクトの価値を顧客に届けるために実践している工夫や失敗からの学びを、リアルな事例を交えて紹介した。
(※1)本記事では、PMはプロダクトマネージャー、PMMはプロダクトマーケティングマネージャーを指します。
LT1:「不確実性を武器に変える」──PMMの枠を超えて、価値創出に向き合う
- 発表者:株式会社タイミー 佐藤瞭氏
最初に登壇したのは、スキマバイトサービス「タイミー」でPMMを務める佐藤瞭氏です。佐藤氏は、エンジニアから事業責任者まで多様な職種を経験した後、2023年よりタイミーに参画し、スポットワークシステム領域のプロダクトマーケティングを担当しています。
自律型チームを支える「バリューストリーム」中心の組織づくり
タイミーの開発組織は、従来の職能ベースではなく、「バリューストリーム=顧客価値の流れ」にひもづいて編成されています。例えば「マッチング」「スポットワーク」といったビジネスドメインごとにチームが構成され、それぞれがフロントエンドからインフラレイヤーまでフルサイクルでの開発・運用を担います。
「スクラムガイドの考え方をベースにしつつも、各チームが仮説に応じて最適なプロセスを自ら設計しています」と語る佐藤氏の発表は、目的に応じたプラクティスの選定、専任スクラムマスターの導入など、アジャイルの思想を踏襲しながらも実践的な工夫が随所に光りました。

PMMは「Go-To-Marketの実行者」ではない──プロダクト並走型の戦略推進
PMMの役割として佐藤氏が強調したのが、「Issue探索」と「Go-To-Market(以下、GTM)」という2つの軸でした。前者は市場・顧客・競合を定量・定性の両面で分析し、本質的な課題や価値の仮説を立てることです。後者は、開発された機能の価値をターゲット顧客に適切に届け、受け入れられる状態をつくることにあたります。
しかし、このプロセスを、PMMが「単独で完結させる」ものとは捉えていません。
Issue探索もGTMも、プロダクトチームやビジネスサイドのメンバーと「並走」して進めるものです。早期から巻き込むことで、課題認識や仮説の精度がぐっと高まります。そして、特に重要なのが「自分の目で見る」こと。以前は分業体制によって、課題に関する情報が伝言ゲームのように断片的に伝わることが多く、納得度や行動への結びつきが弱かったといいます。
「ユーザーの声を直接聞き、現場のオペレーションに立ち会うことで、課題に対する『解像度』が飛躍的に上がる。チーム全体の認識がそろうことで、ソリューションの質も変わる」と語りました。

「銀の弾丸」はない──複合的なアプローチが価値を生む
多くのユーザー課題は単純ではなく、技術的・ビジネス的・運用的な複雑性が絡み合っています。佐藤氏は「一つのIssueに対して、一つの正解があることの方がまれ」と言及し、複数の仮説や施策を組み合わせる重要性を指摘しました。
これは、チーム全体での共通認識の形成と、段階的なアプローチ(フェーズ分け)が鍵となります。優先度やロードマップの設計には、PdMとPMMが連携し、互いの視点を補完し合うことが欠かせません。
総括
佐藤氏のLTは、PMMの職能を超えて「チームで課題に向き合う」文化の大切さを改めて気づかせてくれる内容でした。
- 不確実性の高い領域だからこそ、他職能との連携による「解像度の獲得」が重要
- チーム内で課題に対する共通認識を持てば、「+α」のある機能設計が可能になる
まさに、「オーバーラップしていこう」というメッセージのとおり、越境的な協働がプロダクト価値を高める鍵となっています。