18年のリサーチャー経験、年間300人のインタビューから学んだことを届けたい
本題の前に、私自身の自己紹介をさせてください。大手通信会社のリサーチ部門に8年勤務した後、2013年にリサーチ&コンサルティング会社「ユニークルーパー」を設立。IT業界のみならず、不動産、運輸、医薬など、さまざまな業種のリサーチプロジェクトを、プロマネとして支援してきました。デスクリサーチ、アンケート、インタビューの主要リサーチは、課題の整理から意思決定まで、もちろん実調査を含めて一気通貫でできることを強みとしています。コロナ禍以降はオンラインインタビューの依頼が大幅に増え、ビジネス有識者から中高生まで、年間300人以上にインタビューしています。これまでの経験から習得した「リサーチのコツ」を1人でも多くの人に、分かりやすくお届けしたいと思っています。
プロダクト開発では「PMF」を目指す
それでは本題です。ProductZineの読者のみなさんにはおなじみだと思いますが、プロダクト開発には4つのフェーズがあると言われています(図1参照)。そして、4つのうち最も重要なのは4番目の「PMF(プロダクトマーケットフィット)」です。PMFとは、顧客が満足できるプロダクトを提供している状態で、かつ適切な市場(多くの潜在顧客がいる市場)に受け入れられていることを指します。簡単に言えば、「ヒットの兆しが見えている状態」 ともいえるでしょうか。スタートアップの起業家だけでなく、新たにプロダクトを開発する人は、このPMFを目指している方が多いと思います。
PMFまでの3フェーズでやるべきリサーチは決まっている
フィットジャーニーでPMFに達するまでには、「フェーズ1:CPF(カスタマープロブレムフィット)」「フェーズ2:PSF(プロブレムソリューションフィット)」「フェーズ3:SPF(ソリューションプロダクトフィット)」という3つのフェーズがあります。リサーチャーの立場から言えば、この3つのフェーズで取り組むべきリサーチの目的やテーマは、ほぼ決まっています。
フェーズ1:CPFでのリサーチ【想定顧客のニーズ理解】
- 想定した顧客はどんな人か。その人はどんな悩み・ニーズを抱えているか
- その悩み・ニーズは、お金を払っても解決したいほど深刻か
フェーズ2:PSFでのリサーチ【ソリューションの探索】
- どうすれば顧客の悩み・ニーズを満たせるか
- 考え出した解決策(ソリューション)は、顧客の悩み・ニーズを本当に解決できているか
フェーズ3:SPFでのリサーチ【プロダクト自体の評価】
- 前段で探索したソリューションをプロダクトとして実現できているか
- そのプロダクトは、お金を払ってでも欲しいくらい有益/魅力的か
このように、目的が決まっていても、仮説もコンセプトもない状態でリサーチをすることはできません。それでは、リサーチを効果的に行うにはどのようなプロセスを踏むのがよいのでしょうか。プロダクト開発における主要なプロセスとリサーチの関係性を図示すると、以下のようになります。この記事では、赤丸の数字の部分を連載形式で解説していきます。