AI施策の積み上げによって実現できた、さらなる施策
高橋:その後、どのような施策を実施されたのでしょうか?
熊谷:次に実施したのは買い手企業さま向けの施策で、「AIおすすめ機能」というものになります。
先ほど紹介した施策で売り手企業さまの売却案件情報を充実できるようになったわけですが、この情報を用いて、今回の施策で買い手企業さまのニーズとよりマッチするものは何なのかをAIで判断できるようにしました。
高橋:買い手企業側はどのような情報を登録されているのでしょうか。
熊谷:買い手企業さまには、M&Aで譲受したいと考えている会社の業態や会社規模、売上などの情報を入力していただいています。これらを独自のレコメンドロジックでスコア化し、マッチ度が高いものを表示できるようにしています。先ほどの施策で売り手企業さま側の情報が充実したからこそ、できるようになった施策です。
高橋:結果としてはいかがでしたか。
熊谷:リリース以降、マッチング精度(売り手企業に打診をしたときの承諾率)は約4倍に向上しました。さらにスカウト件数は120%に増加しています。今までは業種同士で組み合わせるような単純なマッチング方法だけだったのですが、より複雑なロジックでスコアを作ることができたので、M&Aクラウドのサイトやメールマガジンで、買い手企業さまがより興味を持てる売却案件を表示できるようになりました。
高橋:売り手企業さまの初期情報も元々は一部空欄のものもあったが、先ほどの施策で売却案件の自動入力をアシストできるようになったおかげで、買い手企業さまにとってのマッチングロジックを補完できる機能を作ることができたと。
この施策におけるマッチングロジックって、業種や会社規模といったある種固定化できたり、定量的に算出できたりする部分をパラメータにしているものが多いのかなと思うのですが、もっと定性的なニーズからマッチングを起こすことってできたりするのでしょうか?
例えば、買い手企業さまのニーズとして、秘めた可能性を持つ会社さんを探しているとか、若手で熱意あるベンチャー企業を探している、とか(笑)。つまり自然言語的に探索したくなるようなニーズがあるのかどうか。
荒井:現状こうしたニーズはプラットフォームアドバイザー(※1)が対応している領域になります。どこまで本当なのかは有効性を検証すべきところではありますが、例えば同じ出身地だと、うまく話がまとまるケースがあったり(笑)、こうした主観情報をどう取り入れられるのかはまだこれからですが、興味深い要素だなとは思っていますね。
(※1) プラットフォームアドバイザー:「M&Aクラウド」のプラットフォームで、企業同士のマッチングから書類準備のサポート、面談におけるファシリテーション、M&Aに関する質問対応などに対応するM&Aクラウド独自の活動支援チーム
高橋:3つ目にどのような施策を実施されたのでしょうか。
熊谷:先ほどの買い手企業さま向け「AIおすすめ機能」と近いものを、今度は売り手企業さま向けにもリリースしました。
M&Aクラウド上では、売り手企業さまは基本的にプラットフォームアドバイザーと会話しながら案件を進めていくのですが、売り手企業さまによってはプラットフォームアドバイザーの助けなしにセルフサーブで案件を進めていかれる方もいらっしゃいます。そういった方々に対して、必要な情報をきちんと提供していきたい、という思いでリリースしました。
高橋:こちらは買い手企業さま向けの「AIおすすめ機能」のマッチングロジックと同じものなのでしょうか。
熊谷:おおむね近いものを活用しています。売り手企業さまに、興味をもってもらえる可能性が高い買い手企業ですよ、という意図でレコメンドしています。元々こうしたおすすめ情報は表示していたのですが、これまでの施策の積み上げによってより精度高く表示できるようになりました。