開発チームの在り方を変える「ティール型組織」がもたらす価値
組織を変革すべきタイミングは、「ユーザーに価値を届けるための最適な環境が整っていない」と気づいた瞬間だと思います。先述した背景から、jinjerでは、ヒエラルキー型から「ティール型組織」への移行を決断しました。この選択は、プロダクト開発におけるスピードと柔軟性を大幅に向上させるためのものでした。
ティール型組織とは、意思決定などの重要な権限をマネージャーから各メンバーへ委譲することで、各メンバーの能動的な言動を促し、組織内のコミュニケーションを円滑にすることを狙う組織の在り方を言います。
ティール型組織の最大の特徴は、意思決定の権限を上層部からチームメンバーに委譲し、個々の主体性を引き出す点にあります。また当社は、ティール型組織の特徴を活かしながらも、業務の回し方をPDCAループではなく、OODA(ウーダ)ループを軸に行うことで、「より自走できる組織環境づくり」を進めていきました。
組織体制と業務遂行方法を同時に変革することによって、現場レベルでの迅速な対応が可能になり、コミュニケーションの円滑化やチーム全体のエンゲージメント向上が実現します。これにより、市場の変化に即応し、競争力を維持するための強固な基盤を築きました。
ティール型組織への移行における具体的施策
柔軟で自律的なティール型組織への移行にあたり、以下のような取り組みを実施しました。
1.ヒエラルキー型組織になってしまう課題の分析と特定
まず、組織がヒエラルキー型に陥る原因を深掘りしました。例えば、権限の集中が起きる原因や上下関係の固定化が起きる原因から発生する課題を明確化しました。これらの構造的な問題点を明らかにした上で、現状の課題を特定していきました。
2.各役職/役割の再定義
次に、各役職の責任範囲と目的を再設定し、メンバー自身の強みやスキルを最大限に発揮できる環境を整備しました。これにより、各人が主体的に行動しやすい環境を整備しました。
3.組織体制の見直し
組織における部門間の壁を取り払うべく組織図の見直しを行いました。また、柔軟なプロジェクト管理を可能にするためにPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)体制を導入しました。これにより、各プロジェクトの進行状況を横断的に管理できるようにしたり、情報共有を促進したりすることで、個々人だけでなく、チーム間の協力体制を強化しました。
4.ティール型組織に関する理解促進
定期的なワークショップを開催し、ティール型組織の概念や価値観を組織全体へ共有しました。また、組織の価値観や目標を全メンバーに共有することで、全員が組織が目指す方向性を深く理解し、自律的に行動するための基盤を固めていきました。
5.マネージャー層の意識変革
ティール型組織の文化を浸透させるべく、マネージャーの意識改革を行いました。具体的には、マネージャー教育プログラムの実施、1on1の実施、メンバーを含めた個別対話を通じて、組織課題の理解を相互に共有しました。同時に、何度も対話することでマネージャー自身の課題を明確化し、本取り組みを通じて新しいリーダーシップスタイルを身に着けてもらえるようにしました。その他にも、PMOのハンズオン支援を活用した文化を形成し、ティール型組織特有の自発的な自己成長を促すことにより、メンバーが自律的に行動するための環境が整えられました。
上記取り組みを行った結果、ティール型組織に至るまでの5段階(※1)のうち2番目のステップである「アンバー(上位層による管理下で動く組織)」から3番目のステップである「オレンジ(関係性ではなく数値に重きを置く組織)」の段階へ、約数か月で到達することができました。また、一部のチームではすでに、ティール型組織の最終段階である「ティール(個々が意思決定権を保持している組織)」段階へ足を踏み入れているチームもあります。チームによって変革フェーズは異なりますが、現在は組織全体として「オレンジ」から「グリーン(個々の主体性や多様性を重んじる組織)」、「グリーン」から「ティール」へと、各チームがフェーズアップすべく、その課題整理と対策を進めています。
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(※1) 参照:HR NOTE「ティール組織とは?5段階の組織概念や失敗する理由、成功事例を詳しく解説」