工数88%削減がもたらす「本質的価値」
現在、オリックス生命では「マルチブラウザテスト」と「リグレッションテスト(回帰テスト)」を中心にAutifyを活用している。その効果は劇的だ。
松井氏は、約70ステップのテストをスマートフォン3機種で実施する場合の比較データを提示した。
従来の手動テストでは、端末の準備から画面キャプチャの撮影、Excelへのエビデンス貼り付け作業まで含め、担当者は約250分(4時間強)拘束されていた。
これがAutify導入後は、事前のシナリオ作成さえ済ませれば、実行は完全自動。担当者は実行後の結果確認を行うだけでよく、所要時間は約30分に短縮された。
約88%の工数削減である。しかし、プロダクトマネージャーが注目すべきは「空いた時間」の使い道だ。松井氏は「単純作業から解放されたことで、メンバーはより本質的な業務や、品質向上のための改善活動に時間を使えるようになった」と語る。
テスト自動化は「チームの心理的安全性」への投資である
工数削減以上に、松井氏が強調したのが「組織のマインド変革」だった。
「以前は、リグレッションテストの精度が属人化しており、リリースに対して潜在的な不安がありました。しかし今は、毎週自動でテストが回り、異常があれば即座に検知できます。この『安心感』があるからこそ、私たちは自信を持って機能追加や改善に踏み込めるのです」
プロダクトを成長させるには、継続的な機能追加と改善(CI/CD)が欠かせない。しかし、テストが不十分な状態では、変更を加えること自体がリスクとなり、チームは萎縮してしまう。
テスト自動化は、チームに「心理的安全性」を提供し、守りの姿勢から「攻めのプロダクト開発」へとモードチェンジさせるための投資といえる。
エンジニアからビジネスサイドへ。「品質」の民主化
セッションの結びとして、今後の展望が語られた。オリックス生命では、IT部門での成功を足がかりに、今後は業務部門が行う「ユーザー受入テスト(UAT)」への展開を検討している。
オーティファイの今村氏も、「Autify Nexus」に搭載されたAIエージェント機能などを通じ、非エンジニアでも直感的にテストシナリオを作成・運用できる環境づくりを支援していくとした。
開発チームだけでなく、ビジネスサイドも巻き込んだ品質保証体制が構築できれば、市場の変化に即応するアジャイルな商品リリースが可能になる。
「品質」をエンジニア任せにせず、プロダクトに関わる全員で担保する仕組みを作る。それこそが、AI時代におけるプロダクトマネージャーの重要な役割の一つとなるだろう。

