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デブサミ2026の初日をProductZineとコラボで開催。

Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

「Product Management Summit」レポート

AIエージェント時代のプロダクトマネージャーは何を作るべき? 元BigQuery責任者が語る「ソフトウェアが工場になる日」と新たなモート

「Product Management Summit」レポート

 開発効率が飛躍的に向上するAI時代、ソフトウェアは情報を引き出す「倉庫」から成果を自ら生み出す「工場」へと姿を変えつつある。コードを書くハードルが下がり、誰もがプロダクトを作れるようになる中、プロダクトマネージャーの役割やビジネスの前提はどのように変化していくのだろうか。2026年4月28日、ファインディはプロダクト開発に携わる実務者に向けたカンファレンス「Product Management Summit」を東京で開催した。本記事では、元Google Cloud BigQueryプロダクト責任者のアレクサンダー・ラヴェル(Alexander Lovell)氏の基調講演を中心に、激変する市場で真の競争優位性(モート)を築くための実践的な戦略をレポートする。

プロダクトマネージャー向け初開催の背景と熱気あふれる会場

 4月28日、ファインディが主催する「Product Management Summit」が開催された。会場には多くのプロダクトマネージャーや事業開発担当者が集結し、4つのトラックが同時進行する熱気あふれるイベントとなった。

 参加者の首元には「プロダクト体験設計」や「AI・データとプロダクト戦略」など、自身の関心テーマが書かれた「交流カード」が下げられ、交流ゾーンやスポンサーブースで活発なディスカッションが行われていた。また、今回リリースされたばかりのカンファレンスアプリ「Findy Events」(iOS版Android版)を通じて、タイムテーブルの確認やセッション予約のプッシュ通知など、スムーズな体験が提供されていた。

 開会の挨拶に登壇したファインディ株式会社 執行役員の山田郷(やまだ・あきら)氏は、「つくる人がもっとかがやけば、世界はきっと豊かになる」という同社の経営理念を紹介した。これまで年間約15回のテック系カンファレンスを開催してきた同社だが、プロダクトマネージャー向けに特化したサミットは今回が初開催となる。

オープニングで挨拶をするファインディ株式会社 執行役員の山田郷氏
オープニングで挨拶をするファインディ株式会社 執行役員の山田郷氏

 その背景には、AI時代特有の課題がある。開発効率や生産性が飛躍的に向上する中、エンジニアの役割も「何を作るか」というプロダクトマネージャーの領域へ染み出し始めている。事前アンケートでも「ユーザー体験設計」や「AI・データとプロダクト戦略」に課題を感じている参加者が圧倒的に多く、ChatGPTなどの登場で購買行動も変化している。「シームレスなAI体験をどう作るか」といった正解のない問いに向き合い、「AI時代に、顧客価値を継続的に生み続けるプロダクトマネジメントとは何か」を考える場として、本イベントが企画された。

「プロダクトマネージャーはこれから何をするんだ?」

 キーノートセッションには、元Google Cloud BigQueryプロダクト責任者のアレクサンダー・ラヴェル(Alexander Lovell)氏が登壇した。ラヴェル氏は「AI時代の体験設計を事業価値に繋げるには」と題し、AIが引き起こす不可逆な変化と生存戦略について語った。

基調講演に登壇した元Google Cloud BigQueryプロダクト責任者のアレクサンダー・ラヴェル氏
基調講演に登壇した元Google Cloud BigQueryプロダクト責任者のアレクサンダー・ラヴェル氏

 ラヴェル氏は冒頭、3年前に自身が在籍していたFivetran(50億ドル規模のデータスタートアップ)でのエピソードを披露した。当時、開発期間を6か月から4週間に短縮する生成AIプラットフォームをリリースした直後、CEOから「それで、プロダクトマネージャーはこれから何をするんだ?」と問われたという。それは、自分たちの組織が本来担うべき職務の多くが自動化され、皮肉にも自分たちの仕事を奪いかねないものを自ら作り始めているという、切実な現実を突きつける問いだった。

 2026年2月3日、SaaS企業の評価額2,850億ドルがわずか48時間で失われた。原因は、CodexやCopilot、Cursorといった汎用コーディングエージェントの登場により、カスタムソフトウェアの構築コストと時間がほぼゼロに崩れ去ったためだ。顧客が週末で作れるものに、なぜライセンス料を払う必要があるのだろうか。

 ラヴェル氏は、過去30年間のソフトウェアは情報を保存し検索して仕事を効率化する「倉庫(Warehouse)」だったと指摘する。Salesforceは顧客記録の倉庫、Google Cloudは分析の倉庫だ。

ソフトウェアはアクセスを売る「倉庫」から、成果を生み出す「工場(Agency)」へとシフトする
ソフトウェアはアクセスを売る「倉庫」から、成果を生み出す「工場(Agency)」へとシフトする

 しかし、これからのAIを組み込んだソフトウェアは「工場(Factory)」になる。Sierraがチケットを解決し、Harveyが契約書を起草し、Cursorがコードを書くように、顧客が「成果」を説明すれば、ソフトウェアがそれを自ら「生産」するのだ。

 倉庫を工場に変えるとき、次の3つが同時に壊れるとラヴェル氏は語る。

 1つ目は「プロダクト定義の破壊」だ。機能ではなく「成果」を売るようになり、結果に対する責任を負うようになる。IntercomのAIは4000万件のサポートチケットを自律的に解決し、解決できない場合は無料にしている。Klarnaのチャットボットは700人分の仕事をこなしたが、品質低下によりCEOがやりすぎたと認める事態になった。

 2つ目は「競争上のポジションの破壊」だ。これまでの防壁や価格決定力が機能しなくなる。Salesforceは新しい基準が分からず、同じプロダクトに対して3つの異なる価格モデルを運用し、株価が停滞する事態となっている。

 3つ目は「オペレーションモデルの破壊」だ。「AIが間違ったときに何が起きるか?」「正しいとどう判断するのか?」という問いに答えられない企業が続出する。ある歯科向けAIスタートアップは、これらの質問に対し「歯科医が気づくはずだ」「歯科医がお金をもらうから正しいと分かる」といった責任の所在が不明確な循環論法に陥っていた。

幻想の防壁(モート)と、真の優位性「記憶の第4層」

 現在、AIエージェントプロジェクトの88%は本番環境に到達する前に失敗している。すべてが崩壊する中、ビジネスを守る真の「防壁(モート)」は何なのだろうか。

 ラヴェル氏は、これまでエンタープライズAIソフトウェアで信じられてきた防壁は、もはや幻想だと斬り捨てる。

 データに関して言えば、10年間の投資を経ても、データがAIに対応できる状態にあると答える企業はわずか7%だ。地下の石油とタンクのガソリンが違うように、データを「持っていること」と「活用できること」は異なる。

 先行者利益についても同様だ。GitHub CopilotはIDEにAIを追加したが、後発のCursorはAIを中心にIDEを再構築して市場を圧倒した。CursorのNPSは48ポイント高く、営業担当者を1人も雇わずに2億ドルの収益に達した。先行者利益は防壁ではなく、単なる「スタートのリード」に過ぎない。

 また、Google Cloudで数か月かけてBigQuery用に構築したファインチューニングモデルも、コンテキストを適切に与えた市販の汎用モデル(Gemini Pro)に一瞬で精度を追いつかれた。モデルは決して防壁ではなく、情報を供給するパイプラインこそが防壁なのだ

モデルの性能差や推論コストのアドバンテージは一瞬で消滅する。「モデルは決して防壁ではない」
モデルの性能差や推論コストのアドバンテージは一瞬で消滅する。「モデルは決して防壁ではない」

 GleanやHarvey、Atlassian、Snowflakeが勝っている理由は、最高のモデルを持っているからではなく、顧客のデータやワークフローを成果に変える、競合が再現できない「稼働中の工場」を作ったからだ。ラヴェル氏は、競合がコピーできない真の優位性として「4つのレイヤー」を提示した。

競合がコピーできない真の優位性を生み出す、組織的記憶の「4つのレイヤー」
競合がコピーできない真の優位性を生み出す、組織的記憶の「4つのレイヤー」

 1つ目のレイヤーは「データ(Data)」だ。何が起きたかという過去の記録だが、もはやコモディティであり、大半の企業がここで勝とうとして負ける。

 2つ目は「プロセス(Process)」だ。仕事が実際にどう行われるかのワークフローや例外ルールを指す。ServiceNowはフォーチュン500のIT部門に20年分のワークフローを組み込んでいる。

 3つ目は「意思決定(Decisions)」だ。顧客が選択を下すための「判断基準」を指す。Harveyは法律事務所ごとに許容できるリスクの基準を学習している。

 そして4つ目が「複利的な優位性(Compounding advantage)」だ。すべての顧客のインタラクションを通じてシステム全体が賢くなる層を指す。Sierraはすべてのサポートチケットを通じて、何千もの企業を横断して賢くなる。

 世代を代表する企業になるには、誰もそのカテゴリーが存在することに気づく前に、この「レイヤー4」で記憶の蓄積を始める必要があるのだ。

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AIプロダクトを成功に導く「JCT」フレームワーク

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。 1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテック...

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