ProductZine(プロダクトジン)

組織にプロダクト戦略が必要になるタイミングと、その運用を支援する「プロダクトオペレーション」という考え方

Chatworkの事例から学ぶ、プロダクトオペレーション実践ガイド 第1回

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 Chatwork株式会社は、中期方針「中小企業No.1ビジネスチャット」と、2025年以降で見据えている「ビジネス版スーパーアプリ」構想に向けて、より広範なプロダクト戦略を練らなければならないフェーズに入っています。本連載では、海外の規模拡大したテックカンパニーで広く導入されているProduct Operations(プロダクトオペレーション、ProdOps)という仕組みと、 Chatworkで2021年6月に立ち上げた新組織Product Operationsチームの活動について紹介します。

目次

はじめに

 プロダクトや組織の規模が拡大していく中で、どうプロダクト戦略を管理し運営していくべきなのか。この連載では、先行するテックカンパニーの手法やフレームワークなども紹介しながら、Chatworkのプロダクトマネジメントとして、どのようなチャレンジをし、今後の中長期方針や開発組織拡大のために試行錯誤しているのかを全5回の連載でお伝えしていきます。

 Chatworkでは60名だったプロダクト開発組織はこの1年で1.5倍となり、6名だったプロダクトマネージャーも10名に達しています。中長期方針実現のためには、さらに数百名規模の組織にしていく必要があると考えており、下地の準備としてプロダクトオペレーションを構築しています。本連載における取り組みの紹介が、読者の皆さんが組織でプロダクト開発をスケールさせるための一助になれば幸いです。

対象読者

  • 数名~10名を超えるプロダクトマネジメントチームのマネージャー
  • 拡大中の組織でプロダクト開発に関わるプロダクトマネージャーやエンジニア
  • その他、規模拡大や複数プロダクトのマネジメントに関心のある方

プロダクトオペレーションを組織化し、プロダクト戦略を管理・運営する

プロダクト戦略とはなにか

 マーティ・ケーガンの著書『EMPOWERED』には、「解決すべき問題の決定に役立つのがプロダクト戦略、実際に問題を解決できる戦術を見つけるために役立つのがプロダクトディスカバリー、ソリューションを構築して市場に投入できるようにするのがプロダクトデリバリーである」とあります。

 また、『プロダクトマネジメント』でメリッサ・ペリは、プロダクトマネージャーには大きく3つの種類の仕事があると述べています。

戦術的な仕事

 機能を作って世に出すという短期的な行動に焦点を当てます。次にすべきことを決めるのに使うデータを処理したり、日々、開発者やデザイナーと一緒に作業を分解してスコープを決めたりすることも含まれます。

戦略的な仕事

 マーケットで勝利して目標を達成するためにプロダクトや会社のポジショニングを考えます。プロダクトおよび会社の将来像や、そこに至るために必要なことに着目します。

運営の仕事

 戦略を戦術的な仕事に結びつけます。プロダクトマネージャーは、プロダクトの現状と将来像をつなぐロードマップを作り、チームはそれに沿うように仕事を進めます。

 上記のあたりを参考に、本稿におけるプロダクト戦略は「企業としてプロダクト/サービスを成長させるためのビジョンと指針」と定義します。

プロダクト戦略やその運営はどのように必要になるのか

 さてそれでは、プロダクト戦略の明確化やそれを運営していく仕事は、プロダクトの成長フェーズでどのように必要になるのでしょうか。

 例えば、0→1や1→10で創業メンバーがビジョンを共有できるプロダクトの立ち上げ期や、2~3人のプロダクトマネージャーで密に連携しながらプロダクトを開発しているような段階では、プロダクト戦略の明確化や運営に時間を割く必要はあまりないかもしれません。

 しかしプロダクトと組織が成長し、プロダクトマネージャーやエンジニアが増えてくると、複数のチームが立ち上がっていきます。開発を主体にiOS、Android、Webなどデバイスや使用言語がベースになったり、ユーザーの種類(エンドユーザーや管理者など)、ユーザー体験(新規登録、商品検索、購入など)や主要KPIごとになったりなど、組織の視点に応じてチームが組成されます。

 目的を持ったチームができると、チームごとの領域でOKRや四半期目標などを設定していくことが多いのではないでしょうか。さらに、スクラム開発などでチームが自走することを意識し始めると、より短期での方針や意思の決定が行われるのではないかと思います。

 本来的にプロダクトマネジメントでは特定領域だけではなく、事業全体の成長を意識しておく必要がありますが、領域を持つことでチームのための仕事を作ってしまうリスクがあります。これが良くない方向に進んでしまうと、事業価値の最大化を目指せず、どこに注力すべきかを判断しづらくなり、望ましくない状態に陥ります。

 この辺りが一つ、組織としてプロダクト戦略が必要と感じ始めるタイミングかも知れません。冒頭でも述べたとおり、Chatworkも昨年辺りからこの課題が大きくなってきていました。もともとはCEOの山本と数名のプロダクトマネージャーでプロダクトの企画や意思決定をしていたのですが、ビジネス部門も大きくなり、その意思決定がブラックボックスと思われるようになってしまい、ビジネス側からは「要望が反映されない」、開発からは「開発の大変さが理解されない」といった不満の声もあがっていました。

組織の規模が拡大すると事業全体の意見を取り込んで議論する仕組みが必要になる
組織の規模が拡大すると事業全体の意見を取り込んで議論する仕組みが必要になる

 こういった状況を改善していくために、各部門のステークホルダーも交えた議論を行い、プロダクトとしてのビジョンや戦略、現状についてコンスタントに整理・アップデートをしていく運営が重要と考えはじめました。プロダクトマネージャー組織が最終的な意思決定に責任を持つとしても、組織の中で「なぜ、その時点でその施策に取り組もうと考えているのか」のコミュニケーションを取り続けることは事情理解や信頼につながり、事業成長にも寄与するはずです。

 これからの5回の連載の中では、Chatworkがプロダクトオペレーションという考え方を導入し、この課題にどう取り組んできたのかを、回ごとのテーマに合わせてお伝えしていきたいと思います。うまく行ったこと、うまく行かなかったこと、どちらもできる限り織り交ぜていくので、お付き合いいただけると嬉しいです。


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著者プロフィール

  • 大野木 達也(Chatwork株式会社)(オオノギ タツヤ)

    Chatwork株式会社 Director of Product Management。フリーランスのデザイナーやウェブディレクター、りらいあコミュニケーションズで「バーチャルエージェント®」事業の立ち上げを経験し、メルカリに転職。CS部のプロダクト連携やCXプログラム組織の立ち上げ、PMとしてサー...

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