- 書籍『カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで』
- 書籍『チーム・ジャーニー 逆境を越える、変化に強いチームをつくりあげるまで』
- 書籍『デジタルトランスフォーメーション・ジャーニー 組織のデジタル化から、分断を乗り越えて組織変革にたどりつくまで』
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プロダクトマネジメントって何?
この物語の主人公は、プロダクトマネージャーを志望する名越(なごし)さん。新たにプロダクトを作り始めるために結成されたチームに所属しています。
名越(なごし)
この物語の主人公。もともとは大きな企業にいたが、プロダクトマネジメントの経験を積みたくて転職してきたプロダクトマネージャーの見習い。開発の経験はほとんどない。
チームメンバーは同期の小袋(こぶくろ)くんと、後輩の朝比奈(あさひな)さんの3人。進みが思わしくないことから、3人のメンターとして袖ヶ浦(そでがうら)さんも参加するようになっています。名越さんたち3人は、実践を通してプロダクトマネジメントを学ぶ日々を送っています。
「名越さん、“プロダクトマネジメント”って何ですか?」
朝比奈(あさひな)
チームの中では最年少。プロダクト開発もソフトウェア開発の経験もなく、デザイン制作を少しかじっている。明るくて通りの良い声がチームのムードメイカーになっている。
「……朝比奈さん、また唐突な質問だね」
「考えてみれば、プロダクトマネジメントって何をマネジメントするのかなって。プロダクト開発を管理することでしょうか?」
「プロダクト開発の進捗を見たり、できたものを確認したりすることかな……?」
小袋(こぶくろ)
名越より年下だが同じ時期に転職してきたプログラマーで、同僚。口数は少ないが、自分の意見はしっかり言うタイプ。
小袋くんも、そういえば何だろうと、自信のない感じの意見だった。
「そう……だね。そういう意味では僕らはまだ企画段階でプロダクトがあるわけではないし、プロダクトマネジメントは始まっていないかな(たぶん)」
「じゃあ、プロダクトマネジメントって、いつ始まるんですか?」
朝比奈さんの容赦ない質問に、僕も、小袋さんも、言葉を詰まらせた。
僕自身、プロダクトマネージャーとなることを目指しているけれども、肝心の“プロダクトマネジメント”が何を指しているのかはあいまいなままだった。
「プロダクトマネジメントがプロダクト開発の管理なら、私たちも早く“要件定義”をして、開発の準備をして、“スケジュール”を引いて、進みが分かるようにしないといけないのではないでしょうか!」
朝比奈さんは遅々として進まない、僕らのプロダクト企画の現状をどうにかしたい一心のようだった。強い口調に、小袋くんは気おされたように応じた。
「よ、要件定義? スケジュール? ちょっと待って、何だか変だ」
僕も要件定義とか、開発には詳しくないけれども、プロダクトマネジメントがそこから始まるとは思えなかった。
とはいえ、朝比奈さんの疑問に答えられるだけの知識が僕にもあるわけではない。いつものように、視界のすみっこにいる袖ヶ浦さんに助けを求めるしかない。
そんな僕の視線に気づいたのか、袖ヶ浦さんはキーボードを叩く手を止めて、ため息交じりに応じてくれた。
「ぜんぜん、違います」
袖ヶ浦(そでがうら)
チームの面倒を見ることになったマネージャー。冷たい雰囲気が漂う。