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競合ひしめくプロダクト開発で、PMFを達成するには? 市場変化の捉え方と意思決定のヒント

Chatworkのプロダクトマネジメントに学ぼう 第5回

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2021/05/19 11:00

 ChatworkのプロダクトマネジメントおよびPM(プロダクトマネージャー)育成のノウハウを、リレー形式で紹介する本連載。第5回となる今回は、プロダクトマネージャーの石田より「巨人ひしめくビジネスチャット市場でのプロダクト開発」というテーマで解説します。競合が次々と参入してくるビジネスチャット市場の変遷をどう捉えてきたのか。プロダクト・ライフサイクルに沿って、各フェーズにおけるChatworkのプロダクトに関わる意思決定をどう行ったのか。ポイントを紹介したいと思います。

目次

はじめに

 Chatworkのプロダクトマネージャーによる連載企画も第5回目となりました。今回は「競合ひしめくビジネスチャット市場でのプロダクト開発」というテーマで、プロダクト・ライフサイクルに沿って、これまでのChatworkのプロダクトに関わる意思決定の変遷を紹介します。

 ビジネスチャット市場を題材にしていますが、プロダクト・ライフサイクルの捉え方や、市場・競合環境の変化に合わせた自社のポジショニングを見極めは、市場に関わらず共通するものがありますので、インサイトを提供できればと思います。

ビジネスチャット市場の変遷

 Chatworkは2011年3月にサービスを開始して今年で10周年を迎えました。

 そんなChatworkが属するビジネスチャット市場は、2010年頃から徐々に市場が形成され始め、2010年代前半には、サンフランシスコ市内だけでも10以上のスタートアップがビジネスチャット主体としたサービスを提供していました。ただ、その頃はまだビジネスチャット単体での市場は存在せず、グループウェアや社内SNSなどを一括にして、ユニファイドコミュニケーション市場などと表されていました。

 2015年頃には、MicrosoftやGoogle、FacebookやAtlassianなど、いわゆるテックジャイアントと呼ばれる大手テクノロジー企業も市場に参入したことで、市場は拡大し、競争が激化していきました。同時期には、日本国内でもマーケットインする企業が増え、認知獲得に向けたマス広告を展開されたことで、一般市場における認知が広がっていきました。しかし、急速にレッドオーシャン化した市場において、生き残りが困難になったスタートアップ企業は、大手テクノロジー企業に買収されるか、サービス停止を余儀なくされました。

 このようにスタートアップがProblem-Solution Fitを証明した後に、Tech Giantと呼ばれる国内外の大手テクノロジー企業が市場に参入し、サービス同士の統合や買収、停止が繰り返される過程で市場が形成されました。現在ではビジネスチャットツールはいくつかの主要プレイヤーに絞られつつあるという、プロダクトライフサイクルの様式が顕著に表れている市場だということがこれまでの変遷から見て取ることができます。

導入期:生死を分けるPMF

 “Product/market fit means being in a good market with a product that can satisfy that market“と、米VCのAndreessen Horowitzの共同創業者であるMarc Andreessenの言葉にあるように、初期の導入期においては、まず「良い市場」を見極め、市場ニーズを満たすプロダクトを提供できるかが、その後、大手企業が参入してきた時に、市場で生き残れる(サービスの継続または買収)かどうかの大きな境目となります。

 市場で生き残った買収例として、主に非ITユーザー(金融や不動産、士業など)の市場に注力してチャットサービスを提供していた会社が、大手企業に買収されたケースがあります。当時買収元が提供していたサービスが獲得できていない層のユーザー基盤を手に入れるための買収です。一方で、モバイルでのメッセージングや映像をつなげながらチャットができるなど、プロダクトに独自性を持たせながらも、マーケットフィットができなかったサービスは、サービス終了に至ったケースもありました。

フィットするマーケットの見極め

 実はChatworkも2010年代前期から中期に米国市場に進出していました。その後、国内市場に集中することとなりましたが、この判断が、その後日本に大手テクノロジー企業が参入してきた際に、対抗できるユーザー基盤を作れた一つの要因だと考えられます。

 当時の米国市場では、シンプルな機能性、デザイン性の高さ、機能のパーソナライズ化などに価値を見いだしているユーザーが多く、Chatworkが強みとしていない価値が求められていました。また、米国企業では一顧客の対応を、社内の複数人で行うことが少ないため、社内外の複数人が同じグループチャットでやり取りをする、というChatworkのコンセプトがあまり刺さらない状況でした。

 一方、国内市場に目を向けると、社内外の複数人をCCに入れてメールを送る文化が強くあったことから、メールからChatworkへの移行イメージが持ちやすく、社外とのやり取りにも頻繁に利用され始めていました。こうした背景もあり、より適切なProduct Market Fit(PMF)を求めて、国内市場にフォーカスをすることになりました。そして、その翌年あたりから、海外の大手サービスが本格的に日本市場へ進出したため、あと少しマーケットの見極めが遅ければ、その後のグロースフェーズに十分なユーザー基盤を獲得できなかったかもしれません。


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著者プロフィール

  • 石田 隼(Chatwork株式会社)(イシダ ハヤト)

     Chatwork株式会社 プロダクト本部 プロダクトマネジメント部 マネージャー。San Francisco State University 在学中に、VCでのインターンを経て、現地でユーザーテスト事業を開始。日本のゲーム会社やスタートアップのプロダクトローカライゼーションを支援。卒業後、Cha...

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