アプリグロースのためのコミュニケーション施策
最後に、UXを向上し、アプリをグロースさせるためのアプリ内コミュニケーション施策をご紹介していきます。
単に機能を提供するだけでは、アプリを成長させることはできません。ユーザーの行動データや属性データから分析された情報をもとに以下のようなコミュニケーション施策を効果的に行うことで、エンゲージメントを上げていくことが大切です。
1. プッシュ通知やアプリ内メッセージの活用
ユーザーに適切なタイミングで有益な情報を提供する、アプリならではの施策です。
どんな情報を提供するかはアプリごとに異なりますが、キャンペーン情報など、ユーザーにとって有益な情報をタイムリーに配信することが基本です。不要な情報が届いたり頻度が多過ぎたりするとUXを損ない、通知OFFやアンインストールにもつながります。行動データなどに基づいてパーソナライズし、そのようなことも防いでいきましょう。
コミュニケーション施策を単独で実施するのではなく、組み合わせることで、より大きな効果が期待できます。
施策の組み合わせによる効果とユースケース例:ファッション系ECアプリの場合
- アプリ課題:新規ユーザーの購入率が低い
- 施策例:初回購入を促す限定クーポン×セグメント配信で初回購入を促す
- ①新規ユーザーに対して、「初回購入限定! 7日間だけ使える30%OFFクーポン」をアプリ内メッセージで配信
- ②未購入で離脱したユーザーに対して、2日後に「期間限定の未使用クーポンがあります」というプッシュ通知を配信
- ③未購入でダウンロード後7日以内に再起動したユーザーに対して、「利用期限が近いクーポンがあります」とアプリ内メッセージ配信
また、初回購入直後は「アプリ内メッセージ× オンボーディングのステップ配信」などでアプリの主要な機能の操作方法を説明することで、以下のような効果が期待できます。
- 購入率向上:期間限定クーポンにより、初回購入のハードルを下げ、購入につなげる
- 新規定着率の向上:機能や操作説明などのオンボーディング施策で、アプリ離脱を軽減する
- 顧客満足度向上:スムーズな購入体験を提供する
2. チュートリアルの最適化
新機能の紹介はもちろん、離脱したユーザーの再獲得にも活用できます。
例えば、ある機能を操作完了前に離脱したユーザーがいた場合、もしかしたら使い方が分からなかった可能性が考えられます。このような行動を取ったユーザーに対して、操作の案内を配信することで、利用再開を促せる場合があります。
- 新機能のお知らせ
- 使い方が分からなかった可能性のあるユーザーへのガイダンス
3. NPS(Net Promoter Score)の測定
アプリの評価を何段階かで評価してもらい、アプリの評価を把握します。
「購入完了した人」など、特定のコンバージョンポイントを通過した人に聞くのがおすすめです。
一般的なNPSは0から10の11段階で顧客ロイヤリティを数値化しますが、アプリでは5段階評価が多く見られます。常設して継続的に評価をもらうことで、年単位でエンゲージメントの推移を評価しているケースもあります。
ちなみに星の評価というと、アプリストアの評価を増やすためのストアレビュー改善施策もありますが、今回の話はこれとは別になります。
- 特定のコンバージョンポイント通過後のアンケート実施
- 継続的な評価収集による改善活動の効果測定
4. チャットボットやFAQの提供
ユーザーの疑問や問題を速やかに解決するためのサポートを提供します。
先ほどご紹介した過去の調査でも、FAQ・よくある質問は幅広い年代で見られていることが分かっています。アプリ関連だけでなく、サービス全体に関するものも用意できると良いでしょう。
- アプリやサービスに関する質問を速やかに解決する仕組み
- よくある質問とその回答の整理
これらのコミュニケーション施策は、一度提供して終わりではありません。A/Bテストなどを通じて継続的に最適化していきましょう。
さいごに
本記事では、UX改善の羅針盤となるAARRRモデルを軸に、アプリを成長させていくための戦略と考え方を解説しました。各フェーズにおいてUXのポイントを理解し、「良いUX」のための4つの要素を押さえてユーザー中心の設計を行うことで、アプリを持続的に成長させていくことが肝要です。
次回はUX改善に欠かせない「データに基づいた根拠」を理解するために、定量データ分析とはどのようなものを指すのかや、AARRRモデルの各フェーズで見るべき指標について解説予定です。
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