LT2:toCエンタメプロダクトのプロダクトマネジメントのリアル
- 発表者:emole株式会社 佐々木優太氏
- 発表スライド
概要
本セッションでは、エンターテインメント業界、特にtoC向けのプロダクト開発における独特の課題が取り上げられました。ショートドラマ配信アプリ「BUMP」の開発を例に、人材確保の困難さとその解決策が共有されました。
しくじりの内容と背景
BUMPの開発初期には、以下の3点が主な問題として挙げられました。
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認知度の低さ
- 会社もプロダクトも、ほとんど誰にも知られていない状態で、優秀なエンジニアやデザイナーを惹きつけるのが非常に困難でした。
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メッセージングの難しさ
- どういうメッセージを届ければ良いかの解像度が低く、求人広告を出しても反応が薄い状況が続きました。プロダクトの魅力や仕事のやりがいを適切に伝えられていませんでした。
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正社員採用の停滞
- 副業メンバーは集まったものの、正社員がなかなか決まらず、長期的なプロダクト開発に不安を感じる状況が続きました。
これらの課題により、開発の進捗が思うように上がらず、サービスローンチの遅れが懸念される事態となりました。人材が集まらないことで、プロダクト開発のスピードが上がらず、それがさらに優秀な人材の獲得を難しくするという悪循環に陥っていました。
学びと対策
この状況を打開するため、以下の施策が実施されました。
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エンジニア向けの魅力的な紹介ページの作成
- 技術的なチャレンジや、エンジニアへのリスペクトが伝わるコンテンツを盛り込みました。具体的には、使用している最新技術のスタック、エンジニアの裁量権の大きさ、フラットな組織文化などを前面に押し出しました。
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サービスのあるべき姿から逆算した組織体制・採用計画の策定
- BUMPがどのようなサービスになるべきか、そのためにはどのようなスキルセットを持つ人材が必要かを明確にしました。この過程で、短期的な人員補充ではなく、長期的な視点での採用戦略を立案しました。
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副業メンバーへの大胆な権限委譲と、正社員化へのパスの提示
- 副業メンバーに対して、単なる外部リソースではなく、プロジェクトの中核を担うメンバーとして扱うことにしました。具体的には、重要な意思決定プロセスへの参加、自律的な業務遂行の機会提供、そして将来の正社員化への明確なパスを示しました。 「BUMPを一緒に作り上げる」というビジョンを共有し、副業であっても主体的に関われる環境を整えたことで、徐々に正社員としての入社を希望する副業メンバーが現れ始めました。
これらの施策により、徐々にチーム体制が整い始め、プロダクト開発のスピードも向上しました。人材が集まり始めると、それが更なる人材を引き付ける好循環が生まれました。
しかしながら、toCのエンタメプロダクト、特に「ショートドラマ」という分野は、まだ市場自体が成長段階にあります。これは課題でもあり、同時に大きな可能性でもあるということが強調されました。
総括
本LTでは、シード期スタートアップの開発における人材確保の難しさと、その解決策が共有されました。佐々木氏は、技術スタックや組織文化を明確に伝える採用ページの作成、副業メンバーへの権限委譲など、具体的な施策を講じることで人材確保の課題を克服しました。この事例は、PMが採用戦略にも積極的に関与することの重要性を示しています。