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ファインディのコミュニティイベント「PM Hub」レポート

生成AIによるプロダクトマネージャー業務効率化のリアル──海外カスタマーインタビューからリサーチ業務の効率化まで

ファインディのコミュニティイベント「PM Hub」レポート 第15回

 ファインディ「PM LT Night」で、AIによる業務効率化のリアルが語られた。ジグザグ社は、海外カスタマーインタビューにおける一次情報の精度担保(人)と分析の加速(AI)という役割分担を共有。ユアスタンド社は「AIは作業を奪い、仕事をくれる」という視点で、リサーチや定型業務の自動化事例を紹介。AI時代のPMの働き方の本質に迫る。(編集部)

はじめに

 ファインディが主催するプロダクトマネージャー向けコミュニティイベント「PM Hub」では、現場での実践知を共有するLTイベント「PM LT Night」を定期的に開催している。2025年8月22日に開催された「PM LT Night」では、海外カスタマーインタビューでの生成AI活用や、「AIが奪うのは作業、与えるのは仕事」という視点での業務効率化事例が共有された。

編注

 本記事では、「PM」はプロダクトマネージャーを指します。記事中の各位の所属および役職は、イベント開催時点(2025年8月22日)のものです。

LT1:「海外カスタマーインタビューの継続と組織への浸透のための取り組み」

  • 発表者:
    • 星雄樹氏(株式会社ジグザグ プロダクトマネジメントチーム プロダクトマネージャー)
    • 松野亘氏(株式会社ジグザグ プロダクト&グロース本部 本部長 兼 プロダクトマネジメントチーム マネージャー)

越境ECにおける海外カスタマー理解の課題

 株式会社ジグザグは、日本の商品を海外のカスタマーに届ける越境EC事業を展開しています。ジグザグでは、日本のショップ向けにはBtoBの越境EC支援プロダクト「WorldShopping BIZ」を、海外のカスタマー向けには購入代行サービスを提供しています。

 このビジネスモデルでは、海外カスタマーの理解は事業成功の鍵となります。しかし、世界中に住むさまざまな国籍・地域のお客様に対して、言語の壁、文化的背景の違い、宗教の違いなど、日本人だけでは理解が困難な要素が多数存在します。

生成AIを活用したインタビュープロセスの構築

 ジグザグでは、生成AIを活用して海外カスタマーインタビューを効率化する取り組みを実施しています。具体的には、以下のプロセスでAIを組み込んでいます。

  1. インタビューの翻訳
  2. 翻訳内容の理解とインサイト抽出
  3. 得られた知見の整理と共有

 このプロセスにより、限られたリソースと能力の中で、深いインサイトを得ることを目指しています。

インタビュープロジェクトの運営実態

 星氏がリードするインタビュープロジェクトでは、2023年10月頃から本格的に開始し、これまでに50回のインタビューを実施。12か国の方々にインタビューを行っています。

 インタビューはGoogle Meetで実施し、社内メンバー2名がインタビュアー、海外カスタマー1名の計3名で行うことが多い構成です。議事録ツールとして「tl;dv」を採用し、生成AIを活用した効率化を図っています。

生成AI活用における3つの課題と解決策

1.文字起こしの精度向上

 文字起こしにおいて、実際の発話が欠落したり、固有名詞が不正確になったりする課題がありました。この課題に対して、tl;dvとGoogle AI Studioを併用するアプローチを採用。

 tl;dvは音声の自動認識において安定したパフォーマンスを提供しますが、複数言語が混ざる場合には内容が不明確になることがあります。そのような場合、Google AI Studioに該当部分を切り取って文字起こしを依頼することで、アニメの固有名詞(コードギアス、魔法少女まどか☆マギカなど)も正確に認識できるようになりました。

2.発話内容の整理とインサイト抽出

 文字起こし後の発話内容整理において、カスタムGPTを活用し、トランスクリプトを処理してアウトプットを得た後、Notionデータベースに整理して保存します。

 インストラクションの設計では、分割処理や段階処理が重要であることが分かりました。生成AIに一度に大量の情報を処理させるのではなく、段階的に処理することで、より精度の高い結果を得ることができます。

3.社内共有の促進

 インタビュー内容を社内で共有する際、1時間の動画を見てもらうのは現実的ではありません。そこで、Cursorを使ってレポート形式で興味のある切り口で内容を共有する仕組みを構築しました。

 インタビューごとに整理したデータを格納し、Cursorを使って横断的に内容を分析。例えば「初回カスタマーの気持ちにはどのようなものがありましたか?」といった問いに対して、傾向や実際の発言をレポート化して提供しています。

総括:一次情報と分析の役割分担

 星氏、松野氏の発表から見えてきたのは、生成AI活用における明確な役割分担の重要性です。

 一次情報(文字起こし、切片化)については、Google AI Studioやインストラクションの改善により精度向上は可能ですが、まだ人の確認が不可欠です。一方、一次情報を基にした分析については、一次情報がある程度確実になった後は、AIに任せることで分析を加速させることができます。

 「一次情報は人の手も加えて精度を高めて、その後の分析はAIで加速していく」という考え方は、多くのプロダクトマネージャーにとって参考になる視点でした。

次のページ
LT2:「secret ai ~君がくれたもの~」

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この記事の著者

ファインディ株式会社 プロダクトマネジメント室(ファインディカブシキガイシャ)

プロダクトマネージャー向けのイベントを開催しているコミュニティです。各社のプロダクトマネジメントに関する取り組み事例や成功事例をLTやパネルディスカッションを通じて共有し、またプロダクトマネージャー同士の懇親の場を設け、それぞれが取り組んでいる課題やベストプラクティスについて話し合い、社内に閉じがち...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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