LT3:小さなチームから大きな組織へ:PMとしての挑戦と失敗の記録
- 発表者:株式会社ラクス 柴那由太氏
- 発表スライド
概要
本セッションでは、組織の成長に伴うPMの役割の変化と、その過程で経験した課題が共有されました。特に、小規模チームから大規模チームへの移行におけるコミュニケーションの質の重要性が強調されました。
しくじりの内容と背景
小規模チームから大規模チームへの移行において、以下のような課題が浮き彫りになりました。
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コミュニケーションの質の低下
- 以前所属していた小規模チーム(PM兼Dev、Devチーム5〜7名、インフラチーム3名、営業チーム2〜4名、プロダクトオーナー)では、対面での頻繁なコミュニケーションにより情報共有が容易でした。しかし、大規模組織(開発課約30名、モバイル開発課約10名、QA課約10名、デザイン課2名など)では、同様の方法が通用しなくなりました。
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ドキュメンテーションの重要性の認識不足
- 小規模チームでは口頭での伝達で済んでいた内容も、大規模組織では適切にドキュメント化する必要がありました。この習慣が身についていなかったため、情報の伝達や共有に支障をきたしました。
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PRD(製品要求仕様書)の質の問題
- 大規模組織での開発プロセス(年4回の3か月サイクル、ウォーターフォール開発)において、PRDの重要性が増大しました。デリバリーが多くできない分、ディスカバリーの質が高く、納得感があり、認識齟齬がないPRDが求められるためです。
小規模チームでは、対面での頻繁なコミュニケーションが可能であり、情報の共有や補足が比較的容易でした。しかし、大規模チームではこのようなコミュニケーション方法に限界があることが明らかになりました。
学びと対策
この経験から、以下の対策が講じられました。
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質の高いコミュニケーションの重視
- 「コミュニケーション回数が少なくとも、情報が正確に相互に伝わっている状態」を目指しました。これにより、ミーティングの回数を減らしつつも、必要な情報が確実に共有されるようになりました。
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ドキュメンテーションの質の向上
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PRD(Product Requirements Document)などの文書作成において、以下の点に注意を払い、伝えたいことが相手に伝わるドキュメントになるよう心掛けました。
- 明確性:情報を簡潔で分かりやすく、一読で理解できるように記述
- 一貫性:用語の使い方やフォーマットを統一
- 完全性:必要な情報をすべて含め、抜けやあいまいさをなくす
- 構造化:論理的に構造化し、適切な見出しを配置
- 視覚的魅力:図やグラフを効果的に使用
- 読み手から逆算:読者の視点に立ち、期待に応える内容にする
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PRD(Product Requirements Document)などの文書作成において、以下の点に注意を払い、伝えたいことが相手に伝わるドキュメントになるよう心掛けました。
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ドキュメンテーションスキルの向上
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上記のような質の高いドキュメントを作成するため、具体的には以下の方法を実践しました。
- 言語化:自分の考えを整理するときは必ず文章として書き出す
- 要約力の向上:スライド(パワーポイント)にまとめる練習をする
- 模倣:分かりやすいと感じたドキュメントの構成やレイアウトを真似る
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上記のような質の高いドキュメントを作成するため、具体的には以下の方法を実践しました。
総括
本LTでは、小規模チームから大規模チームへの移行に伴う課題が浮き彫りになりました。PMは、対面でのコミュニケーションに頼るのではなく、ドキュメンテーションの質を向上させることで、情報共有の問題を解決しました。この経験は、組織の成長に合わせてコミュニケーション方法を適応させることの必要性を強調しています。