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プロダクトのライフサイクルとは?
世の中にあまたあるどのようなプロダクトでも、プロダクトがリリースされてから一度も変更がないまま継続してユーザーの心を掴み続けることは難しい。なぜならユーザーは時を経ることに年齢や生活や仕事のスタイルが変化し、同時に時代の価値感も変わり、ユーザーがプロダクトから受ける感情も移り変わるからだ。
それは生物種が誕生しては自然淘汰されていく過程とよく似ている。人間も同じで、生まれてから死に至るまでの経過を円環で描いたものを「ライフサイクル」と呼び、プロダクトの一生を表す言葉としても用いられている。ライフサイクルを考えるにあたり主体は大きく分けて2つある。「作り手」と「マーケット」だ。双方にはそれぞれ個別のライフサイクルがある。特に作り手側からすると、対象とするプロダクトが今、ライフサイクルのどこにいるのかを知ることは、プロダクト開発資源の投入にあたり重要な情報である。
本記事ではプロダクトライフサイクル(作り手視点の見え方)とプロダクトアダプションサイクル(マーケット視点からの見え方)の2つのライフサイクルの捉え方を解説する。プロダクトマネージャーが、自分の手掛けるプロダクトを適切に進化させていくための立ち位置の把握に役立て、次の方向性を定める指針として活用していただきたい。
プロダクトライフサイクル(作り手視点の見え方)
プロダクトライフサイクルとは、プロダクトやサービスが市場に投入されてから、時間の経過とともにどのように市場に受け入れられていくかを示すものである。
プロダクトを世に送り出した後、数日でピークを迎えてしまうこともあれば、特定のユーザーからじわじわと広がり、やがて大きく広がるようになることもあろう。大事なのは、プロダクトが受け入れられる時間軸とそのボリュームの理解のしかただ。プロダクトライフサイクルが作り手視点であるのは、下記に説明していくどの段階にプロダクトがいるのかを気づくきっかけを与え、この先どのようにプロダクトへの投資配分を行うかの基本的な見通しを示してくれるからである。
ライフサイクルのステージによって、グロース施策で行くのか、価格戦略で行くのか、デザインを変更するのかといった、プロダクトの拡大あるいはコスト削減や縮退の意思決定をする際の判断材料の1つとして使われる。下図の通り、主に導入期、成長期、成熟期、衰退期、延命期の5つに分けられる。
導入期
プロダクト開発の初期投資により、プロダクトを初めて市場に投入していくステージ。この段階ではまだ、市場に受け入れられているかどうかわからないことが多い。プロダクトで何が実現できるのかをユーザーに理解してもらうため、最小限の機能で構成したプロダクトを最短で作り上げ、ユーザーの反応を検証することが多い。
このように、完璧な品質ではないが、プロダクトとしてやりたいことがわかってもらえるレベルのプロダクトのことを実用最小限の製品(Minimum Viable Product、もしくはMVP)と呼ぶ。現実には、単純に画面やユーザー体験のモックアップを作ってユーザーインタビューを実施、フィードバックを得るというのもMVPの活動の範疇に入ってくる。ただし、MVPの段階ではまだ収益はあげられていない。
成長期
プロダクトが収益を生むことができるとわかった後、グロース施策を打つステージとなる。UI/UXの改善にとどまらず、効果的に認知度を上げるためのマーケティング施策も含まれる。プロダクトマネージャーは実際のマーケティング施策の実行にはあまり手をださないものの、プロダクトを誰よりも知る人としてメッセージの作り方、何をいつどこまで公開すると良いかといった観点では多分に協力をする。
成熟期
市場への浸透が進み、ある程度予見可能な収益の見通しが立つステージである。ハードウェアプロダクトであれば開発するコストのてい減や、利益率の改善が見られるようになる。一方で、市場の存在や収益性について他社にも知られるようになり新たな競合他社の参入を呼ぶことがある。
衰退期
プロダクトがマス市場にまで広く浸透し、これまでの成功をもとに次期プロダクトや新規サービスが登場してくるステージ。これまでついていたユーザーはそれらにくら替えをしたり、ユーザー自身の人生や生活のステージが変わることで必要とするプロダクトが変わってくることもある。どんなプロダクトでも収益性が落ち込み始める。
延命期
衰退期を迎えたとしても、プロダクトの寿命を延ばすことは不可能ではなく、その道を探るステージ。例えば価格を下げたり、自社の他のプロダクトと組み合わせて販売(バンドル)したりと、単体では生み出せなかった価値に置き換えてユーザーに届きやすくする方法がよくとられる。しかし、この方法がいつも有効であるわけではなく、市場やプロダクト、ブランディングとの兼ね合いでむしろ逆効果になることもある。