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ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

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特集記事

Figma CPO 山下祐樹が語る、AI時代のデザイン思想

3:「なぜ」を問う人間こそが、AI時代に価値を持つ

──近年、Figmaをはじめ、AIを活用した機能が続々と登場しています。この「AI時代」におけるデザインの本質とはなんだと思いますか?

山下:そもそもデザインとは、問題を発見し、問いを立て、問題を解決するために試行錯誤するプロセスのことを指すと考えています。

 例えば、デザイナーはクライアントに対して「How do we make it?(どうやって実現する?)」「What if〜?(もし〜だったらどう?)」といった問いをよく投げかけます。つまり「もっと良い体験をつくれないか?」「よりよい解決策はないか?」と問い続ける姿勢こそが、デザインの基本的な考え方であり、それはAI時代になっても変わらないと考えています。

──デザインの本質とは、より良い可能性を求めて「問い」を立てることなんですね。

山下:そうですね。デザイン領域に限らず、プロダクトマネジメントにおいても「問いの設計」は重要です。

 例えば、ユーザーから「こういう機能を作ってくれませんか」と依頼を受けた機能をそのまま開発するケースがあるとします。これはユーザーの声を聞いているという点で悪くはないのですが、見えている問題にだけ対処する「対症療法」に過ぎず、その背景にある潜在的な課題に対してはアプローチできていない可能性があります。

 問題の本質にたどり着くためには「なぜそうした機能を求めているのか」「なぜそれが問題なのか」などと、「なぜ」を何度も尋ねることが重要です。そうすることで、各ユーザーが抱える課題をより深く理解することができ、より良い機能を考えることにつながります。

──現在、AIの台頭によってデザイナーの存在意義に疑問を呈する「デザイナー不要論」も聞かれます。こうした意見に対し、山下さんはどうお考えですか?

山下:プロダクトの量産に関しては今後間違いなくAIが担っていくことになるかと思いますし、ユーザーからの「こういう機能を作ってほしい」という要望に対して「答え」を出すこともAIが得意としています。しかし、現状では「問い」を立て、ユーザーの要望の外側にあるより良い可能性を模索することはできません。

 先ほどお伝えしたように、「問いの設計」はデザインの本質ですから、人間のデザイナーが不要になることはまずないといっていいと思います。むしろAIの台頭によって、人間が担う「問いの設計」をはじめとしたデザインシンキングの重要性はますます増していくと思いますね。

4:デザインの哲学を加速させる、新たなツール群

──「Figma Sites」や「Figma Make」をはじめとしたAIを活用した機能を導入することで、デザインのプロセスはどのように変わっていくと思いますか?

山下:まずクリエイティビティを必要としない地道な仕事をAIに任せられるようになり、戦略的な領域にリソースを割けるようになります。

 例えば、これまではデザイナーがモックを作る際、よりリアリティのあるものに仕上げるために写真を置き換えたり、アプリのコンテンツを考えたりといった地道な作業が発生していました。その点「Figma Make」を使えば、Figma内のAIが生成した画像の差し替えが簡単にでき、コードが分からなくてもプロンプトを打ち込むだけで、より洗練されたモックに仕上げることができます。

Figma内のAIが生成した画像の変更も簡単に。「Figma Make」
Figma内のAIが生成した画像の変更も簡単に。「Figma Make」

──デザイナーはよりクリエイティブな作業に注力できるということですね。プロダクトマネージャーの仕事はAIによってどのように変化するとお考えですか?

山下:一般論でいうと、プロダクトマネージャーが最も苦労するタスクの一つに、膨大なデータから使える情報を抽出する作業があります。これをAIにサポートしてもらい、ユーザーの傾向分析をはじめとしたリサーチ時間を短縮しているケースをよく見かけますね。

 また、Figmaに関連するところでいえば、プロダクトマネージャー自身もいろいろとアイデアを持っている中で、これまではデザイナーに依頼しなければプロトタイプを作ることができませんでした。しかし、例えば「Figma Make」を使えば自身のアイデアをすぐに仮説としてかたちにでき、新しいアイデアをピッチしやすくなったり、思考をより深めたりできます。

──AIはデザインの量産やブラッシュアップだけでなく、結果的に思考の密度を高めることにもつながるのですね。

山下:そうですね。「道具としてのAI」ではなく、「思考のジャンプアップを助けるためのインフラ」として捉えると、可能性がより広がると思います。デザインの本質である「問題解決」のプロセスを支える基盤が整った、ともいえそうです。

次のページ
5:なぜ日本から始めたのか──難しい市場への「本気の投資」

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この記事の著者

Asuamu(アスアム)

蜂谷智子が主宰する編集プロダクション。取材・編集・執筆を軸に、多様なストーリーを紡ぐ。深みのあるインタビューやリサーチに基づくコンテンツ制作を得意とし、記事・書籍・Webメディアの企画から執筆までを手がける。https://www.asuamu.com/

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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