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ProductZine Day 2025

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SaaS事業の成長戦略を指標化──「顧客価値の可視化」でビジネス部門との連携を強化するテックタッチの取り組み

 デジタルシステムの定着化支援プラットフォームを提供するテックタッチ株式会社では、新規顧客獲得を目指す「コンペ勝率重視」から、既存顧客からの利用拡大を目指す「顧客価値重視」へと指標設計を転換した。プロダクトマネージャーの松木周(まつき・しゅう)氏は、50~60名の顧客インタビューを通じて「再生ROI」という独自指標を開発し、ビジネス部門との連携強化を実現。その結果、中央値で4~5倍の改善を達成し、顧客のアップセル促進や解約防止に貢献している。松木氏は、指標設計の具体的プロセスと組織全体での運用方法について共有した。

事業成長に向けた課題と新たな指標設計への転換

 テックタッチ株式会社は2018年3月に設立されたスタートアップで、既存のWebシステムやアプリケーションにノーコードで操作ガイドやナビゲーションを追加できるデジタルアダプションプラットフォームテックタッチ」を主力製品として展開している。2025年6月時点で800万人のユーザー(※テックタッチ調べ・MAU換算)に利用されており、国内のこの市場におけるリーディングカンパニーとなっている。

 プロダクト開発部でプロダクトマネージャーを務める松木周氏は、新卒で入社した企業でIoTデバイス管理のPaaS事業企画に従事した後、2022年1月にテックタッチに入社した。エンジニアのバックグラウンドを持つ松木氏は、入社のタイミングでプロダクトマネージャーに転身し、現在はテックタッチ事業においてディスカバリーを中心とした業務を担当している。

テックタッチ株式会社 プロダクトマネージャー 松木周氏
テックタッチ株式会社 プロダクトマネージャー 松木周氏

 テックタッチのプロダクトマネジメントチームは6名で構成され、うち2名がプロダクトオーナー(PO)としてスクラムチームのプロダクトオーナー役割を担い、残る4名がプロダクトマネージャーとして活動している。プロダクトマネージャーはプロジェクトのドメインごとに分かれており、AIを中心とした「Techtouch AI Hub」プロジェクトを担当する領域と、操作ガイドやツールチップ(吹き出し)の機能を作る領域に分かれ、それぞれ同程度の人数が配置されている。

プロダクトマネジメント関連のテックタッチの組織図
プロダクトマネジメント関連のテックタッチの組織図

 松木氏は「プロダクトを作るときの2つのフェーズ『ディスカバリー』『デリバリー』に対し、プロダクトマネージャーはメインにディスカバリーを、プロダクトオーナーはデリバリーを担う形で役割分担しています」と説明する。

 松木氏が指標設計に取り組んだ背景には、2022年頃から表面化した経営課題があった。第1に「Land & Expand戦略」の推進が求められていた。これは一般的なSaaS戦略の一種だが、テックタッチでは例えば、まず顧客の人事部門のような小さな範囲に導入してもらい(Land)、効果を感じてもらったら営業部門やDX部門など複数部門にユーザーを広げていく(Expand)イメージだ。つまり、既存顧客での利用拡大が重要テーマとなっていたのだ。

 第2に、解約率の維持が課題となった。競合企業のマーケットレポートを分析したところ、導入後に一定の解約が発生している実態が明らかとなり、顧客インタビューを深掘りすると「導入した効果を感じられなかった」という声があった。競合で起きている現象が自社でも将来発生する可能性があると判断し、先手を打つ必要があったのだ。

 これらの課題に共通するのは、顧客に「テックタッチ」の価値を感じてもらうことの重要性だった。「価値を感じてもらえれば複数部門に広がり、感じなければ解約になる。価値を感じてもらうことをイシューとして取り組む必要がありました」と松木氏は当時の課題認識を語る。

 それまで同社は、コンペ勝率を主要指標としていた。強力な競合がいる中で、機能の有無から比較検討の材料となる「○×表」を埋めることが焦点だったが、これが真の顧客価値の創出とは必ずしも直結しない指標であることが明らかになってきた。

次のページ
顧客インタビューを起点とした指標設計プロセス

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

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