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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

ProductZine Day 2025

「大企業病」を乗り越えろ! 再現性がある新規事業の「迷宮」脱出ガイド

なぜその新規事業プロジェクトは前に進まないのか?──「動かない」5つの理由とその解決方法

「大企業病」を乗り越えろ! 再現性がある新規事業の「迷宮」脱出ガイド 第1回

あなたの会社はどのタイプ? 「詰まりポイント」のセルフチェック

 どうでしょうか。ここまで読んで、「ああ、耳が痛い……」「これ、全部うちの会社のことだ……」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

 ここで、あなたのチームが今、どんな「見えない重力」にさらされているのかを可視化するために、簡単なセルフチェックをしてみましょう。これは、誰かを責めるためのテストではありません。あくまで、現状を客観的に把握し、次の一手を考えるための「健康診断」のようなものです。

評価尺度に関する診断
  • プロジェクトの進捗会議で、3年後のビジョンより、来月の売上予測について話す時間の方が長い。
  • あなたの事業のKPIが、既存の主力事業のものと、ほぼ同じ項目で構成されている。
失敗許容度に関する診断
  • 「もし失敗したら、誰が責任を取るんだ?」という言葉を、会議で(あるいは自分の心の中で)聞いたことがある。
  • 小さな失敗の経験談よりも、大きな成功事例ばかりが社内で共有されている。
意思決定に関する診断
  • 10万円程度の予算を使うために、3人以上の役職者の承認印が必要だ。
  • 会議で「それはいったん持ち帰って検討します」という言葉が頻繁に使われる。
組織のサイロに関する診断
  • 開発チームと営業チームが、お互いに「何を考えているかよく分からない」と感じている。
  • 他部署に協力を依頼する際、正式な依頼書や稟議書が必要になる。
時間軸に関する診断
  • プロジェクトが始まって1年も経たないうちに、上司から「で、いつ黒字化するの?」と聞かれた。
  • あなたのチームの目標が、年度や四半期単位で設定されており、達成できないと評価が下がる。

 いくつ、チェックがついたでしょうか?

 もし、一つでもチェックがついたなら、あなたはまさに、この連載が届けたいと願っている「大きな組織の中で、新しい挑戦をしようとしている人」です。そして、その悩みは、決してあなた一人だけのものではありません。

 もし、多くの項目にチェックがついたとしても、絶望する必要はありません。それは、あなたが今、非常に「典型的な」大企業の新規事業が直面する課題のど真ん中にいる、という証拠です。正体不明のモヤモヤに悩むのではなく、課題をこうして言語化できたこと、それ自体が、解決に向けた、非常に大きな一歩なのです。

まとめ:正体を知れば、道はひらける

 今回は、大企業の新規事業がなぜか進まない、その背景にある「5つの構造的ハードル」について、詳しくお話ししました。

 ここまで読んで、なんだか暗い気持ちにさせてしまったら、ごめんなさい。

 でも、私が一番伝えたかったのは、これらの問題は「誰か一人の悪意」や「特定の個人の能力不足」によって引き起こされているわけではない、ということです。むしろ、会社がこれまで成功し、成長してきたからこそ必然的に生まれる、いわば「成長痛」や「副作用」のようなものなのです。

 だから、まずは自分やチームを責めるのを、今日で終わりにしませんか?

 敵の正体を知る。そして、それが個人的な資質の問題ではなく、乗り越えるべき「仕組み」や「環境」の問題なのだと理解する。それだけで、少しだけ気持ちが軽くなりませんか? 見えないお化けにおびえるのではなく、目の前のハードルの高さや形を、冷静に認識すること。それが、すべての始まりです。

 この連載では、今回ご紹介したようなハードルを、どうすれば乗り越えていけるのか。あるいは、正面からぶつかるのではなく、どうすれば賢く迂回できるのか。そんな、明日から使える具体的な思考法やアクションについて、皆さんと一緒に探求していきたいと思っています。

 次回は、特に技術力に自信のある会社ほど陥りがちな罠、「プロダクトアウトの幻想」というテーマを深掘りします。「こんなにすごい技術があるんだから、絶対に売れるはずだ!」……その、一見すると正しそうな自信が、なぜ危険なのか。その理由と、乗り越え方についてお話しする予定です。

 それでは、また次回、お会いしましょう。

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この記事の著者

伊藤 景司(ブルーグラフィー株式会社)(イトウ ケイジ)

ブルーグラフィー株式会社 代表取締役社長兼CEO 新規事業・プロダクトマネジメントのコンサルティング事業と自社プロダクト開発を展開。ローンディールメンター。 以前は、ソニーにて新規事業・プロダクトマネジメント・海外マーケティングに従事。新規事業チームにて、プロダクトマネージャーとしてLED電球ス...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://productzine.jp/article/detail/3593 2025/07/23 11:00

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