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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第4回。オフラインとしては2回目の開催です。

ProductZine Day 2025

ProductZine Day 2025

「大企業病」を乗り越えろ! 再現性がある新規事業の「迷宮」脱出ガイド

なぜその新規事業プロジェクトは前に進まないのか?──「動かない」5つの理由とその解決方法

「大企業病」を乗り越えろ! 再現性がある新規事業の「迷宮」脱出ガイド 第1回

 大企業の新規事業やプロダクト開発では、その特性からメリットとデメリットが存在し、スタートアップとは異なるマインドセットが必要とされます。本連載では、自身でも大企業で新規事業に取り組んだ経験があり、現在は独立して多くの大手企業の伴走支援をされているブルーグラフィーの伊藤景司さんが、それらのハードルを乗り越える具体的な思考法やアクションについて、詳しく解説します。第1回は、大企業の新規事業がなぜか進まない背景にある「5つの構造的ハードル」について。(編集部)

はじめに

 皆さん、こんにちは。ProductZineでこのたび連載をさせていただくことになりました、ブルーグラフィー株式会社の伊藤景司です。私は以前、ソニーで世の中にまだない新しいプロダクトの立ち上げに奔走し、IoTスタートアップなどを経て、現在はブルーグラフィーという会社を立ち上げて、新規事業やプロダクト開発に挑む多くの大手企業の皆さんと、日々現場で汗を流しながら伴走支援をしています。これから、皆さんの新しい挑戦に寄り添い、少しでもその背中を押せるようなお話ができればと思っています。どうぞ、よろしくお願いします。

 さて、突然ですが、皆さんの職場でこんなことは起きていませんか?

「会社の未来のために、新しい事業を創るぞ!」

そんな熱い掛け声とともに、社内のエースや若手のホープが集められ、鳴り物入りでプロジェクトが発足する。キックオフミーティングは熱気に包まれ、未来への希望で誰もがキラキラしている。

……しかし、その半年後。

プロジェクトは、まるで粘度の高い泥水の中を進むように、遅々として進んでいない。会議の数は増えたのに、何も決まらない。メンバーの顔からは輝きが消え、「本当にこのプロジェクト、やる意味あるんだっけ……」なんて空気が漂い始めている。

 このような事態が起きているのは、決してあなたやチームメンバーの能力が不足しているわけでも、熱意が足りないわけでもありません。

 特に、歴史と実績のある大きな会社ほど、新しいことを始めようとするとまるで強力な重力のように、見えない力にぐぐっと引き戻される感覚に陥ることがあります。成功体験が豊富で、盤石な組織であればあるほど、その力は強く働くのです。

 このような現象は、経営学の大家であるクレイトン・クリステンセン氏が提唱した「イノベーションのジレンマ」という言葉で、見事に説明されています。ものすごくざっくり言うと、「優良企業が、既存顧客のニーズに応え続けることに注力するあまり、市場を破壊するような新しいイノベーションに対応できずに失敗してしまう」という理論です。

 クリステンセン氏が示したこの偉大な理論は、現象をマクロな経営戦略の視点から捉えています。一方で、私がこの連載で光を当てたいのは、そのジレンマの内部で、現場の担当者が日々、肌で感じる「組織内部の摩擦」そのものです。

 いわば、イノベーションのジレンマという大きな構造の中で、担当者一人ひとりが直面する、よりミクロで、生々しい葛藤のことです。会社を成功に導いてきた「強み」や「当たり前のルール」そのものが、新しい挑戦の「足かせ」になってしまうという、この皮肉な現実。これこそが、多くの挑戦者を苦しめている正体だと考えています。

 「うちの会社はイノベーションを求めているはずなのに、どうして誰も本気でやらせてくれないんだ……」

 そんな孤独や憤りを感じている方もいるかもしれません。

 でも大丈夫です。その感覚は、決して間違っていません。そして、そのジレンマには、実はいくつかの共通した「構造的な理由」があるのです。

 今回の連載第1回では、その「“動かない”理由」の正体を、皆さんと一緒に、じっくりとひもといていきたいと思います。

次のページ
なぜ動けない? 新規事業を阻む「5つの構造的ハードル」

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この記事の著者

伊藤 景司(ブルーグラフィー株式会社)(イトウ ケイジ)

ブルーグラフィー株式会社 代表取締役社長兼CEO 新規事業・プロダクトマネジメントのコンサルティング事業と自社プロダクト開発を展開。ローンディールメンター。 以前は、ソニーにて新規事業・プロダクトマネジメント・海外マーケティングに従事。新規事業チームにて、プロダクトマネージャーとしてLED電球ス...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://productzine.jp/article/detail/3593 2025/07/23 11:00

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