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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

デブサミ2026の初日をProductZineとコラボで開催。

Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

Developers Summit 2026 「Dev x PM Day」

イベントレポート

「pmconf 大阪 2025」初開催! 関西のPM熱と、プロダクトマネージャーが向き合う「攻め・守り・個」の課題

 「プロダクトマネージャーカンファレンス 2025 大阪(以下、pmconf 大阪)」が、11月21日に大阪市内で開幕した。「プロダクトマネージャーカンファレンス(pmconf)」は、プロダクトマネジメントの普及・発展を目的として2016年から開催されている国内最大級のイベントだ。9回目を迎える今年、満を持して初の大阪開催が実現した。昨年のハイブリッド開催とは異なり、今回は「完全オフライン」での実施となる。オンライン配信がないからこそ、会場には「その場の熱量」を求めて朝から多くのプロダクトマネージャー(PM)が詰めかけ、関西におけるプロダクトマネージャーコミュニティの盛り上がりを証明する一日となった。本稿では、午前の講演(トラックA)の模様と、現地の熱気を速報でお届けする。

「未来に挑め」──大阪から始まる新しい波

 「ついに、この大阪の地で開催できることを、うれしく思います」

 実行委員の久津佑介氏の挨拶で、初の「pmconf 大阪」は幕を開けた。

 久津氏は、pmconfがこれまで東京を中心に(あるいはオンラインで)開催されてきた経緯に触れつつ、「プロダクトマネジメントを日本全国へ普及させるためには、東京だけでなく地域ごとのコミュニティの熱量が不可欠である」と強調。完全オフライン開催となった今回、セッションでの学びはもちろん、会場での「出会い」と「対話」こそを持ち帰ってほしいと語った。

プロダクトマネージャーカンファレンス実行委員会 実行委員の久津佑介氏
プロダクトマネージャーカンファレンス実行委員会 実行委員の久津佑介氏

 会場となったカンファレンスルームは、オープニングの時点で約150席ある座席(=1トラック分/計2トラックでの開催)の8割以上が埋まり、セッションが進むにつれて聴講者が増え、盛況ぶりを見せた。

 スクリーンに映し出されたキーメッセージは「未来に挑め」。AIの台頭や市場環境の変化など、プロダクトマネージャーを取り巻く環境が激変する中で、変化を恐れず挑戦しようという力強いメッセージと共に、会場は静かな熱気に包まれた。

イベントのキーメッセージ「未来に挑め」のスライド
イベントのキーメッセージ「未来に挑め」のスライド
満員となった会場の様子
満員となった会場の様子

【視座】機能開発のプロから「事業の設計者」へ

 トップバッターを飾ったのは、株式会社UPSIDERの森大祐氏と、BASE株式会社の柳川慶太氏による対談セッション「PdMから事業責任者へ ── AI時代に求められるPdMの視座と構造設計」だ。

登壇者の森大祐氏(右)と柳川慶太氏(左)
登壇者の森大祐氏(右)と柳川慶太氏(左)

 本セッションの内容は、登壇者の柳川氏によってnoteでも一部事前公開されており、予習をして臨んだ参加者も多かったようだ。

 議論の中心となったのは、「生成AIによって『作ること(How)』のコストが劇的に下がる今、プロダクトマネージャーの価値はどこへ向かうのか」という問いだ。

 森氏は「AIを使えば、要件定義から実装までのプロセスは圧倒的に圧縮される。だからこそ、プロダクトマネージャーは『何を作るか(What)』、さらに言えば『なぜ作るか(Why)』という事業戦略の比重を高めなければならない」と指摘する。

 これに対し柳川氏は、プロダクトマネージャーが次に目指すべき姿として「事業全体の構造設計(ビジネスモデルと組織)への責任を持つこと」を提言。「プロダクト(狭義のソフトウェア)だけでなく、それを生み出す『組織』や、お金の流れである『商流』そのものをプロダクトとして捉え、設計(デザイン)する必要がある」と語った。

 「機能開発のリーダー」から、事業を勝たせるための「全体設計者(事業責任者)」へ。AI時代におけるプロダクトマネージャーのキャリアパスとして、より高い視座への「越境」が求められていることが示されたセッションだった。

【守り】「捨てる」勇気を仕組みに変える

 続いて登壇したのは、Sansan株式会社の中村晋氏。「プロダクト負債と歩む:持続可能なサービスを育てるための挑戦」と題し、多くのプロダクトマネージャーが頭を悩ませる「機能の肥大化」への処方箋を示した。

登壇者の中村晋氏
登壇者の中村晋氏

 中村氏はまず、一般的に語られる「技術的負債(コードやアーキテクチャの問題)」と区別し、不要な機能や複雑すぎる仕様による負債を「プロダクト負債」と定義した。

技術的負債とプロダクト負債の比較
技術的負債とプロダクト負債の比較

 この負債は、プロダクトマネージャーの怠慢で生まれるものではない。初期の想定と市場の変化のズレによって「必然的に発生するもの」であると中村氏は語る。しかし、放置すれば開発速度を落とし、顧客体験を損なうことになる。

 そこで提示されたのが、機能を削除(サンセット)するための具体的なプロセスだ。

 特に会場の注目を集めたのが、機能を廃止すべきか判断するための「仕分けフローチャート」だ。

機能の仕分けフローチャート
機能の仕分けフローチャート

 「プロダクトのコア価値に寄与するか?」「広く利用されているか?」という問いを分岐させ、客観的に「維持」「改善」「廃止」を判断するロジックが可視化されており、多くの参加者がそのスライドをスマートフォンで撮影し、熱心にメモを取る姿が見られた。

 また、機能廃止を阻む「サンクコストバイアス(もったいない精神)」や「社内調整の壁」に対しては、事前に廃止プロセスを型化し、関係部署と合意形成を行うための具体的なステップ(廃止検討→合意→事業判断)も紹介された。

 「機能を捨てることは、未来のユーザー体験を守るための投資である」。中村氏の言葉は、成熟期のプロダクトを持つプロダクトマネージャーにとって、明日からの実務に直結する強いエールとなったはずだ。

次のページ
【個】AI個人開発で取り戻す「野生のPM力」

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。 1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテック...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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