Liquid Glass UIがプロダクトにもたらす「見えないコスト」
iOS 26のLiquid Glassは、OSレベルでは成立しています。しかし、それを自分たちのプロダクトで再現しようとした瞬間、別の現実が立ち上がります。
- GPU・メモリなどのリソース負荷
- 古い端末での体験劣化
- 実装・検証・微調整にかかる工数

UIトレンドは、もはや「デザインの話」だけではありません。それはリソース配分であり、事業判断の話です。Glass UIは透明で軽やかに見えますが、実装側から見ると、だいたい透明とは真逆の重さをしています。
では、プロダクトマネージャーはどう判断すればいいのか。
私が提案したいのは、UIトレンドを評価するときに、次の3つの問いを自分たちのプロダクトに当てはめることです。
- そのUIは、自分たちのユーザーの行動を本当に変えるか
- そのUIは、自分たちのKPIと噛み合っているか
- そのUIを実装・維持するコストは、得られる価値に見合っているか
この3つに明確にYesと言えない場合、それは「やれること」ではあっても、「やるべきこと」とは限らないのではないでしょうか。
「OSができるなら、自分たちも」という思考の罠
OSが進化した。UIがリッチになった。だから自分たちも追従すべき。この思考は自然です。むしろ、真面目にプロダクトと向き合っているほど、そう考えやすい。
ただ、ここに落とし穴があります。
プラットフォームの進化は、採用すべき答えではありません。それは、自分たちの判断軸がどこにあるのかを試す材料です。なぜなら、OSは最大公約数を前提に設計されますが、プロダクトは特定の誰かの体験に責任を持つからです。
第2回で触れたSora2も、技術的には可能であっても、あえて全部はやらない選択をしていました。
「できるかどうか」ではなく、「その体験に本当に必要かどうか」。
UIトレンドに向き合うときも同じです。この問いを通らずに採用された表現は、往々にして過剰になります。そして過剰な表現は、静かに体験のノイズへと変わっていきます。
Appleだけの話ではない
この構造は、AppleやiOSに限ったものではありません。
AndroidのM3 Expressive、WebのGlassmorphism、SaaSにおける高度なモーション設計。いま、あらゆる領域で表現の自由度は確実に広がっています。
しかし同時に、こうも問われています。
「表現は進化したが、理解は進化したのか?」
リッチなUIは、情報の重なりや動きの増加を伴います。そのとき必要になるのは技術力よりも、選択の精度です。グラフィックの完成度が高いほど、「なぜそれを選ぶのか」という説明責任は強くなる。表現の豊かさは、判断のあいまいさを許してくれません。
UI/UXデザイナーとしてプロダクトマネージャーに伝えたいこと
インターフェースの表現は、与えられるものではなく、選ぶものです。
プラットフォームが進化すると、その変化は正解のように見えます。OSが採用した。競合も追随した。だから自分たちも──。しかし、そこで問うべきなのは「追いつけるか」ではありません。その選択が、自分たちの体験にどう貢献するのかです。
UXは、画面の美しさの総和ではなく、体験の流れ全体で決まります。1つの画面が洗練されていても、流れの中で迷いが生まれれば価値は下がる。逆に、派手さがなくても、自然に目的へ辿り着ける体験は強い。
Glass UIは素晴らしい表現です。ただし、それをどう扱うかはプロダクトの思想次第です。表現は目的ではなく、目指す体験の結果として立ち上がるものだからです。
だからこそ、トレンドに向き合うときに問うべきなのは「追いつくかどうか」ではなく、自分たちはどんな体験を届けたいのかという一点だと思っています。
まとめ
iOS 26のGlass UIは、UI表現の一つの到達点です。しかし本質は、その美しさそのものではありません。
表現が進化したときに問われるのは、それを採用するかどうかではなく、自分たちの体験とどう接続するかを判断できているかという姿勢です。OSの進化は、正解の提示ではなく、問いの提示です。Appleにできることが、そのまま自分たちの正解になるとは限りません。
「やれるか」ではなく「やるべきか」。
技術が進化するほど、この問いの重みは増していきます。そのとき私たちは、何を基準に選ぶのか。表現の進化は止まりません。問われ続けるのは、私たちの判断です。
UIは目的ではなく、体験をどう設計したかの結果として立ち上がるものです。そして体験とは、単なる機能の積み重ねではなく、ユーザーとのあいだに生まれる関係性そのものだと思うのです。

この記事が、みなさん自身のプロダクトにおいて「何を作るか」だけでなく、「どんな体験を通じて、どんな関係性をデザインするのか」を考えるきっかけになれば幸いです。
それではまた次回、デザインと思考の続きを一緒に探っていきましょう。
